FOMC(米連邦公開市場委員会)が5月2~3日の予定で開催される。
利上げについては、かねてより「年内3回」が見込まれていたが、3月のFOMCではその最初のカードを切ったことになる。注目されるのは、残り2回のカードをいつ切るのか? 間もなく始まるFOMCのポイントを整理してみよう。

マーケットはFRBほど強気ではない

FOMC,見通し
(写真=Thinkstock/Getty Images)

現在の利上げ見通しは、FRB(米連邦準備理事会)とマーケットの間にズレがあるように感じられる。マーケットは、FRBほどタカ派ではないということだ。

3月のFOMCでの経済見通しでは年内にあと2回の利上げが見込まれていたほか、同議事録によると大半の政策委員が年内のバランスシートの縮小開始を支持している。

一方、フェッドウォッチを見ると、4月29日現在の5月FOMCでの利上げ確率はわずか5%にすぎない。6月は67%で利上げの目途とされる70%に届いていないが、9月は82%で非常に高い確率で利上げが見込まれている。つまり、9月までに少なくとも1回の利上げを織り込んでいるのが実情だ。また、2回目(年内3回目)の確率については、9月は33%とかなり低く、12月も49%にとどまっている。

マーケットのコンセンサスは、6月の利上げの可能性は排除できないものの、現時点では「9月が最有力」である。年内はこの1回のみで打ち止めとなる可能性が高く、12月までに2回目があるかについてはコンセンサスがとれていない状況だ。

景気は力強さを欠き、インフレ期待も高まらず

FRBに比べマーケットが「ハト派的」なのは、バランスシート縮小の影響を測りかねていることもあるが、実体経済がそれほど強くないことが影響している側面も否めない。

イエレン議長は講演で「バランスシートの縮小は2回の利上げに相当する」としている。つまり、12月に縮小を開始した場合「実質的」には年内5回の利上げとなる。

しかし、2016年の米GDP成長率は1.6%と2010年以降で最も低い数字となり、今年1〜3月期も0.7%と四半期ベースとしては3年ぶりの低水準に落ち込んでいる。個人消費が著しく減速しており、その中でも自動車販売の不振が足を引っ張っている。自動車ローンの遅延率の上昇が問題視されており、自動車販売の停滞が長期化するとの懸念もある。

また、インフレ率を見ても、基準となるPCE(個人消費支出)物価指数は1〜3月期に5年ぶりの2.0%台に乗せたものの、これは原油価格の上昇に後押しされたもので、食品とエネルギーを除くコアPCEは3四半期連続で1.7%とまったく上昇していない。筆者としては、少なくともコアPCEを見る限り、物価は理想的といえるほどの安定感を示しているように感じられる。

期待インフレ率をみても、4月27日現在で2.01%と昨年12月とはほぼ同水準である。それどころか、3月からはやや低下しているのが実情だ。

このように、自動車ローンの変調で個人消費が低迷し、インフレ懸念も乏しい中で、あと2回利上げをしたうえにバランスシートまで縮小することができるのか疑問を残すところだ。

タカ派的なスタンスは「議会対策」の可能性も

FRBは1月のFOMCまでは緩やかなペースでの利上げを強調していたが、それが3月のFOMCではやや唐突に利上げに動いた。この変化のきっかけとなりそうなイベントは2月の議会証言である。議会証言では金融政策のルール化とバランスシートの縮小が取り上げられている。

標準的な「テイラー・ルール」では実質金利は2.0%だが、FRBは米国の現時点での実質金利を0.0%程度と推定し、現在の低金利を正当化している。しかし、実質金利の推計は専門でも難しく、社会保障費や公務員給与と連動するCPI(消費者物価指数)が2.0%を超える中で、なぜ利上げを躊躇する必要があるのか、議会を説得するのは難しい。

米議会では共和党を中心にFRB改革を求める声が強く、金融政策のルール化が議論されているほか、FRBのバランスシートの大きも問題視されている。こうした状況を踏まえると、FRBのタカ派的なスタンスは議会対策の可能性があり、やや割り引いて考える必要があるのかも知れない。

イエレン議長再任を目指す「風見鶏的な政策運営」

ところで、トランプ大統領が公約を撤回し「イエレン議長再任の可能性がでてきた」ことは利上げペースの鈍化につながる可能性がある。

トランプ大統領は大統領選挙戦中、イエレン議長に対して「株価を押し上げオバマ政権を支援するという『政治的配慮』で低金利を維持している」と批判し、再任はしないと公言していた。

一方で、トランプ大統領は自らを「低金利主義者だ」としている。「金利は低いほうがいい」と述べてFRBの利上げには反対の立場を示し、最近も「低金利を望む」と発言している。

このように、トランプ大統領は一見すると矛盾した発言をしているわけだが、イエレン議長に対する批判は「選挙を戦う上での方便だった」と考えるなら、本来トランンプ大統領とイエレン議長は低金利主義者同志として馬が合うはずだ。

トランプ政権は大統領自身も含め、プロのビジネスパーソンで固められている。その意味においては、決して皮肉ではなく「政治的配慮」による低金利維持は大歓迎だろう。もともと「ハト派中のハト」と言われてきたイエレン議長だけに、自身の再任が決まるのであれば、利上げペースのスローダウンもありうるのではないか。

少々単純すぎる見方であるが、割り切って考えるなら、FRBが政治的に対峙しているのはタカ派の共和党議会とハト派のトランプ政権となる。関係がぎくしゃくしている共和党議会とトランプ政権を天秤にかけながら、議会にすりよって政権に圧力をかける一方で、政権に配慮してイエレン2期目を目指すという「風見鶏的な政策運営」が続く可能性も排除できないのではなかろうか。

ハト派へ回帰なら、ドル高にはなりにくい

今後の金融政策は景気次第であることに変わりはないが、全般的に景気が減速傾向にあることと、トランプ政権がイエレン議長にすり寄っている現状を踏まえると、当初の予定よりも利上げペースが鈍化する可能性は高まっているようだ。年内の利上げは6月か9月にあと1回、そのうえで12月にバランスシートの縮小を決定するシナリオも排除はできないだろう。

今回のFOMCでは政策の変更が見込まれておらず、6月に利上げの可能性を残すのであれば、声明文も大きく変更されるとは考えづらい。今後のヒントは3週間後に公表される議事録を待つことなりそうで、議事録で景気の現況に対する認識やバランスシート縮小に関する議論を確認することになる。

ハト派への回帰をメインシナリオと考えるのであれば、全般的に力強さを欠く米経済には追い風となる。ただ、FOMC内では「株価は割高」との懸念が強まっていることから、株価の上昇が限定的となる可能性がある点には留意が必要だろう。

為替への影響はECB(欧州中央銀行)や日銀の動きも軽視できず、FRBの為替市場への影響力も最近は相対的に弱まっている印象さえ受ける。ただ、トランプ政権とFRBが低金利主義で意見の一致を見るのであれば、少なくともドル高にはなりにくいとは言えるだろう。(NY在住ジャーナリスト スーザン・グリーン)

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