近年、富裕層に対する課税強化が国際的にも国内的にも進んでいる。いわゆる「パナマ文書」の公開によって、タックス・ヘイブンを使った節税が「税逃れ」として厳しい目が向けられるようになり、日本の国税庁も富裕層にターゲットを絞ったプロジェクトチームを作り、資産の海外移転などに目を光らせている。こうしたこともあり、「スイスに資産を預ける」と聞くと、何かやましいお金、運用で一儲けしようとしている人のお金というイメージを持つ人が多いのではないだろうか。

こうした見方に対し、「リスクの高い日本から海外に資産を避難させるのは当然。決して脱法行為などではない」と異を唱えるのが、T&T FPコンサルティング社長の髙島一夫氏。日本や海外の金融機関に勤めたあと、スイスのプライベートバンクの取締役となった経歴を持ち、現在は、日本の資産家とスイスのプライベートバンクの仲立ちをするエクスターナル(外部)・マネジャーをしている。また、2015年には『なぜ、富裕層はスイスにお金を預けるのか?』(髙島宏修氏との共著、総合法令出版)という本も出している。そんな髙島氏に、『「日本リスク」から資産を守る』と題して、話を聞いた。(聞き手:ZUU online副編集長 押田裕太)

第2回は、「プライベートバンクの顧客となる富裕層」と「顧客が求めるニーズ」について。

髙島一夫氏
髙島一夫(たかしま・かずお)氏
株式会社T&T FP コンサルティング 代表取締役社長、CFP。早稲田大学卒業後、大和証券に入社。ロンドン大学留学後、大和スイスSAで日本・債券の投資アドバイザーとして8年間勤務し、その後、外資系証券会社数社で機関投資家マーケティング業務に従事した。1990年からスイスの大手プライベートバンクであるピクテ(ジャパン)の取締役を5年間務め、96年に独立。主に、個人富裕層を対象に資産運用のコンサルティングを行っている。主な著書に『なぜ、富裕層はスイスにお金を預けるのか?』(総合法令出版)、『資金3000万円からできるスイス・プライベートバンク活用術―こうすれば資産を有利に運用できる』 (同友館)など。

目次

  1. プライベートバンクを利用する富裕層とは
  2. 富裕層の相談内容。海外移住を考えるワケ、お勧めの移住先は?
  3. 海外移住を目指すのならイマ!

プライベートバンクを利用する富裕層とは

スイスのプライベートバンク
(画像=ZUU online)

──プライベートバンクを利用する顧客層について教えてください。日本の富裕層で利用する人の傾向のようなものはありますか。

プライベートバンクとしては、金融資産が1億円以上はないとメリットがないという考えがあります。最低5000万円がギリギリのラインですが、「それくらいの資産で5%の運用利回りをあげても仕方がない」とは思っているでしょう。近年、最低預入金額は徐々に引き上げられている傾向にあります。もちろん私個人としては、若い方で5000万円を保有しているのはすごいと思いますが、プライベートバンクとしてはそうではないということです。

彼らが喜ぶのは、5億円、10億円といった資産を持つ顧客を担当するときです。資産額にかかわらず、運用の手間や事務処理にかかる時間は同じですから、ビジネス的な観点から考えてもそうなるのは自然な流れでしょう。

顧客にはさまざまな属性の方がいらっしゃいますが、やはり経営者や開業医、不動産オーナーといった何かしらのオーナーの方々が多いです。

近年では、会社の売却や新規上場を通じて大きな利益を得た方々も増えています。こうした方々は富裕層の中でも資産額のケタが変わります。たとえば、保有する自社株の価値が100億円で相続が発生すると、55億円が相続税で取られてしまいます。そして、それを支払うために、遺された家族が自社株を売却してしまったら、会社が他人の手に渡ってしまうかもしれません。そういった事態を避けたい、会社と家族の資産を守りたい、というニーズを持つ方々が利用されています。

あとは、最近になって増加傾向にあるのが、相続した財産が思った以上に大きかったパターンです。まだ若いのでどうすればいいのかわからないという方もいます。その次に多いのがシニア層になります。定年リタイアまで勤めあげて、ある程度の金額を手にした方々です。住宅も保有しているので生活的にはなんの苦はなく、退職金で手にしたキャッシュを運用して、老後をうまくマネージしたいというニーズを持つ方です。

富裕層の相談内容。海外移住を考えるワケ、お勧めの移住先は?

──富裕層の相談内容としては、どのようなものが多いのでしょうか。