(本記事は、大村大次郎氏の著書『知ってはいけない 金持ち 悪の法則』悟空出版、2018年12月7日刊の中から一部を抜粋・編集しています)

億万長者が激増している日本

知ってはいけない 金持ち 悪の法則
(画像=NOBUHIRO ASADA/Shutterstock.com)

昨今、日本で金持ちが激増しているのをご存知だろうか?

世界的な金融グループであるクレディ・スイスが発表した『2016年グローバル・ウェルス・レポート』によると、100万ドル以上の資産をもっている人々、つまりミリオネアと呼ばれる日本人は282万6000人だった。

前の年よりも74万人近く増加しているという。増加率は世界一だったのである。

現在はおそらく300万人は超えていることだろう。また日本銀行の統計によると、17年9月末の時点において、個人金融資産は1800兆円を超えたという。

これは、生まれたばかりの赤ん坊から100歳を超える老人まで、すべての日本人が一人あたり平均約1400万円の金融資産を持っている計算になる。

家族4人だったら、家族で6000万円近い金融資産を持っていることになる。あまり知られていないが、日本の個人金融資産というのは、バブル期以降、実は激増しているのだ。

バブル期の1990年の段階では、個人金融資産は1017兆円だった。ところが、この20数年の間に、80%も増加しているのだ。

しかも、この間、日本経済は「失われた20年」とさえ呼ばれる苦しい時代のはずだった。いったい、どこの誰がそれほど金融資産を激増させているのだろうか?

あなたは、このことに違和感を覚えないだろうか?

自分は、そんなにお金は持っていないと。

もちろん、そうである。

実は、この個人金融資産の大半は、一部の富裕層に集中しているのである。つまりは、富裕層が増加し、その富裕層へのお金の集中が起きているということである。

本当の金持ちはマニュアルなんて読まない

これだけ富裕層が増えているのだから、「自分もそのグループに入りたい」と思う人が次々に現れるのは当然である。

だから、金持ちになるために、必死に努力している人も増えている。巷には、「金持ちになるためのマニュアル本」があふれている。

「株をやりなさい」
「仮想通貨をやりなさい」
「不動産投資をしなさい」

などと、簡単に金持ちになれることを売り物にする本が数多く出版されている。なかには、「心がけをよくすれば金持ちになれる」というような、スピリチュアル系の本も少なくない。

ところで、筆者は元国税調査官である。

国税調査官というのは、わかりやすく言えば、税務署員である。

納税者が決められた通りに申告して納税しているかをチェックするのが仕事だ。必然的に、金持ちと呼ばれる人たちとたくさん接触してきた。そして、各業界や経済社会の動きもつぶさに観察してきた。

その経験を通じて、明確に出せる結論がひとつある。それは、巷に流れている「金持ちになれる方法」は、99%役に立たないということだ。

現在、資産を激増させている人々というのは、「金持ちになるためのマニュアル本」などはまったく読んでいない。彼らは、別の理由で金持ちになっているのだ。

そして、それは普通の人では、けっして真似ができる内容ではないのである。

「自分も一獲千金」と思ったら大間違い

「最近、金持ちになった人」というと、「億り人」をイメージする人も多いはずだ。いわゆる仮想通貨などで大儲けした人々の俗称である。

この言葉が流行したのは2017年だった。同年は、仮想通貨の価値が高騰し、「仮想通貨元年」とも呼ばれた。

そして、「うまく運用して億単位の大金をつかんだ人たちがたくさんいる」という噂がまことしやかに流れ、マスコミにもたびたび取り上げられた。

では、実際に仮想通貨で大儲けした人はどれくらいいたのだろうか?

