行き過ぎる円高円安-300x240

こんにちは、経済学修士号を取得後、株価推定の事業・研究を行っている「たけやん」です。宜しくお願いします。

最近は実効為替レートで見ても円安と言えるくらい円安が進んでいますが、円安・円高に限らず過度な進行は企業にとっても弊害があるというのが一般的です。
企業は当然それの対策を施すわけですが、今回は企業外ヘッジ手段としてのデリバティブ取引を取り上げて、その代表的な手法を簡単に紹介します。

まず、デリバティブ取引について説明した上で、フォワード取引・フューチャー取引・通貨オプション取引・通貨スワップを取り上げます。
その上で、デリバティブ発達の弊害の側面について補足します。

デリバティブ取引とは

デリバティブは、商品、株式、金利、最近は天候や地震など、元になっている金融商品と関係を持ち、その「価格変動リスク」をヘッジする事が主たる目的の商品です。
「元になっている金融商品」との関係を持つという意味で金融派生商品とも訳される事があります。そのデリバティブを対象とした取引がデリバティブ取引です。

最近は、ハイリスク商品として取引される事も活発になっていますが、本稿ではもっぱら企業外ヘッジ手段としてのデリバティブ取引のみを扱います。企業外ヘッジ手段としてのデリバティブ取引には、主なものに、

・先物予約(フォワード取引)
・通貨先物(フューチャー取引)
・通貨オプション取引
・通貨スワップ

があります。では、これらを順に説明していきましょう。

先物予約(フォワード取引)

先物予約は、為替リスクを軽減する上で最もポピュラーでシンプルな手法です。
平島(2004: 120)は、「あらかじめ現時点において、将来の外国為替取引の金額について相場、金額を決定し、契約を締結すること」と定義しています。
先渡取引(forward transaction:フォワード取引)とも言います。

これを簡単な例で説明しましょう。
企業がある商品の輸出に際して、1ドル=100円のレートで1万ドル分契約したとしましょう。しかし、決済時期は3ヶ月後であるとします。
もし、3ヶ月後に円高になっていれば、その分損害を受ける事になります。そこで、1万ドルの3ヶ月先物の売り予約を締結すれば、3ヶ月後にレートがどのようになっていても100万円で輸出出来ます。
勿論、円安になれば損になるのですが、為替レートの見通しが分からない以上、そのリスクをヘッジ出来るという点で先物予約は有効で主流の方法です。

通貨先物取引(フューチャー取引)

基本的にはフォワード取引と同様の為替リスクヘッジ手段ですが、異なる点は「取引額や引渡期日が決まっている取引所取引」であるという点で、フォワード取引のような相対取引(決済日を自由に決められる取引)とは違っています。フューチャー取引は、日本においてはフォワード取引と比べれば使用頻度が少ないです。

通貨オプション

さて、フォワード取引やフューチャー取引は、予約によって当初の採算を確実に確定する事でリスクを回避出来ますが、前述したように、「逆に為替レートが好転した場合に機会損失が出る」という問題があります。
この問題を解決する為に開発されたのが通貨オプション取引です。
通貨オプション取引は、簡単に言えば「ある通貨を所定期日もしくは一定期間内に定めた価格で買ったり売ったりする権利」を取引することです。
買う権利をコール・オプションと言い、売る権利をプット・オプションと言います。
オプションの買い手は、プレミアム料を支払う事で以下に説明するメリットを受け、オプションの売り手は、プレミアム料を受け取る代わりに、オプション行使に際する義務を負います。

先ほどと同様、1ドル=100円の時点で輸出契約を行う企業を考えます。
この企業が、3ヶ月後の決済日に1ドル=100円の行使価格でドルを売る権利(プット・オプション)を、プレミアム料として1ドル当たり5円で取得したとしましょう。
もし、決済日に円高になった時はオプションを行使して1ドル=100円のレートでドルを売れます。
プレミアム料があるので、結果的に1ドル=105円で輸出出来る事になり、それ以上円高になっても為替差損は回避出来ます。

逆に決済日に円安になった時は、オプションを放棄して、当日の直物レートで輸出代金のドルを売れます。
勿論、プレミアム料を支払っているので、「決済日の直物レート+1ドル当たり5円のプレミアム料」で輸出した事になります。場合によっては為替差益が出ます。

通貨オプション取引が有利になるのは為替変動が大きい時で、もし為替変動が少ない時はプレミアム料の分だけ余計にコストが掛かってしまう事があります。

通貨スワップ

通貨スワップとは、「異なった通貨の債務を交換する取引」の事を言います。
ここでは平島(2004: 124-126)に沿って具体例で説明しましょう。

ある企業が国際債市場でドル債を有利な条件で発行してドル資金を調達したとしましょう。
しかし、資金使途自体は日本国内にあり、ドル資金を円に転換しなければならず、ここに為替リスクが発生します。

為替リスクのヘッジには前述の先物予約でも良いのですが、長期の先物予約は市場規模が小さい上、返済金額だけでなく借入期間中の全ての金利返済に対してそれぞれ予約をしなければならないので極めて煩雑です。
そこで使われるのが通貨スワップです。
仮にユーロ債市場で金利6%で100万ドルの債券を発行したA社が、B銀行とその時の為替レート1ドル=100円で換算した1億円と交換する通貨スワップ契約を結んだとしましょう。そうすると、

・A社がユーロ債市場で100万ドルを調達する
・A社が、ユーロ債発行時に元本100万ドルを円に転換してB銀行から1億円を受け取る(B銀行に100万ドルを渡して、B銀行から1億円を受け取る)
・利払いにおいては、A社はB銀行に円金利(6%より小さい金利)を支払い、A社はB銀行からドル金利6%を受取り、それをユーロ債市場に支払う
・償還時は、A社がB銀行に1億円を返還し、A社はB銀行から100万円を返還してもらい、それをユーロ債市場に返還する

という形になります。
こうする事でA社は「為替リスクの無い1億円の円資金」を調達出来るというメリットがあります。要するに、異なる通貨間のキャッシュ・フローを交換しているというのが特徴になるわけです。

デリバティブ発達の影響

他にも様々なデリバティブがあり、その仕組みは複雑になってきていますが、一方でその発達も良い事ばかりではありません。
デリバティブによるハイリスク・ハイリターン投資の増加だけでなく、為替リスクを軽減する企業の取り組みの増加が為替変動を大きくしている可能性があるのです。
伊藤(2012: 180-183)は、大きな為替変動が問題になるが、それに対応するための企業の防御体制が強くなり、少々の為替レートの変化には困らない状況になるため、その中で国際金融取引が活発化する事で、ますます為替レートの変動が激しくなるという事を主張しています。
要は、「為替リスクに対応する企業と大きな為替変動のイタチごっこ」です。

勿論、長期的には競争力や金利差などで為替レートが決定しますが、短期的な為替変動には企業のデリバティブなどによる対応が逆に為替変動を大きくしているというジレンマもあるのです。(ZUU online 編集部)

参考文献

[1] 伊藤元重(2012)『「通貨と為替」がわかる特別講義』PHP研究所

[2] 平島真一編(2004)『現代外国為替論』有斐閣

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