不動産投資は、効果的に活用すれば相続税対策になります。しかし、「不動産投資で万一失敗してしまったら資産が減るのではないか」と不安を覚える人もいるでしょう。そこで本稿では、不動産投資を利用して相続税対策を行うメリット・デメリットについて解説します。

不動産購入,相続税対策
(写真=Andrii Yalanskyi/Shutterstock.com)

目次

  1. 1.不動産投資が節税になる仕組みを学ぼう!
    1. 1-1.そもそも相続税の仕組みから
    2. 1-2.それでも相続税が発生する場合
  2. 2.相続税対策をするメリット
    1. 2-1.マンションやアパートを建てる
    2. 2-2.人に貸して評価額を下げる
    3. 2-3.ワンルームマンションに投資する
  3. 3.相続税対策をするデメリット
    1. 3-1.失敗するとお金を失う
    2. 3-2.売却先が見つからない
    3. 3-3.最悪の場合ローン地獄に
  4. 4.専門家(税理士)に相談しよう
    1. 4-1.相続税の申告実績がある
    2. 4-2.相続税の税務調査対応の実績がある
    3. 4-3.シミュレーションをきちんと作成する
  5. 5.まとめ

1.不動産投資が節税になる仕組みを学ぼう!

不動産購入,相続税対策
(画像=jeffy11390/Shutterstock.com)

不動産投資が相続税対策になると聞いたことはあっても、「具体的な仕組みまではわからない」という人も多いでしょう。不動産投資で相続税対策をするメリット・デメリットを解説する前に、相続税の仕組みについて簡単に確認しておきましょう。

1-1.そもそも相続税の仕組みから

相続税は、財産を相続した際にかかる税金です。相続税には基礎控除があり、相続財産の総額が基礎控除の範囲内であれば、相続税はかかりません。基礎控除の計算式は、以下のとおりです。

3,000万円×600万円×法定相続人の数

たとえば、妻と子2人の合計3人が法定相続人というケースでは、基礎控除の金額は以下のように計算します。

3,000万円×600万円×3人=4,800万円

つまり、相続財産の総額が4,800万円以内であれば、相続税の申告も納税も必要ありません。

1-2.それでも相続税が発生する場合

相続財産の総額が基礎控除を超えると、相続税がかかります。

相続税は、相続財産の総額から基礎控除を差し引き、相続財産を法定相続分で按分したものに相続税率をかけて計算します。

税率は10~55%まであり、相続財産が大きくなるほど高い税率が適用されます。そのため、相続財産を圧縮し、できる限り適用される税率を低くすることが相続税対策の基本です。

相続財産の評価方法は、現預金は額面、有価証券は時価といったように財産によって変わります。不動産投資が節税になる理由は、ここにあります。

・1-2-1.土地は路線価で圧縮(→時価の8割程度)

土地の相続税評価額は、路線価を用いて計算します。路線価とは、道路ごとに決められた1平方メートルあたりの評価額のことです。土地の面積に路線価をかけることで、おおよその相続税評価額を知ることができます。路線価は毎年改定され、国税庁のホームページで公表されます。

路線価を用いて評価すると、土地の評価額は時価の8割程度に圧縮されます。

・1-2-2.建物は固定資産税評価額で圧縮(→時価の7割程度)

建物は、固定資産税評価額を用いて評価します。固定資産税評価額は、毎年5月頃に役所から送られてくる固定資産税の課税明細に記載されています。建物は経年劣化するため、毎年少しずつ評価額が下がっていきます。

固定資産税評価額を用いて評価すると、建物の評価額は時価の7割程度に圧縮されます。

2.相続税対策をするメリット

不動産購入,相続税対策
(画像=William Potter/Shutterstock.com)

不動産投資を活用することで、相続税対策になります。生前に相続税対策をしておくかどうかで、相続税の金額は数百万円単位で変わってくることもあるため、しっかり対策を講じておきましょう。続いて、不動産投資で相続税対策をする具体的な方法とメリットをお伝えします。

2-1.マンションやアパートを建てる

所有している土地にマンションやアパートを建築すると、相続財産の評価額を下げられます。現預金が建物に姿を変えれば、評価方法の違いによって評価額が圧縮されるからです。

たとえば現預金1億円を所有していた場合、相続税評価額は1億円です。しかし、1億円でマンションやアパートを建築した場合、建物の相続税評価額は7割程度の7,000万円に圧縮できます。

2-2.人に貸して評価額を下げる

建築したマンションやアパートを人に貸すと、さらに相続税評価を下げられます。第三者に賃貸している土地建物は、借地権割合・借家権割合をかけて評価します。

相続税評価額2億円の土地と1億円の建物を所有していて第三者に貸した場合、相続税評価額は以下のようになります。なお借地権割合は70%、借家権割合は30%、賃貸割合は100%とします。

・土地
土地の評価額 ×(1-借地権割合×借家権割合×賃貸割合)
2億円 ×(1-0.7×0.3×1)=1億5,800万円

・建物
建物の評価額×(1-借家権割合×賃貸割合)
1億円 ×(1-0.3×1)=7,000万円

2-3.ワンルームマンションに投資する

ワンルームマンションは土地の割合が小さく、建物の割合が大きいという特徴があります。土地と建物を比べると、建物のほうが財産の圧縮率が高いため、不動産投資による相続税の節税効果が高まります。

