中国経済,高齢者
(画像=PIXTA)

目次

  1. 中国が直面する高齢化問題
  2. 年金制度が抱える3つの問題点
  3. 年金支給額は月4~5万円
  4. 労働法による保護は打ち切り
  5. 高齢者の雇用が喫緊の課題
  6. 先進国にとってのビジネスチャンスにも

中国が直面する高齢化問題

中国の高齢者人口(60歳以上)は、2億4000万人に達しようとしている。そのうち27%は国家規定の退職年齢を超えても、依然として仕事を継続している。まだまだ仕事が可能な年齢ではあるが、それよりも、収入を得るために働かざるを得ないという面が強いだろう。世界を見渡しても多くの先進国で年金制度はゆらいでいる。中国は、これだけ多くの高齢者を将来的に抱えていけるのだろうか。

ネットメディア「騰訊網」が年金問題を特集した(1元=17.1日本円※本記事は、2018年6月12日に公開したものを再編集したものです)。その記事をもとに、中国の高齢化問題について考えてみよう。

年金制度が抱える3つの問題点

中国での年金の問題点は次の3つに集約されるという。

(1) 所得代替率(公的年金の受取額水準)の低さ。ほとんどの受給者にとって十分な金額ではない。
(2) 社会福祉制度の充実した国家では、年金支給額は減少する傾向にあるが、中国では社会福祉の基盤がまだ整っていない。
(3) 法律による高齢者保護が十分でない。

まず所得代替率である。世界銀行は、退職前の生活水準を保つための所得代替率は、少なくとも70%としている。また国際労働機関(ILO)は、所得代替率55%を“警戒ライン”としている。

しかし中国の退職者総代替率(2015年)は44.08%だった。さらに、年金財政の伸び率は、2015年まで10%以上だったのに、16年度からは6.5%、5.5%、5.0%と下がり続けている。このままいけば、21世紀末の所得代替率は20%前後になるとみられている。