会社は税金を支払うために存在しているといっても過言ではありません。

法人は決算月の2ヶ月後までに、所定の所得計算を行って税金を支払わなければなりません。さらには、従業員を雇えば従業員の源泉所得税の支払いもあります。納める側から見ると、これは形式上他人の税金を預かっているものなので、納期限に遅れて納付したりすると、通常より高い税率の罰金が課せられます。この他に消費税や償却資産税、個人事業でも法人でも事業税など、商売をし始めた途端、資金繰りだけでなく税金にも振り回されるようになるわけです。

(本記事は、岩松正記氏の著『 経営のやってはいけない! 』株式会社クロスメディア・パブリッシング (2016/11/14) の中から一部を抜粋・編集しています)

経営のやってはいけない!
(画像=Webサイトより ※クリックするとAmazonへ飛びます)

税金は常に心配する

これら税金の中でも、特に注意しなければいけないのが「消費税」です。

消費税は、普通に事業をやっていれば3年目の決算から納付するようになり、しかも最初は1年分をまとめて納付するので結構な金額になります。例えば、小売業なら売上5000万円の会社で年80万円くらい。手数料商売の場合には仕入がないので売上5000万円なら消費税額は年200万円くらいになってしまいます。

常日頃から貯金などしていれば問題ないのですが、それだけのまとまったお金をいざ申告の際になってから用意しようとするとなかなか大変なのは簡単に予想できると思います。

最初から、納付できなくて滞納、いっぺんに納めきれなくて分割で納付、というような資金サイクルに入ってしまうとなかなか抜け出せなくなり、その後ずっと消費税のために資金繰りで苦しむようになりがちです。私はそんな経営者を数多く見てきました。

その上で言えるのは、税金をきちんと納めないと経営がうまくいかない、ということ。これは、決して私が税理士だから言っているのではありません。税金を払える会社が生き残るという最大の理由は「融資」。これがカギを握っています。

借金を返す原資は会社の利益です。金融機関は、利益が出ていないところには基本的にお金を貸しません。利益が出ているところは当然に税金を納めていますから、事実上、税金をきちんと払っている会社しかお金を借りることはできないということになります。面白いもので、金融機関は意外と社会保険の納付に関しては融資する際の条件としてあまり言ってきません。納める義務は同じでも、金融機関は明らかに税金の方を重視しています。

ニワトリが先か卵が先かの議論になりがちですが、事業拡大のためには資金が必要です。

そのための融資を受けるには利益を出せなければダメ。利益が出れば税金がかかる。その税金が払えるからお金を借りられる。このようなストーリーで会社の資金は回っていきます。だからこそ、くどいようですが、経営者は税金のことを考えなければならないのです。

交際費はドンドン使え

「社長は経費が自由に使えていいなぁ!」と再度声をあげますが、だからといって、会社のお金を好き勝手使えるから会社を起こした、なんて人はいないでしょう。

しかし、経営者が自分の判断で私的な飲み食いを交際費として処理してしまうということは、あまり大っぴらに語られることはありません。しかしこれが、会社を経営する人の裏メリットの一つであるということは間違いありません。

正直、交際費と私的な出費の境界線は、非常に微妙なものです。税法上、交際費とは「その得意先、仕入先その他事業に関係のある者等に対する接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為のために支出する費用」(法人の場合)と定義されています。

代表的な例は、外部の人との飲み食いですが、あくまでも前提は「事業用である」ということ。要するに、商売に関係ある支出、収益を上げるのに必要だといえる飲食代や贈答品代は、堂々と交際費として処理できるということです。

会社経営者は24時間会社のことを考えている。プライベートと仕事の境目がない。行動のすべてが会社のため、というのであれば、ありとあらゆる支出が交際費となる。「今はお客さんになっていないが、もしかしたら将来取引ができるかもしれない。だからこれは商売のための支出なのだ!」と言い切れば、どんな人との飲食代でも広い意味では交際費となってしまいます。実際、どこにどう商売のタネが転がっているかはわかりません。会合で頻繁に顔を合わせているうちに取引が始まった、などという逸話は数多くあり過ぎて、枚挙にいとまがありません。

