三菱地所 <8802> がアジア・オセアニア地域での不動産ファンド事業に進出すると発表した。これまでの海外不動産運用事業は欧米が中心であったが、成長の続くアジア・オセアニア地域での運用に乗り出し、収益力拡大を図る。まずは豪州、シンガポールのオフィスや商業施設への投資を行う。

欧米中心の海外不動産運用から転換

不動産ファンド
(写真=PIXTA)

三菱地所は香港の投資銀行CLSA傘下の不動産運用会社と組み、アジア・オセアニア地域での不動産運用を始める。両社の合弁で設立したパン・アジア・リアルティ・アドバイザーズが実際の運用を行う。

当面は豪州、シンガポールのオフィスや商業施設を中心に物件取得を進め、ファンド運営が軌道に乗れば、投資対象国の拡大も検討するという。三菱地所の自己資金のほか、国内外の機関投資家からも資金を募り、4年後に運用資産規模で2000億円を目指す。

三菱地所の海外不動産運用事業は、これまで欧米が中心であった。欧州では2010年に買収したヨーロッパキャピタルグループ、米国では2014年に買収したTAリアルティを中心にファンド運用を行っている。2017年3月末時点での運用資産総額は約3兆円となっており、その半分を海外が占める。アジア・オセアニア地域は欧米等の先進国と比べても高い成長率を誇っており、不動産市場の拡大も期待出来る。これまでは自社による開発事業は行ってきたが、不動産運用事業にも乗り出し、その成長を取り込む。また、投資先を広げる事で国内外の機関投資家のニーズに応える狙いもある。

今後の投資対象国拡大にも含み

国内不動産市場は足下で堅調な推移を見せているが、今後は人口減少による先細りも懸念されている。持続的な成長の為には、海外市場の成長を取り込む事が欠かせない。

三菱地所が参入を表明した豪州、シンガポールは両国とも柔軟な移民政策を行っており、人口は増加基調にある。国際通貨基金(IMF)の予測によると、2017年の経済成長率は豪州が3.1%、シンガポールが2.2%となっており、日本の1.2%成長と比べ、高い値を示している。また、両国とも不動産市場の透明性が高く、発達している事でも知られている。

豪州、シンガポールで実績とノウハウを積んだ上で、投資対象国を増やしていく事にも含みを持たせており、今後の動向にも注目が集まる。香港や台湾、中国の不動産市場への参入も視野に入れていると見られ、世界中で需要が高まる物流施設への投資も検討される。

三菱地所が海外で稼ぎ出す営業利益額は2017年3月期で約270億円となっている。5月に発表した中期経営計画では、この数値を2020年3月期に350億円と3割増やすとしている。目標達成の為には、従来の自己資金による開発事業と併せて、ファンド運営事業の強化も重要となる。国内では不動の地位を誇る三菱地所が、アジアでもその力を発揮する為に動き出す。(ZUU online編集部)

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