(本記事は、秋畑誠の著書『楽算メソッドⓇ: 数式・図式で思い通りの人生を手に入れる法則』合同フォレストの中から一部を抜粋・編集しています)

経済の仕組みは超シンプル

経済的成功
(画像=Khongtham/Shutterstock.com)

先生 経済の仕組みは、実にシンプルにできています。

ミク 本当ですか?就活のときに経済新聞を読んでみたら、まるで意味が分からなかったんですが......。

先生 では、分かりやすいように図解していきます。経済のボリュームというのは、図1─2のようなシンプルな長方形で表すことができます。

図1
(画像=楽算メソッドⓇ)

ミク 長方形?

先生 そうです。縦×横という二つの掛け合わせです。縦はお金の量、つまり先ほどのワークでいえば、アメの個数を表しています。横の回転数とは、お金が行き来すること。つまり、アメをやり取りした回数です。

ミク アメの数とやり取りの回数が、経済なんですか?

先生 経済の規模というのは、このシンプルな掛け算です。どれだけのお金が移動したか、流通したか。それは、移動するお金のボリュームと移動の頻度によって決まります。

ミク お金がたくさんぐるぐる回ると、経済が大きくなる?

先生 その通り。ここで重要なのは、お金の量よりも回転数。通常はアメではなく、物やサービスとお金が行き来します。これがどのくらい活発に移動しているかが重要なんです。

ミク そうなんですか?お金がたくさんあることのほうが大事な気がしますけど......。

先生 お金だけあっても、景気はよくならない。アメちゃんワークのように、「インが先」という意識でいると、なかなかお金を手放せません。つまり、お金が回転しないので、経済はまったく動かなくなります。

お金の量より回転数

ミク たしか、バブルのときは皆さん、ものすごくお金を使っていたらしいですよね......。

先生 景気というのは、お金の量よりもお金の回転数に依存します。不景気になると、よく政府がお金を世の中にばらまきます。

ミク なんか、ニュースとかで聞いたことがあります。

先生 ところが、お金の量は増えているはずなのに、経済はなかなか大きくなりません。この原因はただ一つ。みんなが「インが先の意識」でいるからです。「お金を使ったら、自分だけ馬鹿を見るんじゃないか」と思っている。だから、「十分なお金が入ってから使おう」と。このような意識でいたら、どんどん回転しなくなっていきます。

ミク アメを持ったまま固まってしまった、苦行のような1分間を思い出しました。

先生 まさにそれが、日本中で起こっているのです。こうして経済は痩せ細ってしまいました。かたやバブルのときは、お金自体はそれほど多かったわけではありません。

ミク え、そうなんですか?

先生 バブル絶頂の1990年、日本にあったお金は約480兆円。それに対して2018年は約1030兆円でした(日本銀行「マネーストック統計の解説」60頁 http://www.boj.or.jp/statistics/outline/exp/data/exms01.pdf )。

ミク バブルのときの2倍以上、お金あるじゃないですか!

先生 そうなんです。しかし、今やそのほとんどが預金されていて、実際に流通しているのはほんの1~2割にすぎません。

ミク バブルのときに、お金が今より少なかったとか、ちょっと信じられません。

先生 バブル期は、お金がものすごい勢いで動き回っていました。海外旅行に行ったり高級車を買ったり。周りが派手に使っていると、「僕だけ貯め込んでいても面白くない。どうせお金は入ってくるんだし」と、どんどん使うようになります。

ミク そんなに使って、破産しないんですか?

先生 みんながお金を使うと、飲食店や旅行会社、自動車や住宅を扱う会社などが儲かります。「ありがとうございました、過去最高益です!」といって、社員の給料が上がっていく。こんな感じで、日本中でお金がどんどん回っていきました。年末のボーナスは基本給8カ月分だとか、仕事をした時間すべての残業代が出るといった感じで、収入が高かったわけです。

ミク そんな時代があったんですね。とても同じ日本とは思えません。

先生 お金の量はそんなに多くなくても、ひたすら使われて巡ったので、経済はとても豊かになっていきました。

ミク お金の量じゃなくて回転数......なんか、ちょっと分かってきました。

先生 経済というと、金利がどうとか、ナントカ経済指標がどうとか、難しい分析をしますが、実はシンプル。みんなが「使おうぜ」という「アウトが先」の意識を持ってさえいれば、いくらでも経済は大きくなるんです。

借金は悪いことではない「バランスの法則」

政策空間再考
(画像=PIXTA)

ミク あの......。アメちゃんワークで、一つ腑に落ちないことがあるんですが......。

先生 いいですね。疑問があったらどんどん質問してください。

ミク 最初にアメを一つ持ってからワークをしたじゃないですか。これって、まずアメを手に入れた。つまり、「インが先」なんじゃないですか?