ただ、間違ってはいけないのは、経費とはいえ結局はお金が出て行くことである、ということ。つまり、手元にお金がなければ経費も使えないのですね。結局儲かってなければ経費も何もないのだということを忘れてはなりません。

また、ロータリークラブ等社交団体の経費については、個人事業の場合は税法上経費として認められないものもあるので注意が必要です。また最近は、あまりに金額が多くて税務調査で経費が否認され、裁判まで争っても経費として認められなかった、という例がボチボチ出ていますので、程度には気をつけた方が良さそうです。

いずれにしても、利益が出ていようとなかろうと、ビジネスを続けるつもりなら将来への投資は不可欠。それには、経費になる、ならないに関わらず、真に商売にとって必要な支出は実行しなければなりません。その意味で、交際費ほど戦略的に使わなければいけない経費はないと言えます。

理想の決算書は社長の頭の中で作る

会社の年間売上、役員報酬はいくらにすればいいのでしょうか。経費はどれくらい使う? そして、最終的に利益はいくら出したいのか。

こんな具合に、社長であれば自分の会社の数字をポンポン思い浮かべて欲しいものです。

実際の数字を把握しているからこそ、社長は自社のあるべき姿なり理想像なりを語ることができるはず。その理想の数字こそが会社の目標となる数字であり、これこそが「計画」。

この想像の数字こそが事業計画書の数字になるのです。ですから、自分の会社の目標を語れない社長に「事業計画を作れ」と言っても土台ムリな話だと思います。

そもそも計画などというのは、作るのが重要なのでなく、その数字通りに実行できるかどうかが大事です。そして、実行できなかった場合には、なぜ実行できなかったのか検証することの方が作るよりももっと重要で、その分析こそが計画を作る本質とも言えます。

私はかつて上場準備会社の株式公開担当役員をやっていたのですが、その時に幹事証券会社や監査法人の担当者から何度もキツく言われたのは、作った事業計画の根拠についてでした。なぜその売上になるのか、なぜその利益になるのか。その数字の根拠はどこにあるのか、本当にその数字が達成できるのか。そして、最も強く言われたのが、計画との差異についての分析でした。計画を下回った時にはなぜ達成できなかったかの理由。たとえ計画を達成したとしても、大幅に上回った場合には、なぜ当初の計画が低い計画だったのかという分析。

上場準備の場合はやや特殊ですが、それでも、一般の会社においても、自分らの手で計画を作ったのであれば、達成のために努力するのは当然のこと。となれば、最終的には、実は、達成できる計画が作れるようになるのです。それが社長が思い描いた将来の会社の姿、理想とする将来の数字なのであれば、それに越したことはありません。むしろそうなるようにしなければならない。

結局、社長が自分の頭の中で描いた「自分の会社はこうありたい!」という数字こそが会社の理想の数字なわけで、不思議なものですが、多くの会社は最終的にはその数字の通りになるものです。

だから、社長は自分で理想の姿を想い描かなければなりません。ゴールを想像しなければ、到達することができないのは言うまでもない。だからこそ、社長は自分の頭の中に理想の会社の数字を作り上げなければならないのです。それができないということは言わば、会社経営を放棄していると言ってもいいと思うのですが、いかがでしょうか。

岩松正記(いわまつ・まさき)
政府系起業支援団体の第1期アドバイザーとして指名数東北北海道No.1(全国3位・起業相談部門)となった税理士。山一證券では同期トップクラスの営業成績。地元有名企業のマーケティング、ベンチャー企業の上場担当役員等10年間に転職4回と無一文を経験後に独立。開業5年で102件関与 と業界平均の3倍を達成。

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