中国の高齢者人口(60歳以上)は、2億4000万人に達しようとしている。そのうち27%は国家規定の退職年齢を超えても、依然として仕事を継続している。ゆっくりしたいが、まだまだ仕事は可能な年齢でもある。世界を見渡しても多くの先進国で年金制度はゆらいでいる。高齢者を仕事から解放することは可能なのだろうか。ネットメディア「騰訊網」が年金問題を特集した(1元=17.1日本円)。

3つ問題点

中国経済,高齢者
(画像=PIXTA)

年金の問題点は次の3つに集約されるという。

(1) 所得代替率(公的年金の受取額水準)の低さ。ほとんどの受給者にとって十分な金額ではない。
(2) 社会福利厚生の充実した国家では、年金支給額は減少する傾向にある。中国はまだそこまで至っていない。
(3) 法律による高齢者保護が十分でない。

まず所得代替率である。世界銀行は、退職前の生活水準を保つための所得代替率は、少なくとも70%としている。また国際労働機関(ILO)は、所得代替率55%を“警戒ライン”としている。

しかし中国(2015年)の退職者総代替率は44.08%だった。翌2016年から年金財政の増加率は、2015年まで続いた10%以上から、6.5%、5.5%、5.0%と下がり続けている。このまま制度改革がなければ、21世紀末の所得代替率は20%前後になるとみられている。

年金支給額は月4~5万円

2017年末、中国の一般企業退職者の年金は、ほとんど2300~3000元(3万9300円~5万1300円)の範囲内にある。この支給額は毎年上昇してのものである。すでに支給額のアップは生活の前提となっている。

それでも「年金支給額は足りない。」これは大多数の声だ。こうした生活費不足に対し、どのように備えればよいのだろうか。中国青年報社会調査センターによるレポートがある(複数回答)。

自己による備え 63.2%
法律・制度の改善 53.2%
子女による世話 51.1%
年金財政拡大 46.8%
社会の関心を喚起 39.4%
友人知人による扶助 19.9%

自己責任によって備えるとは、つまり仕事を続けることに他ならない。現在60歳以上の定年退職者のうち、27%近い人は、働いているとみられる。

労働法による保護は打ち切り

ドイツ連邦統計局のWebサイトによると、同国の高齢者就業率は10年連続で上昇した。法定退職年齢を超えた65~69歳年齢層の15%が仕事を継続している。10年前は7%だった。

また日本は高齢者就業の促進では“模範国家”である。65歳以上への定年延長への制度変更、無期雇用契約への変更、65歳以上の雇用などに際し、企業への補助金を給付している。とくに中小企業へ対しては手厚い。

これに対し、中国では退職年齢に達すると「中華人民共和国労働合同法」によるさまざまな労働者保護はみな打ち切られてしまう。

例えば、雇い主は好きなように雇止めが可能となる。労災保険も受けられない。そのため北京で労災事故にあい、障害をの残ってしまった高齢労働者のMさんは裁判所に訴え出るしかなかった。

先進国の後を追う

退職年齢(男60歳、女55歳)の引き上げ、給付レベルの引き下げは、まだ検討段階である。先進国の事例を紹介しながら、啓蒙に努めている段階だ。社会不安を招きかねない事案だけに、用心深さを必要とする。

今すぐ進めるべきは労働法の改正だろう。中国では2020年には要介護高齢者が4200万人に達すると見られている。就業能力と意欲のある人には働いてもらいたい。そして新しい高齢者政策の実行に国家は精力も財力も大量につぎ込むべきだと記事は結んでいる。

中国の年金事情は、日本など先進国の経験を忠実に後追いすることは間違いない。中国社会の在り方は、民衆の意識も含め急速に先進国化している。先進国の高齢者向けサービス産業には大きなチャンスだ。中国進出を視野に入れた、国際的に通用するプラットフォームを開発すべきだろう。(高野悠介、中国貿易コンサルタント)