(本記事は、松岡 華子氏の著書「すべての女性を幸せにするネイルサロン 開業・集客の方法」合同フォレストの中から一部を抜粋・編集しています)
「次回の予約で埋まっていく」が理想的
「ネイルサロンを開業しよう」という思いを応援したくて、開業までの流れをここまでお話ししてきましたが、無事にサロンがオープンしたらゴールではありません。むしろ、そこからがスタートです!
オープン初日には、早々に予約していただいたお客様や、応援してくださるお知り合いの方が来てくださることでしょう。オープンのチラシや広告を見た新規のお客様の予約もしばらく続くと思います。注目したいのは、その翌月。オープン月に来てくださったお客様に、「リピーター」としてご来店いただくことが重要です。
新規開店は、目新しさや初回割引などの効果もあって新規の集客が見込めます。そのお客様が次回の予約をしてくださるかどうかがポイントです。サロンが長く続くためには「翌月が、今月のお客様の次回の予約で埋まっていく」のが理想です。
そんな「予約が埋まるサロン」になるためには、何が必要なのか、私がティアラで実践した方法も含めてご説明します。
まずは来店してもらうための「初回割引」
多くのサロンがオープンのときには、「初回割引」「オープン記念特典」などを設けます。「オープン記念特典」はお店にとってはたった1回だけの特典ですし、「初回割引」もお客様にとっては1回だけのチャンスなので、とても集客力があります。
ところが、あまりに割引率を大きくしてしまうと、「初回割引」のお客様が多くなってしまうことで客単価が低くなり、より多くのお客様を施術しないと目標売上に到達しないことになりかねません。
また、安さ目当てのお客様は、通常料金での施術を避けて、また別の「初回割引」を求めて新しいサロンに流れる傾向にあります。それらの点に留意しながら割引サービスを取り入れてみると良いと思います。
「初回割引」の目的は、「リピーターになってもらうために、まずは来店してもらう」ということを忘れないでください。そのためには、「また行きたい」「また会いたい」とお客様に思われるような施術や質の高いサービス、接客を含めたお店の雰囲気が重要になります。
■その他の割引や特典
お客様にリピーターになっていただくためには「リピーター割引」も一つの方法です。
よくあるのが、「1カ月以内の来店はオフ無料」や「その場で次回の予約をすると10%OFF」などです。これらの割引は、再来店のための動機付けにもなるので効果的です。ティアラでは、2回目の来店を促す「ワンモアチケット」をお渡しして、初回と同じ価格にしています。
ほかにも、「ポイントサービス」があります。ポイントカードを作って、「来店スタンプが3個たまったら20%割引」や「1000円利用ごとにスタンプ1個。20個たまると1000円割引」など。サロンだけでなく飲食店や雑貨屋さん、ブティックなどでも取り入れているところが多いですよね。
とはいえ、割引だけに頼るのではなく「次の予約はいつお取りしましょうか?」と笑顔で上手にお勧めできるコミュニケーション力も必要です。
本当のリピーターは3回目から
初回割引やクーポンやスタンプなどの特典は、来店を促す効果はあるのですが、あくまでも来店のきっかけづくりなので、ずっと来ていただける「リピーター」になってもらうための決め手にはなりにくいといえます。
3回目になると、割引目当てのお客様はグッと減る傾向にあり、「気に入ったから行く」と選んでくれるお客様が残ってくださることになります。つまり、3回目にご来店いただけるお客様を増やすことが大切です。
では、どうしたら3回目も来店してもらえるでしょうか。ポイントは次の4つです。
①サロンの特色で、リピーターを増やす
サロンの特色、つまりコンセプトです。ティアラの場合ですと、「すべての女性はお姫さま」です。ティアラ18店舗すべてでそのコンセプトを守り、インテリアはお姫さまのお部屋のような空間で、ピンクと白色で統一されています。ネイルデザインも上品でかわいいデザインやカラーが主体で、コンセプトが明確です。お客様はその特色を気に入って来店してくださっています。
あなたのサロンのコンセプトは何でしょうか。「隠れ家的なアットホームなサロン」「ケアを最重視。ケアならどこにも負けない」「コンテスト入賞ネイリストによる最先端のデザイン」「最高級のラグジュアリーな空間でセレブなひとときを」など、何でも良いと思います。「これだけは他のサロンに負けない」「これだけは貫きたい」という思いでサロンの特色を打ち出すことで、〝ファン〟になってもらうことが集客につながります。
②「感謝と謙虚な気持ち」を忘れず、「笑顔」で接客
「もう一度行きたい」と思ってもらえるサロンの特色を作り出すのと同時に、「もう一度担当してもらいたい」と思ってもらえるような担当者の接客も大切です。ネイリストとして確かな技術を提供するのは大前提として、接客態度でお客様の満足度は大きく変わります。
「数多くのネイルサロンの中から、うちのお店を選んでいただいてありがとうございます」という感謝の気持ちは何より大切だと思います。そういう気持ちがあれば、自然に「満足していただきたい」という接客態度になります。
学ぶ気持ちを忘れない、おごらない謙虚さも真面目な接客につながります。私はティアラスタッフにも、「感謝と謙虚な気持ちを忘れないように」といつも言っています。
社員を採用するときに、面接で重視しているのは「キュートな笑顔があるか」です。キュートな笑顔で「ありがとうございました」と接客すると、お客様は「この人の笑顔を見ると元気になる」「楽しい気分になる」という理由で、「また行こうかな」と思ってくださいます。
感謝と謙虚な気持ちに加えて、キュートな笑顔を持って仕事ができたら最高ですね。
③お客様との会話術は、努力で伸びる!
