(本記事は、松岡 華子氏の著書「すべての女性を幸せにするネイルサロン 開業・集客の方法」合同フォレストの中から一部を抜粋・編集しています)

ネイル,女性
(画像=PIXTA)

「お店を出す」だけが開業ではありません

「開業=お店を出す」と考えている人は多いと思います。

「不動産屋さんに行って相談したり、店舗の物件を探すなんて敷居が高い」

「店舗を借りて、内装工事をして、家具を入れるなんて、ムリムリ。資金もないし、失敗したらどうしよう……」

もし、そんな思い込みで最初から開業を諦めてしまう人がいるとすれば、それは残念なことです。「ネイルサロンで働く」ことから卒業して、ネイリストとして独立して「個人事業主」となって営業を始めれば、それだけで「開業」になるのです。

実は、ネイルサロンは美容系サロンの中でも、比較的簡単に開業できるといえます。ヘアサロンは美容師免許が必要な上に、シャンプー台や大きな鏡など設備にもお金がかかります。アイラッシュサロンはベッドだけあればできますが、美容師免許が必須です。エステティックサロンは、場合によっては高額なエステ機材が必要だったり、それなりの広さと設備が必要になります。

その点ネイルは、ネイル道具一式と施術用のテーブルとイスがあれば、ちょっとしたスペースでも〝開業〟ができます。もっと言えば、テーブルとイスを置くスペースがなくても、ネイル道具一式をカバンに入れて持ち歩き、依頼された場所に出向く「出張ネイリスト」も〝開業〟ですし、自宅の一室で、お友達や知り合いに来てもらって「自宅サロン」にするのも〝開業〟です。

このようにネイルサロンには、さまざまな開業スタイル(店舗形態)があります。なかには「ネイルができるスペースがあるけど、お店を出してみない?」と周りから勧められたり、誘われたりすることもあるかもしれません。それも立派な開業です。

まずは、いろいろな開業スタイルのメリット・デメリットを知った上で、最初からあまり無理のない、自分の目的に合った開業スタイルからスタートしてみてはいかがでしょうか。

あなたは、なぜ開業を考えているのですか?

あなたが開業する「目的」は、どんなことでしょう? その目的によっても、開業スタイルは変わります。

「自分の好きなときに仕事をして、自由に休みを取って、旅行や趣味も楽しみたい」
「子どもが小さいので、自分の都合で休めるようにしたい」
「自分の好きなデザインで、自分の世界観で自由にネイルをしたい」
「サロン就職ではなく、一人でのんびりやりたい」
「将来は、自分ブランドのネイルサロンで店舗展開をしていきたい」

もし、自分の都合で働ける〝自由〟が目的の開業であり、多くの利益を望んでない、もしくは見込んでいないのであれば、家賃などの毎月の支出を抑えられる自宅での開業が適しているかもしれません。

「休みがそれほど取れなくても良いから、できるだけ多くの人にネイルをして、自分のファンを増やしたい。将来は自分のサロンを持ちたい」という〝独立志向〟であれば、スペースの広さは別として、人通りの多い場所で店舗での開業が向いているでしょう。

目的と同時に、「開業資金」も開業スタイルを決める大きな要素です。

仮に駅前の一等地で路面店舗を出したいという夢があっても、当然ですが資金がなくては難しいです。融資を受ければ開業資金を多くすることはできますが、毎月の返済の負担が大きいと売上を上げることに追われてしまいますし、マイナス営業が続けば、いずれは経営が難しくなってしまいます。せっかく夢を叶えるために開業したのに、「無理をして閉店」では残念です。

「借金はしないで、手持ちの貯金だけで開業したい」という場合は「自宅サロン」も開業資金を抑えられる一つの選択です。ネイル道具一式さえ揃えれば、依頼された場所に出向く「出張ネイリスト」として仕事をすることも可能です。

最初は〝店長兼従業員一人の小さなサロン〟でも、利益が出ればもっと大きい店舗に移転できますし、大きい店舗でスタッフを雇うようになるかもしれません。何年か後には2店舗目を出店して、将来は多店舗展開するネイルサロンの代表になっている可能性もあります。

私もその一人です。現在18店舗のネイルサロンを持つ私のスタートも、いわゆる「自宅サロン」からでした。自分に合った開業スタイルでスタートできるのも、ネイルサロンの良いところではないでしょうか。

出産後も自分のペースで働き、開業につなげる

ここで、私の「開業物語」を少しだけお話しします。

「ネイリストになる!」と決心した私は、ネイルスクールで1年間勉強をして、卒業後、ネイルサロンに就職しました。ネイルサロンを一緒に卒業した友人に誘われて、縁あって表参道の高級ネイルサロンのオープニングスタッフとして働くことになりました。

