(本記事は、松岡 華子氏の著書「すべての女性を幸せにするネイルサロン 開業・集客の方法」合同フォレストの中から一部を抜粋・編集しています)
社交的な人はネイリストに向いている
「どんな人がネイリストに向いていますか?」と聞かれることもあります。細かい作業が好きで、根気がなくては続けられない仕事ですし、手先の器用さも必要となります。それに加えて、1~2時間の間、お客様と向かい合うので、コミュニケーション力があって、社交的な人のほうが向いていると感じます。
実際、ネイリストの採用で私が重視するのは、ネイルの技術も大事ですが、それよりも「社交的で明るい人かどうか」です。ネイリストは接客業ですから、「笑顔で元気に挨拶ができる」ことは大切な要素です。ネイルの技術は努力や経験で向上しますが、内気な性格はなかなか変えることが難しいと思うからです。
とはいうものの「ネイリストという仕事が好きでたまらない。センスが良くてデザインを考えるのが得意。施術のスキルが高いのに、お客様との会話が苦手」というタイプの人もいます。
そのような人は、社交的ではないからネイリストは諦めたほうが良いかというと、そういうわけではありません。接客方法や会話術は経験を積んだり、先輩から学んで努力することである程度は身につけられるので、どんな仕事も何年か続けてみないと「向いていない」という判断はできません。早々に「向いていない」と結論を出すのではなく、コミュニケーションが苦手な人でも「お客様を喜ばせよう」と常に心がけるだけで気持ちがお客様にも伝わり、接し方も会話も自然に変わります。
ネイルサロンという場所は、ネイルというサービスはもちろんですが、ネイリストとお話がしたくてサロンにお越しくださるお客様がたくさんいらっしゃいます。それはこれからも変わらないでしょう。
そして「ネイルが好き」という強い気持ちがあれば、それが原動力になります。「コミュニケーションが苦手」という困難を乗り越えて好きなネイルが自分の仕事になったとき、毎日がどれほど楽しく、幸せを感じることができるか想像してみてください。
「好きなことを仕事にする」はこだわるべきポイントなのです。
この20年で大きく発展したネイル業界
ところで、日本の女性は、いったいいつ頃からネイルをするようになったか知っていますか?
歴史をさかのぼると、唐の時代に爪を染色していた楊貴妃の習慣が、平安時代の日本に伝わり、身分の高い女性たちの趣味として持てはやされたとか。その時代には、鳳仙花(ほうせんか)や紅花などの汁で爪に着色をしたそうです。江戸時代には、「爪紅(つまべに)」と呼ばれ、主に遊郭の遊女たちの間で嗜(たしな)まれていました。明治時代には、フランスから爪磨きの技術が伝わりました。
「ネイルエナメル」と言われている速乾性・耐水性のネイルラッカーがアメリカで登場したのは1920年代。自動車の塗装用のラッカーから開発されました。この頃から、ネイルエナメルが販売され、「ネイリスト」という職業が誕生しました。
そして1932年、ニューヨークのREVLONが、世界で初めて色彩豊かな「ネイルエナメル」を発売。それまで「マニキュア」と言えば〝薄い色で、透明感があるネイル〟でしたが、美しい発色と色もちの良い「ネイルエナメル」に世界中の人々が魅了されました。当時、おしゃれに敏感だった女性(現在の中高年世代)の中には、「ネイルエナメルと言えばREVLONだった!」という方も多いと思います。その後、1970年代には「付け爪」も登場しました。これが「スカルプチュアネイル」の始まりです。
1980年代の初めに、日本初のネイルサロンがオープン。1985年にはNPO法人日本ネイリスト協会(略称:JNA。今後、この本でも頻出する名称です)が設立され、1990年代、日本でネイル業界は急成長していきました。
思えば、私が初めてネイルサロンに行った1992年頃は、まだソフトジェルではなく、カラーポリッシュとスカルプチュアの時代でした。ネイル業界の成長期の幕開けの頃だったのでしょう。
その後、ネイリストになり、2003年に自分のサロンを開業してから16年。その間に、ネイルの主流はジェルネイルになり、ネイルを楽しむ人と同時にネイリストも増えてきました。
2007年には株式会社ティアラグレイスを立ち上げ、サロンを18店舗まで展開することができたのは、まさにネイル業界の右肩上がりの時代の波に乗れたことも大きいと思います。ティアラグレイスでは、ネイルサロンだけでなくネイルスクールも4校開校し、多くのネイリストを輩出してきました。
「ネイル白書」の報告で知る、ネイル業界市場の推移
すでにネイリストとして働いている人にとっても、これからネイリストになろうとしている人にとっても、ネイル業界の動向は気になるところです。そこで、まずは『ネイル白書2016-17』で報告された「ネイル業界」の調査結果から市場動向を見てみましょう。
『ネイル白書2016-17』は、JNA(日本ネイリスト協会)が2年に1回発行する白書で、ネイル事業を展開するメーカーやディーラー(卸業者)、ネイルサロンやネイルスクールなどのさまざまな企業へのアンケートとヒアリング、消費者の意識調査をもとにネイル市場の動向をまとめたもので、業界の動向を知る上で欠かせない刊行物です。
まず、ネイル産業全体の売上ですが、2016年で約2247億円です。その内訳は、ネイルサービス市場が約1678億円、消費者向けのネイル製品市場が約490億円、ネイル教育市場が約79億円です。
ネイル産業の市場の伸びはとても緩やかです。JNAの分析によれば、「業界全体の売上は緩やかながら拡大している。消費者へのネイルの浸透は進んでいるものの、セルフネイルの広がりなどによって、市場の大きな割合を占めるネイルサロンの売上が緩やかな伸びにとどまっていることが主な要因となっている」とのこと。
ネイルサロン数は、この調査の段階では約25000店で「都市部を中心に競争が激しくなっており、市場から撤退する店舗も多いものの、依然として参入する店舗数が上回ると予想されており、今後も施設数は増加すると思われる」というのがJNAの見解です。
確かに、街中を見ても、ネイルサロンは増え続けているように感じます。きちんとした店構えがなくても、テーブルとイスがあればネイルはできるので、ショッピングセンターやヘアサロンの片隅でもネイルの看板を見かけます。実際には、このリサーチに数えられていない自宅サロンや出張ネイルなどもあるので、新規店舗の数は確実に増えています。
その一方で、やはり余儀なく閉店・廃業してしまう店舗や個人事業もあるので、どんな業種でも同じですが、競合他社に勝って生き残っていく努力は必要です。
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