カフェが乱立する韓国で競合チェーン店と差別化し、犬や猫など触れ合うカフェが増えている。野生動物を置いて展示・体験をするカフェも誕生しているが、法律等の規制がなく、利用者の安全と生態系のかく乱や人獣共通疾病の感染などに対する懸念が高まっている。

動物福祉問題研究所アウェアが2017年11月7日に発行した「野生動物カフェの実態調査報告書」によると、ソウル市内10ヵ所、韓国全土で35ヵ所の野生動物カフェがあり、当初は零細な規模が多かったが、フランチャイズ展開をはじめたカフェも現れはじめている。

愛玩動物の擬似飼育体験

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2017年10月、ソウル・江南のドッグカフェ(写真=筆者撮影)

ドッグカフェなどペットを同伴できるカフェは以前からあったが、店が飼っている愛玩動物と触れ合うカフェは、台湾で1998年にオープンした「猫花園」が最初といわれている。カフェの利用客は店が飼っている複数の猫と自由に交流出来る。ソウルでも猫カフェに続き、犬を飼うカフェが増えている。

犬カフェや猫カフェのメニューは、普通のカフェと変わらない。値段は高めで、犬を飼っている人も利用でき、ペット用品コーナーを併設しているカフェもある。

犬や猫を飼っていない人も店内で売っている餌を愛玩動物に与えるなど、動物を飼う疑似体験ができる。

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2017年10月、ソウル・江南のドッグカフェ(写真=筆者撮影)

韓国では犬や猫を飼う人が増えているが、共同住宅が多いソウルの都市部などペット不可の賃貸物件は少なくない。犬カフェや猫カフェは、共同住宅の居住者や毎日の散歩が難しい若者など、ペットを飼いたくても飼えない人が愛玩動物と触れ合うことができる空間として人気が高まっている。動物カフェの経営者にとっても、一般のカフェと差別化ができるメリットがある。

野生動物の虐待があきらかに

愛玩動物カフェの他、爬虫類カフェや野生動物カフェもあり、安全面や動物虐待の問題が浮き彫りになっている。

緑の党が2017年11月9日に発行した「ソウル市内の野生動物カフェ全数調査報告書」によると、本来の生態や習性に合わない環境からくる極度のストレスで、人工飼料を与えられている草食動物のワラビーが糸がほつれた座布団をむしって食べるなど、異常行動が確認されている。餌や騒音、野生と異なる床材、昼夜の区分がない採光や照明などでストレスを抱え、野生性を和らげるためにラクーンの犬歯を抜歯し、寒い地方に住む北極キツネや銀ギツネをエアコンがない外部に放置しているカフェもあったという。

衛生面の問題も指摘されている。動物福祉問題研究所アウェアが調査したソウル市内9ヵ所の野生動物カフェのうち、予防接種の現況を公示していたカフェは1ヵ所のみだった。食品衛生法では飲料を飲むスペースと動物が飼育されているスペースは分離するよう定められているが、実際には分離されることなく“動物と人々がからみ合って”おり、ラクーン、ミーアキャット、プレーリードッグなど、人獣共通疾病の病原体を伝播する危険があると同研究所のイ・ヒョンジュ代表は警鐘を鳴らしている。

訓練中にセイウチを虐待するなど、動物園が野生動物を虐待している実態が明らかになり、動物福祉の観点から野生動物の飼育環境の管理監督を定めた動物園・水族館法が2017年5月に施行されたが、動物カフェは対象から外されており、無法のまま放置されているのが実状だ。

犬カフェや猫カフェといった愛玩動物と触れ合うことができるカフェは、動物好きにとって癒しの空間でもあり、今後も人気が高まることが予想される。事故や病原菌の感染予防など、利用客と動物相応の安全管理が急務の課題となっている。(佐々木和義、韓国在住CFP)

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