(本記事は、秋畑誠の著書『楽算メソッドⓇ: 数式・図式で思い通りの人生を手に入れる法則』合同フォレストの中から一部を抜粋・編集しています)
コミュニケーションが良好になる「三つのステップ」
ミク でも、「自分の基準」で話されたって、こっちは分からないじゃないですか。
先生 そうなんです。自分よりまだ経験が浅い人に対して、どんなコミュニケーションを取っていけばいいのか、ということです。
よき指導者になるためには
先生 まずは、「①相手の基準に合わせる」必要があります。すると、相手の基準に立つことで、「なるほど。そう考えたから、そういう発言をしたんだね」と、「②共感、寄り添う」ことができるようになります。
ミク 私も寄り添ってもらいたいです。
先生 そうですよね。上からじゃなく、隣に寄り添って共感してもらえれば、ミクさんだって、萎縮せずにずっと動きやすくなるはずです。
ミク もう、今は本当に怖くって。
先生 自分の基準のままでは、知識も経験もあって当然だと思ってしまうため、発言もきつくなってしまいます。でも、相手の基準に合わせ、寄り添い共感すれば、「自分はこんな経験をしてきたんだ。こうするとうまくいくよ」と「③エスコート」して、相手を自分の基準まで引き上げるサポートをしてあげることができます。
ミク エスコートなんて、してもらったことないです。
先生 この「①相手の基準に合わせる」→「②共感、寄り添う」→「③エスコート」の手順を踏むことが大切です。
相手に寄り添ってもらうための「逆コミュニケーション」
ミク そんな素敵な上司、どこにいるんですか......。
先生 頭ごなしに「何も分かってねぇな」「早くやれよ」というのは、自分が相手の基準に降りて行こうとせずに、自分の位置から相手を引っ張り上げようとする態度です。
ミク うちの課長は、まさにそれです。
先生 これはこれで、指導する気はあるんです。ただ、引っ張り上げようとすると、どうしても力ずくになってしまいます。これでは、相手はなかなか動きません。
ミク あんな言い方されたら、動く気になれませんって。
先生 そうです。だから、自分から相手のいる位置に降りて行って、「あぁそうか、ここにいるのか」と。「こっちがいいぞ」みたいなエスコートをしてあげれば、コミュニケーションがうまく取れるようになります。
ミク 話は理解できましたが、これって課長に言ってもらわないと......。私はどうすればいいんですか?
アドバイスがほしいときには
先生 立場が上の人にアドバイスしてほしい場合の依頼の仕方ですね。
ミク それ、聞きたいです!
先生 自分はまったくの新人、相手の方は百戦錬磨。そんなときに、教えを請い、自分を導いてもらうためには、どうしたらいいか。
ミク どうしたらいいんですか?
先生 要は逆なんです。
ミク 逆?どういうことですか?
先生 この場合、自分が相手の基準に合わせに行くということはできません。なぜなら、こちらには経験がないんですから。
ミク たしかに、そうですよね。
先生 では、どうするかというと、相手の方に自分のところまで降りてきてもらえばいいんです。
ミク え、そんなことできるんですか?
先生 簡単ですよ。「今、私はここにいるんです」と、自分の知識や経験がどういう状態なのか「①自分の基準を開示」しましょう。その上で「私はこう思うんですけど」とか「分からないので教えてください」と伝えましょう。
ミク そんなの、うまくいきますか?
先生 大丈夫ですよ。きっと課長さんは部下を無視しているわけではなく、自分としては、ちゃんと指導しているつもりなんです。そういう人は、部下から素直に「教えてください」と頼られたら、「②部下の基準を認識」して張り切って教えてくれ、「③エスコートしてくれる」ものです
ミク なるほど。課長に寄り添ってもらえるように自らアウトするわけですね。
先生 はい。つまりはそういうことです。
優秀な部下は、上司をうまく動かす
先生 あともう一つ、立場としては相手が上なのに、自分のほうが優秀だという場合についても説明しますね。
ミク デキる社員ってことですね。
先生 そうです。数年後には役立つと思いますよ。
ミク そ、それはどうでしょう......。
先生 たとえば、「社長にうまく立ち回ってほしいけど、正面切って言ったら、きっとカチンとくるだろうな」というような場合。
ミク うわぁ、なんか、ありがちな感じですね。
先生 立場が上の人に対してどう伝えればいいのか。こういうときは「秀吉・信長戦法」を使います。秀吉は最終的には天下を統一するほどの器です。かなりの才覚・才能を持った人物。そんな秀吉も、最初は信長の家来で「サル」と呼ばれていたといわれています。
ミク たしか、農民だったんですよね。草履を温めたとかなんとか......。
先生 そうです。そんな立場から一歩一歩のし上がっていきました。すると、信長の身の回りの世話だけでなく、戦術なんかも見えてきます。そのとき、「うわ、信長様まずいことしようとしてる」と思っても、「そうじゃないですよ、こうしないといけないですよ!」なんて、口が裂けても言えません。
ミク たしかに、信長ブチキレそう。
先生 まず、首が飛ぶでしょうね。そこで、知恵者の秀吉はどうしたか。
ミク どうしたんですか?
先生 チラッチラッとヒントだけ出したんです。それで、信長が正解に気づいたら、すかさず「さすが信長様!私めにはとても思いつきませんでした」と。
ミク え、何?その茶番......。
先生 でも、これはとても効果的なんですよ。本人が気づいたという形を作ることで、相手の顔を立てるわけです。
ミク そっか。相手のほうが偉いから、なかなか素直になれないわけですね。
先生 そういうことです。こういう場合には、こちらが大人になってあげる必要があります。
ミク もし、相手が鈍くて、ヒントを出してもなかなか気づいてくれなかったら、どうするんですか?
先生 そのときは、ダミーの選択肢を用意して、相手に選んでもらうようにするといいですよ。「これかこれで迷っているんですけど......」と、悩みを相談する感じで。そうすると「いいところまで絞れたね。この場合はこっちがいいよ」みたいに、まんまと選んでくれますから。
ミク なるほど、そこまでしないといけないんですね。
先生 相手のプライドを傷つけない配慮が必要だということです。
ミク なんか、面倒ですね。
先生 でも、こうやってうまく関係を築いておくと、大きな信頼を得ることができます。
ミク でも、もしそれで、その上司の手柄になっちゃったりしたら、ちょっとイヤだな。
先生 それでいいんですよ。上司の信頼を得ていれば、上司が昇格するときは、自分も空いたポストに入れてもらえますから。上司の出世に一役買うという「アウトが先」をしておけば、後からしっかり「インが来る」わけです。
ミク なるほど。結構裏のある戦略ですね。
先生 裏も表もある意味バランスです。上手に使って、人生を思い通りにしていきましょう。
1974年生まれ。1999年電気通信大学大学院修士課程修了。
同年ソニーへ入社。16年間エンジニアとしてオーディオ設計に携わる。
2010年、小学校4年生で受けた全国一斉知能テストが全国1位だったことを知り、自分では当たり前だと思っていた思考方法が特異(強み)であることに気づく。
その後、心身不調をきっかけに、モノづくりからヒトづくりへの転身を決意。
2016年、株式会社バランス&チューニングを設立。
世の中の法則をシンプルな算数で図式化した「楽算メソッドⓇ」を開発。
4年間、営業ゼロ・告知ゼロにもかかわらず、口コミだけで受講生が集まり続ける。分かりやすさと高い成果が評判となり、ソニーや富士通をはじめとする企業・団体から定期研修や講演の依頼が相次いでいる。
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