はじめに
本連載では、社会に大きな影響を与えたIPOについて解説していく。海外の事例は特に規模が大きいものに厳選しているが、日本の事例では記憶に新しいソフトバンクやメルカリについての紹介になる。
また森永ホールディングスに関しては規模はそこまで大きくないのだが、老舗のIPO戦略という意外性から世間に驚きを与えた。規模の違いはあれど金額や価値観の変化という意味で社会に大きな影響を与えたIPOばかりなので、投資家としては把握しておきたい内容である。
OPEC総会で「減産終了」となるか?
2017年1月に始まったOPEC及びロシアを含む非OPEC産油国の協調減産から2年を迎えようとしている。協調減産は当初6カ月とされていたが、その後順次延期されて現在は2018年12月までとなっている。ただし12月のOPEC総会で2019年以降の減産について協議される。
サウジのファリハ・エネルギー産業鉱物資源相は「12月に原油の輸出量を前月に比べて日量50万バレルほど減らす用意がある」と表明。同時に「より多くの産油国が参加する12月の会合で引き続き協議したい」と述べた。
ロシアのノワク・エネルギー相は「需給を調整するため、産油国が協力する枠組みを19年も継続することが大事だ」と強調した。もちろん、ポジショントークもあるのだろうが、いずれにしても原油価格は上下に振れ幅の大きい展開となる恐れがある。
ちなみに、減産継続の声がある一方で「減産終了」が懸念される主な理由が3つある。
一つは「世界的な在庫減少」である。そもそも、減産の目的は過剰在庫の削減にあり、先進国の原油在庫を5年平均まで減少させることが目標だった。 2つ目の理由はベネズエラとイランの減産への対応である。経済危機が深刻化しているベネズエラでは、原油生産の落ち込みに歯止めがかかっていない。2017年7~9月期の日量192万バレルから今年8月は123万5000バレルと1年余りで約70万バレルの減少となっている。また、米国のイラン核合意離脱から半年、さらに経済制裁の再開により、イランからの原油輸出も減少している。したがって、ベネズエラとイランの「想定外の原油輸出減少」に対処するために、減産を緩和するのではないかとの見方もある。
そして3つ目は「米国への配慮」だ。米国ではガソリン価格の高騰が減税効果を打ち消すとの懸念が広がっており、トランプ大統領も「OPECのせいで原油価格が上昇している」と非難している。
サウジアラムコのIPO、サルマン皇太子への「配慮」も?
上記の通り、減産終了を後押しする理由はあるものの、一方で「結局のところ12月の総会は2019年以降も減産を維持することで決着する」との意見も根強い。
その最大の理由はOPECの盟主「サウジの意向」だ。サウジアラビアの国営石油会社サウジアラムコがIPO(新規株式公開)を控えていることから、同社のバリュエーションを高めるために「原油価格は高いほど望ましい」との声も聞かれる。また、サルマン皇太子が唱える経済改革計画「ビジョン2030」にも資金が必要だ。こうした事情から、サウジアラビアは80~100ドルを目指す方針との指摘もある。
在庫の減少やベネズエラとイランの情勢を考えると、減産の必要はないとの見方も正当化できる。ただし、注意を要するのはロシアの存在だ。ロシアのプーチン大統領は「現在の水準やここ最近の水準、70ドル付近であればロシアにとって完全に適切だ」と発言していることから「サウジの意向(80~100ドルを目指す方針)」との対立を鮮明にする恐れもある。そうした思惑が交錯する中で原油価格も大きく揺さぶられる可能性も否定できない。