11月中旬、東芝 <6502> が中国ハイセンスグループにテレビ事業を129億円で売却する、というニュースが伝えられた。買うとすれば中国メーカーと誰もが思っていただろう。ところがその中国で、カラーテレビ生産が急ブレーキというニュースが伝えられた。続いて映画の興行収入も苦戦というニュースも出てきた。いずれも経済ニュースサイト「界面」が伝えた。

中国人視聴者の傾向は、テレビを見る時間は縮小、映画はアクションヒット作か外国製しか見ないということが分かってきている。では何を見る時間が増えているのだろうか。それは「視頻網站」と呼ばれる視聴サイトを見ているのである。

「優酷」「愛奇芸」「騰訊視頻」「楽視」などが代表的な存在である。その他、今日頭条、捜狐、網易、新浪などのポータルサイトには、直営か提携は別にして「視頻」は必ず準備されている。必須アイテムなのだ。

中国でもテレビ離れ、映画離れが進み、ネット視聴にシフトしている。

テレビ産業に赤信号、過剰生産調整は不可避?

中国経済,動画配信サイト
(画像=youkuより)

業績に急ブレーキ

11月21日は世界テレビ・デーだった。しかしテレビを見る人はどんどん少なくなっている。記事はこのように始まっている。テレビは1990年代世界中を風靡し、当時はメディアの代表選手だった。しかし今日、テレビの地位は、日々スマートフォンや、タブレット端末など「新興電子設備」からの挑戦にさらされている。中国のテレビ産業もこのところ業績は下降し続けている。愛立信(エリクソン)の発表した「2017年電子与媒体趨勢報告」によると、人々のテレビ視聴時間は減少し続けており、2020年になっても、現在のテレビ番組視聴姿勢を堅持している人は、10%にすぎないだろうと予測している。

中国工業和信息化部(工業情報省の意)によれば、2017年第一から第三四半期までのカラーテレビ生産量は1億2008万台となり、前年同期比3.7%下落した。これは初めてのことである。

販売の方はどうだろうか。データ会社、奥維雲網によれば、2017年第三四半期の国内カラーテレビ販売数は、1041万台となり、前年同期比12.9%減となった。また販売総インチでは7.3%減だった。さらに業界の“希望”だったスマートテレビも惨憺(さんたん)たるものだ。2017年に入って伸長率は大幅に下降、7月と8月にはついに前年割れとなった。通年でも前年割れとなる可能性もある。

メーカー五巨頭も業績低迷

さらに利益率も悲惨である。2011年に3%だった利益率は、2014年には1.5%に半減、2017年上半期にはついに1%を割り込んだ。TCL、海信(ハイセンス)、創維、康佳、長虹の5社を“伝統型カラーテレビ五巨頭”と呼ぶが、これらメーカーの悩みは深刻だ。五巨頭のここ3年ほどの四半期の株主利益をみると、TCL以外は厳しい。海信電器や創維数字は大きく下げており、康佳や四川長虹はマイナスのときもある。

さらに五巨頭は、政府から補助金をもらっていた。一番多いTCLは2014年~16年、毎年10億元以上である。他は四川長虹が2億元前後、その他の3社は2億元以下だ。そして5社の株価は2015年の株式バブルを除けば、21世紀に入って以降、まったくと言っていいほど上がっていない。鉄鋼だけではない。ここにも生産過剰問題が隠れていた。

東芝のテレビ事業を買収した海信電器(ハイセンス)は、とりあえず経営的には一番安定していたが、今年は大きく落としている。東芝ブランドを得て巻き返すつもりだろう。お互いにいいタイミングだったように思える。(1元=16.9日本円)

映画産業も頭打ち、入場料収入急ブレーキ

映画の入場料収入も頭打ちになっている。2003年における中国の映画館入場料収入は10億元だった。それが7年後の2010年には、10倍の101億7200万元となっている。その後2013年には200億元を突破、2015年には400億元を突破した。この間毎年30~40%の高度成長を遂げた。それが2016年にはたった4%の伸びにとどまり、急減速した。2017年11月末には500億元を突破し、今年は10%前後の伸びとなりそうだが、2015年までの勢いはない。

かつて不動産王の王健林(大連万達集団董事長)は欧米の映画館運営会社、映画製作会社を次々と買収、世界のエンターテインメント王を目指していた。しかし2017年になると王健林の海外買収は、人民元下落の元凶とみなされるなど、彼を取り巻く状況はガラリと変わった。そして7月には大量の資産売却を行った。政府の圧力ではないかと話題になった。今は映画産業どころではなくなっている。

