(本記事は、三井住友トラスト・資産のミライ研究所の著書『安心ミライへの「資産形成」ガイドブックQ&A』きんざいの中から一部を抜粋・編集しています)
「個人型確定拠出年金(iDeCo)制度」の概要と申込方法を教えてください
●国も普及に注力
企業にお勤めではない、あるいは企業に勤めていても企業型DCのない会社の従業員を対象者として個人型DCが導入されました。その後個人型DCの加入対象者は、法改正を重ねて順次拡大され、国としても普及に注力しています。2017年には、条件付きながらも企業型DC加入者にも加入対象資格を拡大し、愛称もiDeCo(individual-type Defined Contribution)となり、普及が進んでいます。
iDeCoそのものの仕組みは企業型DCと同じですが、個人が金融機関に申込みを行うものであり、企業型DCで実施されるような「投資教育」は個人で受ける必要があり、口座管理の費用なども個人負担となっています。
前回の法改正により、2017年から公務員や企業型DCを実施していない民間企業の従業員もiDeCoに加入し、かつ掛金を拠出することができるようになりました。従来は、企業型DCの加入者が、DBを実施している企業に転職した場合などには、以降は掛金が出せないといった問題がありましたが、現在では転職先の制度内容を気にすることなく、DCへの積み立てを通じたライフプランを考え、実践できるようになっています。
また、現在の加入対象者と、拠出限度額は図表31-1のとおりとなっています。2020年5月に法改正が成立し、企業型DCの加入者がより柔軟にiDeCoを活用できるようになりました。現在は、企業型DCの加入者がiDeCoに入ることができるかどうかは、企業型DCの規約に定められていますが、今般の法改正により、2022年10月から規約の内容にかかわらず、iDeCoに加入できるようになります。なお、双方に加入する場合には、iDeCoの費用は自身の追加負担となることに、注意が必要です。
多くの金融機関がiDeCoを取り扱っており、どの金融機関に申し込むかは個人の自由です。金融機関ごとに取扱商品や手数料などで差があります。企業型DCと異なり、加入時期も任意となっていますので、新たにiDeCoに加入される方は、各金融機関のWEBサイトなどを確認しながら検討するとよいでしょう。すでに企業型DCに加入されている場合は、現在の運営管理機関のコールセンターなどに問い合わせるとスムーズに進むと思われます。
「財形貯蓄制度」の概要と申込方法を教えてください
●給与天引きで知らない間に貯まっている「財形貯蓄制度」
「財形貯蓄制度」は、勤務先が従業員のために準備している積立制度の1つです。給与天引きで積み立てをすることができるため、一度設定すれば、自動的にお金を貯めていく仕組みをつくることができます。勤務先は、従業員が設定した金額を給与から毎月天引きし、これを財形貯蓄取扱いの金融機関に払い込みます。財形貯蓄は、従業員のライフイベント(結婚や住宅購入、老後など)で必要となる資金づくりを支援することを目的に導入されています。
財形貯蓄制度には、「一般財形」「住宅財形」「年金財形」の3種類があり、それぞれ積立ての目的に応じて選択することが可能です(図表32-1、32-2)。
もう少し、細かく制度の概要をみてみましょう。
整理すると、以下が財形貯蓄を考える際のポイントとなります。
・給与天引きで自動的に貯まる仕組みができる(⇒毎月手続きをしなくても、一度の設定で後は自動的に貯まっています。なかなか日々の生活が忙しく、手続きをとれない方にお勧め)。
・目的に応じた資産形成ができる。
・預金は元本550万円まで利子が非課税(⇒通常は利息などに20.315%の税金がかかりますが、住宅財形と年金財形は条件を満たせば非課税となります。
ただし、現在の低金利環境下ではもともとの得られる利子が少ないので効果は限定的です)。
・住宅財形は、財形住宅融資が受けられる。
・積み立て途中で、引き出して資金を使うことができる(⇒DCやiDeCoと異なります)。
・勤務先によっては奨励金などの独自の優遇措置を準備しているところもある。
財形貯蓄を始めてみようと思われた方は、勤務先を通じて申し込む制度ですので、まずは勤務先に財形貯蓄制度があるかどうか、確認してみましょう(図表32-3)。
「NISA(ニーサ)(少額投資非課税制度)」とは、どのような制度ですか?
●日本が推進する資産形成支援制度NISA
「NISA(ニーサ)」は、日本にお住まいの20歳以上の方が利用できる少額投資非課税制度です。
銀行や証券会社などの金融機関で、少額投資非課税口座(NISA口座)を開設して上場株式や株式投資信託等を購入すると、本来20.315%課税される配当金や売買益等が、非課税となります(そのため、利益が出た場合には大きなメリットを受けられます)。
NISA制度には、現行では2種類、「NISA」「つみたてNISA」があります。毎年、「NISA」と「つみたてNISA」のどちらかを選択することができます。また、NISA制度は1つの金融機関でしか利用することができません。1年ごとに金融機関の選択ができます。
1つひとつの特徴をふまえて、税優遇を受けながら賢く資産形成をしていきましょう。
「NISA」の特徴としては、
(1)株式投資信託・上場株式等の配当所得・譲渡所得が非課税 (2)2016年以降は毎年120万円までの新規投資が可能 (3)非課税期間は5年間(2020年以降は最大600万円の非課税投資総額となる)
「つみたてNISA」の特徴としては、
(1)投資方法は積立投資のみ (2)毎年40万円までの新規投資が可能 (3)非課税期間・投資可能期間はそれぞれ20年間(最大800万円の非課税投 資総額となる) (4)投資可能な商品は一定の条件を満たした公募株式投資信託・ETF
となっています。
それぞれに共通する留意事項としては、
(1)課税口座(特定口座・一般口座)との損益通算不可 (2)購入した年に売却した場合、その年の非課税枠の再利用は不可 (3)1年ごとに金融機関の選択が可能 (4)課税口座や、他社のNISA口座からの移し替えは不可
となっています。
ちなみに、NISAは、イギリスのISA(Individual Savings Account)を手本に導入された制度で、イギリスでは国民の約4割がISAを利用し、広く対象者の資産形成・貯蓄の手段として定着しています。
NISAのNは、NIPPON(日本)のNを意味するもので、日本で、ISAが広く普及・定着するようにとの願いが込められています。
なお、制度改正が予定されており、2024年から新NISA制度が始まります。2階建ての制度に変更になり、投資可能期間が2028年まで5年間延長になります。つみたてNISAは投資可能期間が2042年まで5年間延長になります。
●どうすれば申し込めるの?
NISA口座は、銀行や証券会社などの金融機関を通じて申し込むことができます。まずは、普通預金口座と証券総合口座を開設したうえで、NISA口座を開設することができます(口座開設手数料は無料です)。
いつも使っている金融機関があれば、ホームページをみていただくと、窓口やインターネットバンキングで手続きできるなどの説明が書いてありますので、参考にされるとよいと思います(図表33-4)。
●20歳未満でも使えるNISA制度はありますか?
2016年4月から導入された制度として、日本にお住まいの0歳から19歳の未成年者が利用可能な「ジュニアNISA(未成年者少額投資非課税制度)」があります。NISA、つみたてNISAにとどまらず、子供や孫の将来に向けた資産形成をサポートする制度として、ジュニアNISAが設定されています。
年間の投資上限額(非課税枠)は80万円、非課税期間は5年間、運用は子供や孫にかわって親・祖父母といった親権者等が行うことなどが「NISA」「つみたてNISA」と異なります。
なお、制度改正が予定されており、新規口座開設期間(新規投資できる期間)は2023年末までとなり、制度が終了します。
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