また貸付事業を行っている不動産を相続人に相続し、相続人が貸付事業を続ける場合は、小規模宅地等の特例が適用されます。その場合、200平方メートルまでであれば、土地の評価額が50%減額されます。

ワンルームマンション投資なら、建物を建てる場合と比べて投資金額が少なくて済みます。土地を所有していない場合は、まずはワンルームマンション投資から始めてみるといいかもしれません。

3.相続税対策をするデメリット

不動産購入,相続税対策
(画像=Jirsak/Shutterstock.com)

不動産投資で相続税対策をする際は、デメリットに注意しましょう。不動産投資について何も知らないまま、相続税対策になるという理由だけで物件を購入するのは危険です。投資であることを理解した上で、効果的に活用することが大切です。

3-1.失敗するとお金を失う

不動産投資は事業経営であり、必ずしも成功するとは限りません。不動産経営では、固定資産税や火災保険、入居者の募集費用、定期的な修繕・メンテナンス費用など、さまざまな経費がかかります。

入居率や賃料が維持できていれば、家賃収入でこれらの経費をまかなうことができるので問題ありません。しかし、入居率が維持できなかったり賃料が下落したりすると、最悪の場合は収支が赤字になってしまいます。

ただし、その場合も相続税対策としての効果はなくなりません。とはいえ、そもそも資産が目減りしてしまっては、相続税対策の効果は薄れてしまいます。

不動産購入によって相続税を大幅に圧縮できるのは事実ですが、「不動産投資は経営であり事業である」という点をよく理解しておくことが大切です。

3-2.売却先が見つからない

不動産経営が赤字に陥った時、物件を売却しようと考える人もいるでしょう。しかし、思うように物件が売却できないこともあり得ます。特に地方物件で、駅から遠かったり築年数が経過していたりすると、売却先が見つからない可能性が高いです。

相続税対策で不動産投資をするなら、万一経営がうまくいかなかった場合にいつでも売却できるよう、売却しやすい物件を見極めて投資することが大切です。たとえば都心の駅近物件など、人気エリアの魅力的な物件を選ぶようにしましょう。

3-3.最悪の場合ローン地獄に

不動産経営が赤字でも、物件を売却できれば売却益からローンを返済することができます。しかし、物件が売却できないとなると、自己資金でローンを返済しなければなりません。最悪の場合、物件が売れずに赤字が続く上に、ローンの返済によって自己資金が目減りしていってしまいます。

相続税対策で不動産投資を活用する場合は、実績のある不動産会社の担当者や税理士など、専門家に相談しながら進めていくことが大切です。

4.専門家(税理士)に相談しよう

不動産購入,相続税対策
(画像=Andrey_Popov/Shutterstock.com)

不動産投資で相続税対策をする際は、専門家の力を借りることが大切だとお伝えしました。続いては、税理士選びのポイントを解説します。信頼できる税理士を選び、きちんとシミュレーションをした上で、相続税対策を行いましょう。

4-1.相続税の申告実績がある

「税金計算のルールは決まっているのだから、どの税理士に任せても同じ」と思うかもしれません。しかし実際は、実務経験の差によって大きな違いがあります。

相続税の申告は、基礎控除を超えなければ必要ありません。そもそも相続税の申告を一度も経験したことがないという税理士も存在します。

そのような税理士は、教科書通りに相続税の申告書を作成することはできるでしょうが、相続税対策について有効な提案してくれることは望めないでしょう。

これまでに相続税の申告実績が豊富にあるか、しっかりチェックしてください。累計の申告実績、年間の申告実績、直近の申告実績を確認すると安心です。

4-2.相続税の税務調査対応の実績がある

一口に相続税の申告といっても、その規模はさまざまです。
申告実績だけでなく、相続税の税務調査対応の実績があるかどうかも確認するようにしましょう。相続税の税務調査は、一般の税務調査とは大きく異なります。実績のない税理士に任せると、最悪の場合は追徴課税として数百万円単位の税金を請求されることもあり得ます。

4-3.シミュレーションをきちんと作成する

相続税対策になるからと、いきなり不動産投資や生命保険をすすめてくる税理士は危険です。不動産投資も生命保険も相続税対策になり得ますが、それはあくまできちんとシミュレーションをした場合の話です。

まずは相続財産を洗い出し、シミュレーションを作成するべきです。財産総額が基礎控除の範囲内であれば、そもそも相続税対策は必要ないからです。

しっかりヒアリングをした上でシミュレーションをしてくれるかどうか、税理士の姿勢を見極めましょう。

5.まとめ

不動産投資は、相続税を大幅に節税できることから、相続税対策として人気があります。しかし、不動産投資をよく理解しておかなければ、かえって損をしてしまうリスクもあります。

ただ単に不動産を購入すれば、相続税対策になるわけではありません。信頼できる専門家を見つけ、情報提供を受けながら不動産投資を行い、相続税対策を行いましょう。 (提供:YANUSY

【あなたにオススメ YANUSY】
副業ブームの日本!サラリーマン大家になるなら覚えておきたいこと
2019年以降の不動産投資は「コミュニティ」が欠かせない
賃貸業界の黒船になるか。インド発のOYOの実態
不動産所得での節税に欠かせない必要経費の知識
賃貸管理上でのトラブル対応術とは?