国産作品比率は史上最低に

映画界2017年最大のヒット作は「戦狼2」(中国)で興行収入は56億7900万元と断トツだった。2位は速度与激情「ワイルド・スピード ICE BREAK」(米国)26億7100万元、3位は羞羞的鉄拳(中国)21億9600万元、4位は功夫瑜伽(中国・インド合作)17億5300万元、5位は西遊伏妖篇(中国・香港合作)16億5600万元という順だった。

なお1位の「戦狼2」(ウルフ・オブ・ウォー)は中国版「ランボー」のようなアクション映画だ。中国の批評家によると、最大の長所は「愛国主義と行動との完全な美しい融合」ということである。2位以下もアクション映画が続く。

トップ5のうち中国産は4本を占めている。ところが国産映画の売上比率は下がる一方なのである。2010年には56.4%だった国産比率は、2015年には60%を超えたが、ここ2年で急降下し、今年は52.4%まで下がった。ヒット作には恵まれたにもかかわらずである。2015年以降の伸び率は、すべて外国映画に依っているのだ。魅力的なコンテンツ不足は如何ともしがたい。いろいろな意味で2015年がターニングポイントになっていたようである。

視頻サイトの繁栄 大手の動画視聴サイト

中国という文明圏は、不法と合法をあまり厳密には区分しない。こだわりはない。大手の4サイトは出自のしっかりしたものだが、そうではなさそうなサイトもたくさんある。日本のテレビドラマがリアルタイムで視聴できたりするのだ。しかしこれらはまったく別の研究課題となるため、ここでは深入りしない。大手の中から優酷と楽視をピックアップしてみたい。

優酷--パイオニアの道を歩むがアリババ傘下に

05年 北京で創業 06年 1200万ドルの融資を得て、正式に運用を開始。 08年 「信息網絡伝播視聴許可証」を得る。同年、上海支局を開設。 10年 ネット視聴に適したコンテンツ制作体系を発表。ニューヨーク市場へ上場 11年 アリババ、騰訊、百度、新浪と並び、中国ネット界“5winners”に選ばれる。米国ディズニー並びにドリームワークスと提携。 12年 中央電視台(CCTV)旗下の電影網と戦略提携。8大映画会社のすべてと提携。 13年 移動端末の1日視聴量、1億5000万を突破。 14年 優酷制作の映画全国放映。 15年 アリババが18.3%出資。 16年 アリババの全額出資子会社に。ニューヨーク上場廃止。

楽視--過大投資で失敗を繰りかえす

04年、北京で創業。 10年、新興市場“創業板”市場へ上場、その後深センA株市場へ。

しかし楽視は業容を広げ過ぎたようである。プラットフォーム+内容+端末+応用=楽視の実現するモデル。としてさまざまなサイトを立ち上げた。その結果財務の悪化を招く。

14年8月 株式取引の停止、12月に復活とこの間に財務の精査を行い、当面の危機は乗り切った。 15年 音楽会社設立。 16年 米国市場とインド市場へ進出。 17年1月 深セン株式市場で再び取引停止。現在も混乱が続いている。

そして現在では大手残りの2つ、愛奇芸(百度系)と騰訊視頻(騰訊系)の争いがクローズアップされている。しかし優酷には依然として老舗としての信用がある。ただし、この下には、捜狐視頻、新浪視頻、bili biliなどさまざまなライバルが控えている。

40代の中国人女性数人に話を聞くことができた。このせまい範囲では、優酷と愛奇芸に人気が集まっていた。視聴アプリを、一つもダウンロードしていないという人はいなかった。何かしらは見ているのである。無料で視聴できる範囲に物足りなければVIP会員になればよい。月会費25元を払えば見放題となる。

会員の女性に聞くと、韓国ドラマと米国ドラマが見たいから会員になったという。不法なコンテンツもあるが、と水を向けてみると「確かによく放映中止になるけれど、いずれ復活するよ。」とあっけらかんとした答えであった。中国的思考そのものである。

日本はコンテンツ供給を

日本と中国の最大の違いは、既存テレビ局のコンテンツがまったくつまらないことである。ドラマの中の軍隊や公安は、必ず人民のヒーローでなければならない。そこをついてスマホ時代の幕開けとともに、ネット視聴が一気に拡大したのである。ネット視聴の繁栄は、

中国ではテレビ離れと、外国コンテンツへの希求はさらに進みそうである。日本ドラマは、マニアには人気が高いものの、一般的には分かりにくさが敬遠されている。ただしアニメは圧倒的だ。日本はアニメ以外の映画や音楽でも、強力に攻め込みたいところである。(高野悠介、中国貿易コンサルタント)

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