そのサロンは、大理石の床と壁、イタリアの高級メーカーの家具、というゴージャスなインテリアとラグジュアリーな雰囲気で、お客様を夢見心地にするには十分な空間でした。1990年代の初め頃、ネイルサロンは「限られた一部の女性が行くところ」という特別感がありました。そのお店も、著名人の奥様や芸能人が来られていたこともあり、高級なネイルの材料を扱い、最高の技術を提供していました。また、お客様に対する挨拶、言葉遣い、会話の話題、お話を聞くときの表情なども、このラグジュアリーなサロンで身につけることができました。

そのときに学んだことが、ティアラグレイスの理念でもある「すべての女性はお姫さま」の接客にも少なからず反映されています。

お客様が喜んでくださることが嬉しくて、私は毎日一生懸命働いていました。当時は独立開業なんて夢にも思わず、3年間楽しく働きました。

そんな私も25歳で結婚して主婦になりました。専業主婦になると、夕食の支度、洗濯、掃除のことばかりを考える日々でした。主婦の毎日も充実しているけれど、やっぱり仕事をしていたほうが楽しいということを実感して、その後、また近くのネイルサロンやエステサロンで平日にネイリストとしてアルバイトを始めました。

専業主婦だった私は「よし、出産しても働き続けよう!」と密かに決意していました。〝密かに〟と言うのは、声に出すと母から反対されるのが目に見えていたからです。

そして、妊娠を機に仕事から離れていたのですが、娘が1歳になる頃、私は娘を保育園に預けて、またネイルの仕事に復帰しました。

「子どもを預けてまで働く必要があるの?」

専業主婦で子育てに専念してきた母は、やはり大反対でした。お金が欲しいから働きに出るのではなく「ネイルの仕事をするのが楽しくて、好きだから働きたい」それがすべてでした。私にとって、ネイル以外の仕事は選択肢にありませんでした。

考えてみれば、女性には〝開業〟以前に、「出産か仕事か」という選択が必要な場合があります。私は、「どうして片方しか選べないのだろう?その気さえあれば、両方を選択できるはず。多少の努力と工夫をするだけで〝好きなこと〟〝楽しいこと〟ができるのだったら、いくらでも頑張れる!」と思いました。

「1歳の子どもを預けてまでも続けたい」と思えたのは、まさに〝好きなこと〟だったからとも言えます。反対する母には「私だって、子育てが大切だって分かってる。だから、仕事は保育園に預かってもらう時間だけにする」と約束しました。

出産後、お台場のホテル内のネイルサロンで、雇用形態をアルバイトに切り替えて、週3日で働き始めた私は、その後、知人の紹介で新規に立ち上げるサロンのお手伝いに誘われました。

「あなたの家の近くでお店を出す人がいるけど、そこでネイルをしてみたら?」

家から2駅隣でした。お台場とそのお店の掛け持ちを何とかできそうだったこと、オーナーはエステが専門でネイル部門を任せたいというオファーだったこともあり、引き受けることにしました。オーナーは私より年上の女性でしたが、とても優しく、叱られたことはありませんでした。そのおかげで、私は気持ちよく仕事ができましたし、「このオーナーのためにも頑張ろう」と思えました。

いつもオーナーから「ありがとう」と言ってもらえた経験は、私がオーナーになってからスタッフに接するときのお手本にもなりました。サロン開店の一部始終を見て実務的に勉強になったのはもちろん、オーナーとしてスタッフにどう接したらお互いに気持ちよく働けるかを、自分がスタッフとして感じることができたのは貴重な経験でした。オーナーも3人の子育てをしながら仕事をしていたので「私にもできる」と励みになりました。

先ほど述べたとおり、開業の前にどんなサロンで働いたか、どんなオーナーに出会ったかは、自身のサロン運営において大きな影響を与えます。もし働くサロンを選べるのなら、あなたが将来開業したいと思い描いているサロンに近いタイプのお店に就職すると、良い修業になると思います。

すべての女性を幸せにするネイルサロン 開業・集客の方法』
松岡 華子
株式会社ティアラグレイス 代表取締役社長
2004年、当時娘が3歳の時に、ネイルサロン1店舗目を1人でオープンし、スクールも開校。「スクールの卒業生が働けるサロンを」という思いから店舗展開をスタートさせる。現在、ネイル&アイラッシュサロン「ティアラリュクス」18店舗、ネイルスクール4校を経営。従業員数97名(全員女性)に上り、その店舗展開の手腕とスタッフ管理・教育能力が注目されている。独立開業を目指す方の支援セミナーも開催。現在、一般社団法人「神奈川ニュービジネス協議会」の理事を務める。著書に『働く女性が楽しく幸せをつかむ50の法則』(サンライズパブリッシング)がある。

※画像をクリックするとAmazonに飛びます
ZUU online library
(※画像をクリックするとZUU online libraryに飛びます)