2013年3月30日、朝鮮民主主義人民共和国(以下は北朝鮮)は「政府・政党・団体特別声明」を出し、「今から北南関係は戦時状況に入り、全ての問題は戦時に準じて処理される」と宣言しました。
ここ数ヶ月、朝鮮半島の地政学的な見通しは不安定な状況にありましたが、今後はより緊張が高まる可能性があります。
これより少し前ですが、1月21日には、政府が2013年度予算で防衛関係費を2012年度予算(4兆7138億円)から数百億円増額する方針を固めたとの報道がありました。防衛費の増額は実に11年ぶりになります。
中国の領空・領海侵犯や、北朝鮮の長距離弾道ミサイル発射など日本周辺の安全保障環境の激変を受け、中国や北朝鮮への牽制と日米同盟強化を狙う目的と伝わっています。
このような状況により、現在防衛関連銘柄に注目が集まっています。
昨日3/29には既に防衛関連銘柄が動き出しています。
参考:
北朝鮮の緊張高まる、防衛関連株が前場に急伸[サーチナ
2013/03/29(金) 12:08]
そして、冒頭の北朝鮮からの正式な声明は3月30日(土)だったこともあり、週明けの相場では更に大きな動きが出るかもしれません。
今回はこの件の簡単な経緯と、注目の集まる防衛産業銘柄についてのまとめをお届けします。
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◉近年の地政学的リスクの高まり
近年の東アジア情勢は混沌としており、ここ2〜3年展望予測が立て辛い状況にありました。これは、2010年から2012年までの間に、ほぼ全ての東アジア諸国にて政権交代があったことが大きな理由と言えるでしょう。
まず中国は、2013年の3月末に習近平氏が国家主席に就任します。また、韓国も2月に李大統領から朴大統領への交代がありました。しかも現状、政権運営は安定しているとは言い難い状況です。台湾も昨年の初めに馬総統が続投しましたが、今年に入って大規模な政権打倒デモが起きるなど、韓国同様に、政権運営が安定していません。そして北朝鮮でも、金正日総書記が死去し、三男正恩氏に代替わりが行われました。
もちろん御存知の通り、日本でも昨年末に民主党から自民党に政権が戻り、安倍内閣が始動したばかりです。
また政権交代の時期が重なったことに加えて、北朝鮮は2012年12月にロケットの打ち上げを行い、今年に入って核開発を主張し出しました。その後2月12日には地下核実験の実施を発表しています。
そして核兵器による攻撃対象を米国にまで及ぶと大々的に宣言し、核兵器の先制的な使用もあり得るという声明を出しています。
(ちなみに過去、核兵器の先制使用の可能性を公式に述べた国は米国以外にありません。中国や旧ソ連も、核攻撃を受けた場合は核による報復を行うという宣言までしかしていないのです。北朝鮮の発言は、米国に次ぐ2番目になります。)
このような状況の中、3月30日に北朝鮮から「北南関係は戦時状況に入り」の声明が伝えられました。
地政学的なリスクは、より一層の高まりを迎えるものと思われます。
◉そもそも防衛産業とは?
防衛産業の具体的な内容ですが、銃火器や砲弾などの攻撃兵器、護衛艦や潜水艦、また航空機やミサイル、ミサイル迎撃などの防衛システムと多岐に渡ります。
ただ、第二次世界大戦の敗戦国である日本では、防衛産業は決して大規模なものではありません。
少し古い数字で恐縮ですが、日本の平成19年の防衛生産額は1兆8995億円と、工業生産総額の0.6%に留まっています。これが米国の場合は、ピーク時で約45兆円となり、少なく時期でも25兆円程度の規模を誇ります。
また、日本防衛装備工業会134社へのアンケート調査では、防衛依存度10%以下の企業が半数を超え、50%を超える企業は25社程度しかありません。しかも、防衛依存度が高いのは概ね中小企業であり、大企業は民間向けの技術をうまく使いながら、防衛省の要請に応えて生産しているのが実態です。
防衛装備品の生産に参加する企業数は、戦闘車両(90式戦車)で約1300社、戦闘機(F-15)で約1100社、護衛艦(イージス艦)で約2200社となっています
ただ当然のように、有事の際にはこのような企業群は注目を集める銘柄になります。米国の例ですが2001年の9.11のテロ事件の際には、ボーイングなどの軍需・防衛産業銘柄の値上がりが起きました。