18年5月、国税庁の発表により、17年に仮想通貨で1億円以上儲かった人(いわゆる「億り人」)のおおよその人数が、判明した。

同年5月25日に配信された時事通信のニュース記事を読んでいただきたい。

「1億円超収入、300人規模=仮想通貨売買活発で」──国税庁

2017年分の確定申告で雑所得の収入が1億円超あったとした納税者のうち、仮想通貨の売買で収入を得ていた人が少なくとも331人に上ることが25日、国税庁のまとめでわかった。

昨年は相場高騰で、いわゆる「億り人」の急増が話題となった。国税庁は「331人の収入の大半は、仮想通貨売買によるものではないか」と分析している。

17年分の確定申告をした人は、前年比1.3%増の2198万人。このうち、納税の必要がある641万人の所得金額は同3.4%増の41兆4300億円、申告納税額は同4.6%増の3兆2000億円だった。雇用の改善や株価が順調に推移したことなどが影響したとみられる。

仮想通貨売買による所得は雑所得として計上される。公的年金以外の雑所得の収入額が1億円以上だった納税者は、前年の238人から549人へと急増。このうち、仮想通貨取引で収入を得ていた人が6割超を占めた。

(2018年5月25日時事通信配信)

この記事を読んで、「1億円以上手に入れた人が300人以上もいるのか!うまくやったな。私も仮想通貨をやってみたい!」と、一瞬でも考えた人は少なくないはずだ。

しかし、少し冷静になってもらいたい。

仮想通貨をやっている人(購入している人)の母数を知れば、そんな希望は一気にしぼんでしまうだろう。

国内での仮想通貨の取引者は、364万人。億を稼いだ人は、そのうちのわずか300人あまり。つまり、1万人に一人もいない。

あれだけ、濡れ手に粟にようにザクザクお金を手に入れていた「億り人」も、実際はほんの一握りしかいなかったということだ。

なぜ「長者番付」は廃止されたのか

それにしても、なぜ「金持ちの正体」は世間からはなかなか見えにくいのか?昔はもっと一般に知られていたはずである。

「どこそこの誰だれは、どのくらいの資産を持っている」

というような情報は、いまより数多く流れていた。

しかしいまは、そういう情報はほとんど流布されない。だから、全然金持ちに見えない人が、実はすごい豪邸に住んでいたり、タワーマンションをキャッシュで買っていたり、というようなことがままあるのだ。

では、なぜ最近になって「金持ちの情報」をあまり見聞きしなくなったのか?

それには、「長者番付の廃止」が大きく影響している。

戦後の日本では、半世紀以上の間、「長者番付」という制度があった。それは、一定以上の高額収入がある者の氏名を税務署が公表するという制度である。

なぜ、このような制度ができたかというと、高額所得者を発表することで「世間の人々に高額所得者を監視させる」という意味があったからだ。

高額所得者はそれだけ社会的責任も大きいので、世間から見張られる必要があるということだ。

長者番付の発表は、毎年4月に行われ、春の風物詩ともなっていた。

毎年4月には、各業界ごとの高額所得者ランキングが発表され、新聞にも掲載されていた。納税額が1000万円以上の人は皆、公示されていたので、有名な文化人、芸能人や実業家のみならず、地方のちょっとした資産家の情報も、国民の誰もが知ることができた。

しかし、2005年に「長者番付の発表」は突然廃止されたのである。

その理由は、表向きは「個人情報保護のため」ということになっている。

長者番付では、高額所得者の住所が特定できるため、「個人情報保護の観点からよろしくない」ということである。

しかし「住所が特定されること」が問題ならば、国税庁が住所を伏せて発表すればいいだけである。

本当の理由は、「世間の金持ちへの関心をそらすため」だったのである。つまりは、金持ちを守るためだったのだ。

2000年代に入ってから億万長者は激増している。その一方で、同年代以降、サラリーマンの平均年収は下げられっぱなしだった。そのことに世間が気づけば、「なぜ我々の生活は苦しいのに、億万長者が増えているのだ!」という話になる。

当局としては、それを恐れたのである。

つまり、億万長者の激増を隠すために、長者番付は廃止されたのだ。

知ってはいけない 金持ち 悪の法則
大村大次郎(Ohmura Ohjirou)
大阪府出身。国税局で10年間、主に法人税担当調査官として勤務し、退職後、経営コンサルタント、フリーライターとなる。執筆、ラジオ出演、テレビ番組の監修など幅広く活躍中。『税金を払わずに生きてゆく逃税術』(悟空出版)、『あらゆる領収書は経費で落とせる』(中公新書クラレ)など著書多数。また、経済史の研究家でもあり、別のペンネームで30冊を超える著作を発表している。

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