シンカー:2017年から2018年にかけては、成長の牽引力が外需から内需に変化していく中で、物価上昇率の高まりとともに、デフレ完全脱却の実感がより感じられる年となるだろう。実質GDP成長率が+1%を大きく下回るリスクがあれば、デフレ完全脱却への力は不十分であり、2019年10月の消費税率の再引き上げは困難化するため、財政による更なる景気対策が打たれることになるだろう。

SG証券・会田氏の分析
(写真=PIXTA)

日本経済は均してみて+1.25%程度の実質GDP成長率を保っているようだ。

アベノミクスが始まった2013年以降、実質GDP成長率は+2.0%(2013年)、+0.2%(2014年)、+1.1%(2015年)、+1.0%(2016年)と推移してきた。

2017年も+1.4%(堅調な1-3月期の結果を受けて+1.2%から上方修正)と、3年連続で+0.75%程度とみられる潜在成長率を上回ると予想できる。

この堅調な成長は、企業の売上高経常利益率がこれまでの厳しい改革もあり過去最高になっている良好な経営状況と、失業率が3%を下回った良好な雇用状況に支えられている。

政策的な大きな下押しは2014年4月の消費税率引き上げで、2014年の実質GDP成長率を短期的に潜在成長率以下に押し下げ、デフレ完全脱却へのモメンタムを弱体化させてしまった。

一方で、財政収支の改善はファンダメンタルズ対比で過度に進み、総合的な資金の動きを見る資金循環統計ベースでは、一般政府の財政赤字は2012年のGDP対比-8.8%から2016年の-2.0%まで急激に縮小している。

堅調な成長を続ける中で、牽引力は変化してくるとみられる。

2016年後半から、新興国を中心とする景気の持ち直しにより、生産・在庫循環が好転し、輸出が強く拡大したが、今後はより安定したスピードに調整していくことになろう。

一方、財政政策は緊縮から緩和に転じており、昨秋の臨時国会でまとめられた経済対策の効果がこれからしっかり出てくる。

人手不足により企業は効率化と省力化を設備・機器への投資で進めなければならなくなっていることや、2020年のオリンピックに向けた本格的な対応もあり、企業の設備投資は徐々に強さを増してくるだろう。

実質家計消費は、賃金上昇を背景として堅調な回復となろうが、潜在成長率なみで強さは実感できないだろう。

しかし、2017年の年末に向けて物価上昇率が0%程度から1%程度まで加速すると予想されることを考えると、企業収益にとって重要な名目家計消費は強めに拡大すると見られる。

2017年から2018年にかけては、成長の牽引力が外需から内需に変化していく中で、物価上昇率の高まりとともに、デフレ完全脱却の実感がより感じられる年となるだろう。

2018年の実質GDP成長率も+1%を若干上回る水準を保つと予想している。

実質GDP成長率が+1%を大きく下回るリスクがあれば、デフレ完全脱却への力は不十分であり、2019年10月の消費税率の再引き上げは困難化するため、財政による更なる景気対策が打たれることになるだろう。

ソシエテ・ジェネラル証券株式会社 調査部
会田卓司

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