先生 なるほど。いい質問ですね。

ミク 手元にアメがなかったら、アメをあげることはできませんよね?だとしたら「アメをもらったら、アメをあげよう」ってなっちゃうんじゃないですか?

先生 アメがないなら、アメを借りてくればいいんです。

ミク アメを借りる?

先生 そうです。つまり、お金でいうと、「借金をする」ということ。

ミク ちょ、ちょっと待ってください。借金なんて、ダメですよ。

先生 どうしてですか?

ミク どうしてって、だって借金は悪いことじゃないですか。

先生 どうやらミクさんは、借金について大きな勘違いをしているようですね。楽算メソッドには、こんな数式があります。

図 1 ─ 3
(画像=楽算メソッドⓇ)

0=a+(-a)

ミク マイナスの足し算。たしか中1のときに習ったような気がします。

先生 そうです。(-a)は、借金を表しています。左辺はゼロです。何もないゼロのところから「a」を生み出そうとしたら、そのときには必ず「-a」が同時発生します。そうでないと、等式が釣り合いません。

ミク そうですね。この式が正しいってことは分かります。

先生 世の中のすべてはバランスでできています。これもまた法則です。

借金のカラクリ

先生 お金というものは、そもそも世の中にありませんでした。世の中になかったお金がどうやって発生したかというと、マイナスのお金、つまり借金が同時に生まれたからです。誰かが「借金します」と言わないと、お金は世の中に現れません。

ミク 借金しないとお金が出てこない?

先生 会社なら、社債を発行して、一般の人に買ってもらうことでお金を集めます。社債の債は債務の債。個人なら、家を買うために「3000万円の借金(住宅ローン)」をすると、借用書と引き換えに銀行からお金が振り込まれます。

ミク 住宅ローンって、あんまりお金をもらっているっていう感じがしないんですが......。

先生 たしかにそうです。お金と家がすぐに交換されますから、あんまり「お金をもらった」という実感は湧かないかもしれません。

ミク お金をもらうというより、大きな借金って感じで......。

先生 お金をもらったという実感が乏しいので、「借金背負っちゃったよ」みたいなところばかりに目が向いてしまいますが、借金と同額のお金をそのときにもらっています。

ミク 言われてみれば、そうですよね。じゃないと家が買えないわけだし。

先生 「借金はよくない」というイメージを持っているかもしれませんが、今の世の中は、誰かが借金をしないと成り立たないんです。

ミク 借金しないと成り立たないって、どういうことですか?

先生 よく、「国は今、約1000兆円の借金をしている」なんて言われます。このことは同時に「国は約1000兆円を世の中に生み出して、経済が巡るように市場にアウトしている」と捉えることができます。

ミク え、そうなんですか?

先生 国民が約1000兆円貯蓄できているのは、国が借金してお金を生みだしてくれているからともいえます。

ミク 借金に意味があるなんて、ちょっと信じられません。

先生 では、「住宅ローンを3000万円貸してください」とあなたが銀行に申し込んだとき、銀行が何をするか、分かりますか?

ミク それは......。私に3000万円貸しても大丈夫かを調べるんじゃないんですか?

先生 調べる?何を調べるのですか。

ミク 貸しても返してもらえるか、信用できるか......。

先生 そうです。信用を調べて、3000万円を貸すかどうかを決めます。経済学に「信用創造」という言葉がありますが、銀行は信用のもと、何もないところにお金を生み出せる権利を持っています。ただ、自由にお金を生み出せるわけではありません。ローン契約書(-a)を交わすことで、初めて同時にお金(a)を生み出すことができるのです。

ミク 契約書を交わすだけでお金を生み出せちゃうんですか?

先生 そうなんです。無から有を生み出すのがポイント。これこそが、現代のお金の仕組みです。

ミク てっきり、銀行が金庫にしまっているお金を貸してくれるものだと思っていました。

先生 宝くじに当たったり、資産ができたといって、3000万円のローンを一気に返済したら、銀行は喜ぶと思いますか?

ミク そりゃ、貸したお金が返ってくれば、喜ぶんじゃないですか?