ネイリストは、お客様と2時間程度向かい合うお仕事です。確かにコミュニケーション力がある人のほうが向いています。「初めての人と会話をするのが苦手だけど、ネイリストになれるのかな」と悩んでいる人もいるかもしれません。でも、大丈夫です!
お客様との会話術は、努力すれば身に付けることができます。
では、会話が苦手な人はどうしたらよいでしょうか。「努力」と言いましたが、具体的な方法は次の通りです。
私はティアラスタッフには、「自分の話は控えて、お客様のお話を聞く姿勢を持って、会話を楽しんでください」と伝えています。まずは、「聞き上手に徹する」。あれやこれや自分のことを聞かれたくない人もなかにはいますが、大部分の人は「自分の話を聞いてもらいたい」のです。ヘアサロンでも同様だと思うのですが、他愛もない会話をしながら、気が付いたら自分のことを多く話してしまっていた、ということはありませんか?
ネイルに関すること以外でも良いと思います。もちろん、ネイルに関してはしっかり勉強をして、どんな質問にも答えられるようにしておいてください。プロとしての信頼感につながります。
2回目の来店をしてくださったお客様に「私のことを覚えてくれていたという特別感」を感じてもらえるように、カルテに前回お話しした内容をメモしておくと良いと思います。それを頭に入れて接客に臨めば、より会話がスムーズに進みます。
「前回、パーティーがあるっておっしゃっていましたけど、どうでしたか?」 「先月、韓国旅行へ行かれたんですよね?」
お客様は「あら、覚えていてくれたの?」とちょっと嬉しくなります。嬉しくなったお客様が、今度は前回よりもたくさんお話をしてくれるかもしれません。
できれば、お客様のどんな話題にも反応できるように、ニュースや話題のドラマをチェックしたり、映画を観たり、ファッション誌を読んだりして、世の中の流行にアンテナを張る努力を惜しまないでほしいと思います。
例えば、こちらから話した話題に反応が薄い担当者だと、「なんだか盛り上がらない」と感じ、「次も担当してもらいたい」という気持ちにならないのも事実です。とはいえ、お客様からの話題にすべて応えようと無理をして話を合わせるのではなく、分からない話題のときは「え~、知らなかったです。もっと教えてください!」など、お客様の話に関心を持ち、素直に反応できれば良いのです。
④必ず、お客様を名前で呼び、素敵なところを見つける
もっと簡単にできることがあります。それはお名前でお呼びすること。これはティアラスタッフには徹底していることです。
例えば、「お客様、今日はどうなさいますか?」と聞かれるのと、「〇〇様、今日はどうなさいますか?」と聞かれるのとでは、どちらが気分が良いでしょうか? 私はやはり、「○○様、今日はどうなさいますか?」と言われるほうが、大切にされている感じがして、担当者に対しても好印象を持ちます。
初めて来店されたお客様でも、最初にお客様カードに名前を記入してもらうので、「お客様」と呼ぶのは誠意がないと思います。お客様は「お客様」と呼ばれ慣れているので、特に「失礼な人」とは思わないかもしれませんが、「〇〇様」「○○さん」と呼ばれると、担当者との距離が近くなった気がします。
最初の時だけでなく、途中の会話でもできる限り名前を呼ぶようにして会話をすると良いと思います。お客様を名前で呼ぶことなら、会話の得意不得意に関わらず意識すればできますよね。
もう一つは、「必ず、お客様の素敵なところを見つける」ということ。褒められて不愉快になる人はいません。服装やアクセサリー、ヘアスタイル、持ち物、メイク、肌の調子、表情、しぐさなど何でも良いのです。親身になって相手のことを知ろうとし、好きになる努力をすることは、接客に限らず、普段の人間関係も円滑にしますから、心がけてみてください。
接客の基本は「自分がしてもらって嬉しいことをする」です。接客だけでなく日常でも私が心がけていることです。サロンワークにおいては、いつも「どうしたら、気分良く帰ってもらえるだろう」と考えることです。そして、お客様がお帰りになるときに、ネイルのキレイさ、かわいさに満足していただくだけでなく、テンションが上がって「何だか気分が良いなぁ」と思ってもらうことができれば、きっと来月も会いに来てくださいます。