シンカー:資金循環統計は、企業活動の強さを表す企業貯蓄率を計算することができるなど有用である。上昇がデレバレッジ(貯蓄、需要減)で景気下押し要因、上昇がレバレッジ(投資、需要増)で景気押し上げ要因となる。しかし、ある程度の計算が必要となるため扱いが難しい。米国の資金循環統計で、企業貯蓄率の計算方法を解説する。企業貯蓄率に財政収支(政府貯蓄率)を足したものが、ネットの資金需要となる。ネットの資金需要は、資金が循環し貨幣経済とマネーが拡大する力となる。米国の場合、企業と家計が需要を作り出す力をもっているとみられるため、企業貯蓄率と家計貯蓄率の合計も需要動向を見る上で重要である。この合計は失業率と相関関係があることが確認できる。資金循環統計は貯蓄・投資バランスを表すため、企業貯蓄率、財政収支、家計貯蓄率、国際経常収支(海外貯蓄率の符号を逆にしたもの)を足せばゼロとなる。誰かの金融資産は誰かの金融負債が裏づけとなっていることを表す。

SG証券・会田氏の分析
(画像=PIXTA)

① 米国資金循環データのデータ抽出
1) FRBのウェブサイトの中のData Download Programにアクセスする。https://www.federalreserve.gov/datadownload/

2) Financial Accountsにある”Financial Accounts of the United States(Z.1)”を選ぶ。
(http://www.federalreserve.gov/datadownload/Choose.aspx?rel=Z.1 からもアクセス可能)

3) Select a preformatted data packageの下でダウンロードするデータの種類を選択し、Format packageをクリック。その後、ダウンロードしたいデータの詳細を選択する。必要なデータの種類は、以下の通り。
F.101 (Q) Households and Nonprofit Organizations, s.a.
F.106 (Q) Federal Government, s.a.
F.107 (Q) State and Local Governments, s.a.
F.133 (Q) Rest of the World, s.a.
*Datesの設定:From: 1970 Q1 To:2017 Q2 (四半期データ)

② 米国のGDPデータを抽出する。
1) 名目GDPデータをブルームバーグ(GDP CUR$ Index)よりダウンロードする(四半期データ)。

2) 四半期移動平均を計算する。

③ 米国貯蓄率の計算
1) ①でダウンロードした各データ表の中から必要な項目”net lending (+) or borrowing (-) (financial account)“を別のエクセルシートに抽出し、政府・家計・海外・企業の各部門別の資金過不足を計算する。その後、企業の貯蓄率を計算する。

a) 政府の資金過不足の計算
Federal Government(F106)のデータ中の”net lending (+) or borrowing (-) (financial account)”と、State & Local Governments(F107)のデータの中の” net lending (+) or borrowing (-) (financial account)”の合計を計算する。

b) 家計の資金過不足データの抽出
Households and Nonprofit Organizations (F101)のデータの中からnet lending (+) or borrowing (-) (financial account)を抽出する。

c) 海外の資金過不足データの抽出
Rest of the World (F133)のデータの中からnet lending (+) or borrowing (-) (financial account)を抽出する。

d) 企業の資金過不足データの計算
政府・家計・海外の資金過不足を合計し、符号を逆にする(上記 -1×(a+b+c))。

2) 上記1)の各データの四半期移動平均を計算し、更に単位をbillion USDにする(1000で割る)。各部門の貯蓄率(%GDP)の計算は、これを名目GDP(上記②で計算したもの)で割り、100を掛ける。政府部門の貯蓄率は、財政収支のことである。

④ ネットの資金需要(トータルレバレッジ)の計算
上記で計算した四半期ごとの企業貯蓄率と政府貯蓄率の合計がネットの資金需要(トータルレバレッジ)となる。

図)米国ネットの国内資金需要

米国ネットの国内資金需要
(画像=FRB、ブルームバーグ、SG)

図)企業と家計の貯蓄率合計

企業と家計の貯蓄率合計
(画像=FRB、ブルームバーグ、SG)

図)貯蓄率合計と失業率

貯蓄率合計と失業率
(画像=FRB、ブルームバーグ、SG)

ソシエテ・ジェネラル証券株式会社 調査部
チーフエコノミスト
会田卓司

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