FOMC(米連邦公開市場委員会)が間もなく開催される。マーケットは、今回の利上げは織り込み済みの様子で、ウォール街の市場関係者からは「それよりも、今後の政策が気になる」との声が聞かれる。今後の政策を占ううえで特に注目されるのがバランスシート縮小の行方だ。

ここでは「先行きがどうなるのか」を念頭に置きつつ、FOMCのポイントを整理してみよう。

ドット・チャートの「見通し」は変更されるか?

FOMC,利上げ
(写真=Getty Images)

まず、最初に注目したいのはFRB(米連邦準備制度理事会)のフォワードガイダンスが崩れている点だ。すなわち、今年3月のFOMCの見通しで年内にあと2回(今年3回)の利上げが予想されていたにもかかわらず、市場はまだ1回分(今回のFOMCの利上げ)しか織り込んでいない。

たとえば、6月の利上げを前提としたフェドウォッチの9月FOMCでの追加利上げの確率は30%程度、12月FOMCでも50%程度である。いずれも最低ラインと考えられている70%に届いていない点が気がかりだ。

今回はまず、ドット・チャートで3月の見通しが維持されるのか、それともマーケットに「すり寄るかたち」で下方修正されるのか確認したい。

FOMCの「景気見通し」に市場は懐疑的

そもそも、フォワードガイダンスが崩れているのはなぜか。考えられるのは、FOMCの景気見通しに対する「疑念」だ。

3月のFOMCでは「2017年のGDP成長率見通し」を2.1%としているが、今年1〜3月期は前期比年率で1.2%といきなり予想を外している。

最新のナウキャストでは4〜6月期を2.3%、7〜9月期を1.8%と予想しており、このペースでは目標の達成はおぼつかない。6月9日現在のGDPナウでは4〜6月期を3.0%と予想しているが、5月時点の4.0%台から時間の経過とともに低下する傾向にある。

さらに問題なのが物価の動きである。3月見通しではPCE(個人消費支出)指数、コアPCE指数とも2017年は1.9%上昇と予想しているが、4月はそれぞれ1.7%上昇、1.5%上昇と目標を下回っている。2カ月連続で低下しており、数字を見る限り物価は弱含んでいるのは明白だ。

経済成長と物価がともに目標を達成できそうもない中での利上げを疑問視する声は少なくない。ウォール街のファンドマネージャーからは「イエレンの謎」として揶揄する声も聞こえてくるほどだ。

「ゴールを動かす」選択も否定できない

問題の本質は「失業率と物価との間に『あるべき経験則』が機能していない」点にある。いわゆるフィリップス曲線と呼ばれる経験則では、失業率が低下すると物価や賃金が上昇するはずであるが、実際にはそうなっていない。

5月の米失業率は4.3%と2001年5月以来、16年ぶりの低水準となった。FRBの目標は4.7%であり、この水準を下回るとインフレ率は上昇することが期待されている。しかし、実際にはインフレ率や賃金の伸びは鈍化している。

FRBは失業率の低下から「予想される」将来のインフレ率上昇に対処するために利上げを実施していると考えられるが、「予想を裏切る」ようにインフレ率が低下していることから、利上げを正当化しづらくなっている。

そこで、対処法として考えられるのが「ゴールを動かす」ことだ。FRBは目標を柔軟に変更しており、たとえば、2014年頃まで5.5%前後だった失業率の目標は順次引き下げられ、現在は4.7%となっている。

また、FF金利の長期的な目標を3.0%としているが、これは自然利子率1.0%、インフレ率2.0%を前提としている。自然利子率とは物価が安定する実質金利のことだが、実際に観察することはできず、推計するしかない。また、インフレ率の目標は必ずしも2.0%にする必要はなく、人口動態の変化などによる潜在成長率の低下を理由に目標を引き下げることも可能である。

したがって、今回のFOMCでは自然利子率やインフレ目標を引き下げることで、政策金利の最終的な目標値を現在の3.0%から引き下げる可能性も想定しておくべきだろう。

記者会見で「BS縮小の質疑」にどう答えるか

経済見通しでの注目点は、インフレ率、失業率、GDP成長率などの各項目が下方修正されるのかどうかだ。下方修正された場合、仮にドット・チャートが変わらなければ、その整合性が記者会見で問わることになるだろう。

将来的には2.0%の物価目標や1.0%の自然利子率といった前提も変更されないとも限らないので、記者会見ではこの辺りに関するヒントも探る必要があるかもしれない。

また、記者会見ではBS(バランスシート)の縮小に関する質疑が出る公算が大きい。BS縮小は少なくとも1月FOMCまでは中心的な話題ではなかった。当時まではBS縮小は十分な利上げが実施された後と考えられていたからであり、具体的には3.0%かそれに近い水準が想定されていた。

しかし、3月のFOMC以降、BS縮小観測が急浮上し、現在では早ければ9月FOMCでBS縮小が決定されるのではないかと考えられている。記者会見では9月開始を念頭に置いた根回しが準備される可能性があるだろう。

「次期理事」指名の動きにも注目

ところで、今回のFOMCと直接的な関係はないが、今後の金融政策を占う上で現在3名の空席があるFRB理事の行方にも注目したい。

ブッシュ政権(息子)で財務次官を務めたクオールズ氏が銀行監督担当副議長に指名される見通しで、トランプ政権の目指す金融規制緩和推進の旗振り役として期待されている。ただ、クオールズ氏はルール・ベースの金融政策を推奨しており、この点でイエレン体制内では異色の存在となりそうだ。

また、カーネギーメロン大学のグッドフレンド教授の指名も確実視されており、イエレン議長の再任が見送られた場合の次期総裁候補にも挙げられている。同教授はマイナス金利論者として有名だが、ルール・ベースの金融政策を支持しており、量的緩和を「財政政策に近い」として批判している点で共和党の見解を体現する存在でもある。

ルール・ベースが導入された場合、利上げペースは現在の緩やかなペースから加速すると見られている。したがって、クオールズ氏とグッドフレンド教授が理事として就任した場合、FOMCは現在よりも「タカ派色が濃くなる」ことになりそうだ。

経済見通しやドット・チャートに反応か

今回のFOMCでは利上げそのものはサプライズとなりにくいので、利上げに対する株価やドルの反応は限定的となるだろう。サプライズがあるとすれば、経済見通しやドット・チャートの変更となるが、利上げを加速する方向での変更は考えづらい。下方修正となれば、ネガティブな反応、すなわちリスクオフの流れが予想される。

ただし、記者会見でBS縮小に向けた「強い意志表示」があるようだとドル買い要因となるだろう。株価の反応は読みづらいが、素直に反応するのであれば、金利の上昇に伴い売りが膨らむことになりそうだ。ただし、出口論の進展は景気の強さを裏付けていると解釈される可能性もあり、この場合には買いが集まることもあり得る。

このほか、議事録で「株価は割高」との文言が復活する可能性にも注意したい。3月FOMCで登場したこの文言は5月FOMCでは削除されている。ただし、3月まで好調だった株式市場は5月にかけて伸び悩んだものの、最近では再び高値更新が続いている。タイミング的にはFOMCで「けん制発言」が出てもおかしくはないだろう。(NY在住ジャーナリスト、スーザン・グリーン)

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