4タイプの怒りへうまく対処する方法
まず、怒りを表に出しやすいチンパンジーとボノボは、どのようなタイプだろうか。
「チンパンジーは、人に勝ちたい、成果を上げたいという意識が高く、なにかと周囲の人にマウンティングしないと気が済まないタイプ。自分が軽んじられていると感じると、怒りっぽくなることが多い。
だから、チンパンジータイプの上司であれば、『報連相』をこまめに入れていくといいでしょう。
一方、ボノボは感情的で、周囲に依存的な傾向があります。自分が周りに嫌われていないかを気にするタイプなので、変化や褒めるべきところが見つかったら、声をかけていくと効果的です。
『○○さんのおかげです』『うれしいです』などと感情を伝えると良いでしょう。ボノボの多くは、お腹が減ると怒りっぽくなる傾向にあるので、食べ物の差し入れなどでコロッと機嫌が直ることもあります」
普段は怒りをあまり表に出さないものの、周りからは突然、怒ることがあると恐れられるのはゴリラとオランウータンだ。
「ゴリラは、普段は穏やかで、周りに気を使う縁の下の力持ちで、心配性。イライラしているときはかなりストレスをため込んでいる可能性があります。『何かお困りのことはありませんか』『問題があったら言ってください』などと声をかけていくと、怒りがほぐれていきます。
オランウータンは、職人気質で一人の世界に入りがちな傾向があります。考え事や作業に集中しているときは話しかけないほうがベター。ほとんど耳に入っていないので、あとから『聞いていない!』などと怒り出すことがあります。話をするときはきちんと場と時間を設けることで、すれ違いを防ぎましょう」
怒る上司や取引相手に悩まされている人の中には、怒られたことがトラウマのようになり、相手の顔を見ただけで、動悸がしたり、手足が冷えてきたり、心身的な症状をきたしてしまうほど気に病んでしまう人もいる。
「原因をたどると、家族関係に問題があるケースが少なくありません。自分を怒った相手に、威圧的だった父親、自分をいじめたきょうだいなどを重ね合わせてしまい、トラウマ反応が現れているのです。
この場合は、自分自身に「○○(怒った相手)は、私のお父さんではない」などと繰り返し自分に言い聞かせることで、恐怖心が薄まり、心が安定します」
一見、手に負えない怒りも、その原因は「すれ違い」にあるとわかると、予防や対策も取りやすい。まずは類人猿分類で、自分と相手を「知る」ことから始めてみてはいかがだろうか。
名越康文(なこし・やすふみ)
精神科医
1960年、奈良県生まれ。相愛大学、高野山大学客員教授。専門は思春期精神医学。近畿大学医学部卒業後、大阪府立中宮病院(現・大阪府立精神医療センター)精神科主任を経て、99年退職。引き続き臨床に携わる一方、テレビ・雑誌・ラジオなどのメディアで活動。近著『僕たちの居場所論』(角川新書)など著書多数。(『THE21オンライン』2019年04月09日 公開)
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