(本記事は、高橋 聡氏の著書『起業するより会社は買いなさい サラリーマン・中小企業のためのミニM&Aのススメ』講談社の中から一部を抜粋・編集しています)

失敗
(画像=PIXTA)

M&A失敗実例

会社や事業を買う際に気をつけるべきことをまとめたいと思います。

トランビを通じて成約に至ったM&Aのなかでも、前のオーナーさんとの引き継ぎ期間中に仲違いしてしまったり、重要な取引先を失ってしまったりというケースがあるのも事実です。

ここではあえてそういった失敗事例をご紹介いたします。M&A専門家の方々から聞いた、トランビ以外での失敗事例も含めてご紹介いたします。

M&Aには大きなチャンスがある一方、大きなリスクを伴う瞬間でもあります。多くの失敗事例を参照することからリスクを把握する力を高め、良いM&Aを実施できるようにしていただきたいと思います。

①会社を辞められなかった
サラリーマンの方が起業・独立のために事業を購入されたものの、現在の勤務先に退職したいと切り出したところ、辞表を受け取ってもらえなかったという話をよく耳にします。

退職して、夫婦でエステ事業を運営していく予定が、夫のほうが会社に強く引き留められ、退職を断念し、あまり事業に携わることができなくなってしまった、というようなケースです。

エステ事業を始めると決めたときは、主に夫が事業をまわし、妻は手伝い程度を想定していたのですが、夫が退職できなかったため、やむなく妻がほぼ一手にエステ事業を引き受けるようになり、負担が過剰になってしまったのです。

結局わずか半年程度で妻が音を上げ、夫妻はエステ事業を売り出すことを余儀なくされました。
②引き継ぎで失敗して、取引先を失った
引き継ぎの際の手違いから、事業購入後すぐに当初の目的をふいにしてしまった方もいます。

中古衣料を販売する会社が、後継者不在のため買い手を探していました。

衣服の縫製を手掛ける会社が買収に名乗りをあげ、M&Aが成立しました。販売と縫製の違いはあっても、同じ衣料品を扱う業種ということで、シナジーがあると考えられたのでしょう。

その主な狙いは、事業エリアの拡大、および中古衣料など商品を拡充すること、そしてもっとも大きな狙いは販売会社の持つ特定業者への販売ルートを手に入れることでした。

ところが、M&Aが成立したあとの事業引き継ぎの際、肝心のこの特定業者への挨拶や連絡を十分に行わなかったために、この会社との取引を失ってしまったのです。

引き継ぎの際の取引先への連絡は非常に重要です。

別のあるプログラミング教室では事業主が男性から女性に代わっただけでそれまで通っていた生徒の親御さんからの強い反発があり、生徒数が半減したケースなどもありました。

事業を引き継いだあとの、取引先には非常に丁寧に挨拶・報告する必要があります。
③がんばりすぎて社員が離反
サラリーマン出身の方がサービス業の会社を購入したケースをご紹介します。

この方は引き継ぎ前に中期経営計画を立てるなど、事業への熱意に溢れていました。

しかし、目標とした数字の達成を優先させるあまり、数人いた社員に無理な労働を強いてしまい、社長として孤立してしまったそうです。

その結果、事業引き継ぎ中にもかかわらず、廃業の危機に直面してしまいました。現場や現実に即した柔軟な対応ができず、スタートでつまずいてしまったわけです。

しかしこの方はなんとか危機を乗り越え、苦い教訓を活かして、その後の会社経営に邁進(まいしん)されています。
起業するより会社は買いなさい サラリーマン・中小企業のためのミニM&Aのススメ
高橋 聡
長野県長野市出身、長野高等学校卒業。デュポール大学(アメリカ・シカゴ)情報システム学科卒業、2001年 アクセンチュア株式会社に入社。通信販売大手の業績管理システムの構築、政府機関の業務基幹システムの構築、大手メーカーのグローバルSCMの推進などのプロジェクトに従事。
2005年アスク工業株式会社に入社。経営戦略室室長、取締役常務を経て2010年代表取締役社長に就任。
中小企業の事業承継問題を解決するため、日本初のユーザー投稿型M&Aマッチングサービス「TRANBI」を開発。「TRANBI」のサービス向上の為、2016年株式会社トランビを設立し、代表取締役に就任。同社のユーザー数は2019年に3万人を突破した。著書に『会社は、廃業せずに売りなさい』(実業之日本社)がある。

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