先生 ところがです。3000万円を返されても、ローン契約書(-a)と3000万円(a)が相殺されて世の中からなくなってしまうだけで、3000万円を他のことに使えるわけではないんです。

ミク 誰かが借金するお陰でお金が生み出される、お金が社会に出回っていく......。そう考えると、借金は悪いこととは言えないですね。

日本は借金だらけって本当?

先生 「国の借金約1000兆円」とか、「国民1人当たりの借金が880万円」「生まれた途端に880万円の借金を背負っている」「国債の発行が止まらない」といったように、報道記事では借金のマイナス要素ばかりが強調されます。

ミク それだけを聞くと、本当に怖いです。

先生 こんな表現であおっていますが、まったく怖いことなんてありません。国の借金で生み出したお金は、国民の貯蓄になっているからです。

ミク 日本は借金大国で、大変だと思っていました。そうじゃないんですね。

先生 実は日本のお金と借金、プラスとマイナスを差し引きすると、純資産はプラスなんです。400兆円くらい。約1000兆円の上にもう400兆円ほど、日本にはお金があるんです。

ミク すごーい!あれ?でも、プラスマイナスゼロじゃないと、バランスとれてなくないですか?

先生 どうして国内約1400兆円もあるのかというと、米国を筆頭に多くの債権を持っているからです。米国債とか貿易黒字の形で日本は各国の債権があって、これがプラス400兆円にものぼる。日本の純資産はダントツの世界1位です。

ミク ほんとですか?すごい......。

先生 国が借金を約1000兆円抱えていることは、たしかに事実です。そこだけを切り取って話をするから、「日本はヤバいんじゃないの?」と不安になってしまいます。

ミク でも、まったく景気よくないですよ。私が生まれてからずっと不況が続いているように感じます。

先生 たしかに、あまり景気はよく感じません。1400兆円もあるお金のうち、実に90%以上を65歳以上の方が貯蓄という形で持っているからです。

ミク ほとんどのお金を高齢者が持ってるの?

先生 大事に貯めているので、まったくお金が動きません。さっきも言いましたが、経済というのはお金が動かないと意味がないんです。

ミク そんなにお金があるなら、もっと使ってくれればいいのに。

先生 ところが、ほとんどは、「老後が心配で使えないよ」という人ばかり。貯蓄1000万円から2000万円くらいの一般の人たちは、銀行口座やタンスの中にお金が眠ったままになっている。

ミク 老後の貯蓄が1000万円もあれば、十分だと思いますけど......。

先生 今の時代、100歳、ひょっとすると120歳まで生きるかもしれないから、多めにお金を確保しておかなければいけません。「病気になって高額の医療費がかかったらどうしよう」と不安になって、お金を使うことができないんです。

ミク 年金だけじゃ足りないって言いますもんね。

先生 高齢者の貯金がとにかく動かない。このお金が動けば、日本はものすごく豊かな国になります。それに企業も内部留保として利益を貯め込んでいる。最低賃金や従業員の給与をアップしたり、新規雇用者を増やす、研究開発費を増額する、社会貢献のために貯め込んでいるお金を寄付するなど、大企業が率先してお金を回していけば、経済は活性化します。日本にはお金が十分にあるわけですから、みんなが安心してお金を使える政策を進めればよいのです。たとえば、「90歳以上は最低限のベーシックインカム(最低限必要な所得)を保証する。医療費は無料」などとなれば、皆さん安心して90歳まで旅行や外食といった楽しみのためにお金を使うようになると思います。

ミク お金を使ったほうが豊かになるって、サイコーですね!

楽算メソッドⓇ
秋畑 誠(あきはた・まこと)

1974年生まれ。1999年電気通信大学大学院修士課程修了。
同年ソニーへ入社。16年間エンジニアとしてオーディオ設計に携わる。
2010年、小学校4年生で受けた全国一斉知能テストが全国1位だったことを知り、自分では当たり前だと思っていた思考方法が特異(強み)であることに気づく。
その後、心身不調をきっかけに、モノづくりからヒトづくりへの転身を決意。
2016年、株式会社バランス&チューニングを設立。
世の中の法則をシンプルな算数で図式化した「楽算メソッドⓇ」を開発。
4年間、営業ゼロ・告知ゼロにもかかわらず、口コミだけで受講生が集まり続ける。分かりやすさと高い成果が評判となり、ソニーや富士通をはじめとする企業・団体から定期研修や講演の依頼が相次いでいる。

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