急落した日本株式
日本株式は、新型コロナウイルスの感染拡大やそれに伴う景気への悪影響が懸念され、2月下旬から急落した。TOPIX(東証株価指数:紺線)は、2月中旬まで1,700ポイント前後で推移していたが、2月末には1,500ポイント割れ目前まで下落した【図表1】。3月に入っても中旬までは株価下落が収まらず、上旬には1,400ポイントを下回り、中旬には一時、1,200ポイント台前半まで下落した。3月下旬にようやく日銀のETF買いの拡充や米国の景気対策への期待感などから反発し、1,400ポイントまで戻した。4月も値動きが荒い展開が続いているものの、TOPIXは概ね1,400ポイント前後で推移している。
上値が重い展開が続く可能性
日本株式は当面、現在の水準(TOPIXが1,400ポイント台、日経平均株価が1万9,000円台)が上値のめどとして、上値が重い展開が続く可能性が高いとみている。現在、TOPIXベースでPBRが1倍程度の水準にある【図表2】。過去の予想ROEとPBRの傾向からみると、PBRが1倍前後ではPBRと予想ROEとで明確な関係がみられないが、予想ROEが8%を超えてくるとPBRも1倍超えていくことが分かる。つまり今後、PBRが1倍を超えて切りあがっていくには、予想ROEが現在より改善していくことが求められる。しかし、新型コロナウイルスの悪影響によりこれから一段の企業業績の悪化、企業収益の低迷、予想ROEの低下が懸念されているため、なかなかPBR、つまり株価が切りあがっていく展開は望みにくい状況である。
逆に日本株式は、現在の株価が目先の企業業績を評価した価格形成になっていないともみることもできる。そのため、徐々に新型コロナウイルスの影響が明らかになり、業績予想の下方修正などが本格化してくると思われるが、そのような悪材料に対しても株価は案外鈍い反応になることを期待したい。また、日銀がETF買いを拡充したため、ある程度の株価下落(海外投資家の売却)であれば日銀のETF買いによって日本株式は買い支えられると考えている。つまり、新型コロナウイルスなどの情勢に一喜一憂しながら株価は荒い値動きが続くものの意外に底堅く、また上値も重いボックス圏で推移すると思われる。
足元、売りに回る投資家も
個人投資家などに人気な日経レバレッジ指数ETF(NEXT FUNDS 日経平均レバレッジ・インデックス連動型上場投信:日経平均株価の概ね2倍動くETF)の資金動向も株価の上値が重いことを見越したような、動きとなっている【図表3】。
日経レバレッジ指数ETFには2月下旬から3月中旬まで、ほぼ一貫して資金流入(プラス:黄色棒グラフ)基調があり、投資家が積極的に逆張り投資していたことが分かる。ただ、3月中旬から日経平均株価が1万9,000円に迫ると、資金流出(マイナス:青色棒グラフ)に転じている。単純に株価が反発したため売却している投資家が多いことも考えられるが、日経平均株価1万9,000円あたりが当面の高値と考えている投資家も多いといえるだろう。
また、株価が今よりも高い水準で逆張り投資をしてきた投資家が多いだけに、現在、含み損を抱えていて株価が戻ったら売却を考えている投資家も多いであろう。株価が一段と上昇すると、それらの投資が一斉に売却に動き、株価を押し下げることも考えられる。日銀のETF買いも、株価が上昇する局面では積極的に行わないだろう。そのため、需給面から考えても相当明るいニュースが出てこない限り、日本株は当面、上値が重い展開が続くのではないだろうか。
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前山裕亮(まえやまゆうすけ)
ニッセイ基礎研究所 金融研究部 准主任研究員
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