森六ホールディングス
(画像=Webサイトより)

老舗のIPO

本連載の最後は森六ホールディングスのIPOに着目する。金額規模こそ先の二つには劣っているが、老舗のIPOという意味で注目度は高い。また今回は投資家目線で粗利益や主要産業、ライバル企業の状況にも目を向けている。

森六ホールディングスへの投資を推奨しているわけではないが、今回の解説にはより具体的な分析も含まれている。ぜひ投資の勉強としても参考にしてほしい。

森六ホールディングスの財務諸表を斬る

企業の財務諸表は、人間で言うならば精密検査のデータに近いが、それにとどまらず、その人物の気質・能力までトータルで示してくれる人物図鑑のようなものである。

この重要なデータベースである財務諸表は、森六ホールディングスのHPの電子公告や東京証券取引所のHPにて確認できる。

連結損益計算書を見てみよう。売上高が真っ先に目に入るが、売上高は人間でいえば「体の大きさ」のようなものであって、これだけではその企業の成長性は見極められない。

連結経常利益がプラスで推移しているので、事業が継続的に利益を生み出していることはわかるが、効率的に利益を生み出しているかというところまではわからない。

成長性を見極めるために注目すべきは「ROE(株主資本利益率)」「売上総利益」「販売費及び一般管理費」「純利益」などだ。

最初にあげた「ROE」は「純利益」を「純資産」で割り、100を掛けたもの(%)である。この数値が高いほど、企業が自己資本を元手に高い効率で利益を生み出していることになる。

森六ホールディングス 2017年4月1日~2018年3月31日(第103期)の連結ROEは11.6%、第102期が2.0%、第101期が6.5%、であった。

一般的な目安としては15%以上で優良企業だと判断される場合が多いが、業種によってその目安が若干異なることがあるので注意が必要となる。

化学工業全体のROE平均が5%程度であるから、同業種の中では優良企業といってよいであろう。

2番目にあげた「売上総利益」とは「売上高」から「売上原価」を差し引いたものである。 この「売上総利益」を「売上高」で割り、100を掛けた数字(%)を「粗利益率」と呼ぶのであるが、成長が停滞している企業はこの「粗利益率」が極めて小さい傾向にある。

森六ホールディングス の2017年4月1日~2018年3月31日の連結粗利益率は13.5%、その前年は12.2%、前々年は12.1%であった。極端に小さいわけではない。

3番目にあげた「販売費及び一般管理費」とは販売経費と管理経費を合計したもので、宣伝費、従業員の給与、出張費などが含まれる。「販売費及び一般管理費」を「売上総利益」で割り、100を掛けた数字(%)が100%近い場合はその競争優位性に疑問符が付く。

森六ホールディングスの数値を確認してみると、第103期が61.6%、第102期が69.6%、第101期が69.7%となっている。

この指標において重要なのは数値の大小とともにその一貫性である。70%を切る数値は100%を大幅に下回るよい数値であるし、一貫性においても驚異的な安定性を誇っている。「純利益」が基本的には右肩上がりに増えているのも好ましい傾向である。

ここまでの分析で、すでに「安定成長をコンパクトな経営で着実に続ける堅実な企業」という姿が浮かび上がってくる。

さて続いて貸借対照表を分析する。まずは、資産と負債の比率を確認すると、2018年3月31日現在の資産合計が1338億円に対して、負債合計が671億円となっている。負債合計が資産合計の半分程度であるから、財務状況は基本的には良好と言ってよい。

貸借対照表の分析によって、先ほど述べた「安定成長をコンパクトな経営で着実に続ける堅実な企業」という姿がさらに裏付けられた形となった。

森六ホールディングスの事業戦略はどうか?