ミニ株とは?
ミニ株は「株式ミニ投資」とも呼ばれる証券会社が提供しているサービスの1つです。1単元(100株)に満たなくても株の売買ができるという特徴があります。
ミニ株とは、本来は単元株の10分の1(10株)ずつ行う株取引を指します。しかし、この記事ではそれに限らず、1単元の株式数に満たない株取引全般を「ミニ株」と呼ぶこととします。
一般的に株式投資で売買するときの取引単位は、1単元(通常は100株)ごとです。そのため、1単元(100株)、2単元(200株)、3単元(300株)……と1単元の整数倍ずつ買わなければいけません。
しかし株価というものは1株1,000円未満から数万円までさまざまです。1株数万円の株を100株買うためには、数百万円の資金が必要になります。
例えば、アパレル業界大手のファーストリテイリング<9983>の株価は7万5,440円、同じくアパレル業界大手のオンワードホールディングス<8016>の株価は317円です(2023年1月20日終値)。
銘柄 |
株価 |
1単元(100株)の価格 |
ファーストリテイリング |
7万5,440円 |
754万4,000円 |
オンワードホールディングス |
317円 |
3万1,700円 |
いくらファーストリテイリングに投資したいと思っても、個人で754万円4000円もの資金を用意することは簡単ではありません。
しかしこのように高価な株でも、「1株なら買える」と思う人もいるかもしれません。そんな人にミニ株はおすすめです。
ミニ株投資のメリット
ミニ株投資を行うときには、メリットとデメリットをきちんと理解してから行うべきだろう。
少額から始められる
ミニ株のメリットは、少額で株式投資を行えることです。単元株では、高くて購入しにくい優良企業の株式でも購入することができます。
少ない資金で少しずつ投資することができるため、投資初心者の練習にも適しています。
分散投資をしやすい
少額で購入できるため、資金に余裕があれば複数の銘柄を購入可能です。複数の企業の株に分散投資することで株価の変動リスクを抑えることが期待できます。
ミニ株のデメリット
約定価格が想定と異なることがある
「ミニ株の特徴」の項目でご説明したとおり、ミニ株は、売買の注文時には適用される株価が確定していない。通常は売買を申し込んだ翌日の寄付の価格が約定価格となるため、約定価格が想定よりも高かったり低かったりする可能性があります。
手数料に要注意
ミニ株は、売買手数料が割高になる可能性が否めません。
1回の取引にかかる手数料は、単元株の場合と比べて低く設定されている傾向があります。しかし単元株になるまでミニ株を何度か買い付けるようなケースでは、トータルすると単元株を1回買うより高くなる場合もあります。
手数料の設定方法は、証券会社によって異なるため、各社のホームページで必ず確認しましょう。
例えば、S株(SBI証券が提供するミニ株取引サービス)の取引手数料は、次のとおりです。
- 買付手数料:無料
- 売却手数料:0円
- 最低手数料:0円
証券会社によっては注文や約定をリアルタイムで行えない
ミニ株の取引では、注文発注から実際の売買が成立するまでのルールが証券会社によって異なっています。多くの証券会社では、リアルタイムには成立せず、発注後の前場・後場の始値・終値での約定となっています。例えばマネックス証券では下図のような注文・約定のルールとなっています。
発注から約定までに時間がかかるため、市場の価格を見ていて「今買いたい!」と思って発注しても、実際にその価格で約定することは稀です。場合によっては、大きく異なる価格で約定してしまうこともあります。またマネックス証券のように、発注できる時間帯に制約があることもあります。
LINE証券やPayPay証券など、ミニ株のリアルタイム約定ができる証券会社もあります。しかし取引銘柄が限られていたり、取引コストが高くなりやすいといったデメリットがあります。
証券会社ごとの取引ルールをよく理解して、取引スタイルに合った証券会社を選ぶようにしましょう。
株主として議決権の行使はできない
通常の単元株を所有した場合、議決権を得ることができます。議決権とは、株主総会の決議で票を入れる権利のことです。すなわち、株を持つことでその企業の経営に参加することができます。
この議決権は、一般的に1単元株に対して1つ与えられます。このためミニ株を所持しても、議決権を持つことができないのです。
ミニ株は、買い続けて保有する株式数が単元株数=100株となれば、通常の単元株になります。それ以降は議決権を持つことができます。
単元未満株投資の注意点
単元未満株に投資する際の注意点として下記の5つが挙げられます。それぞれ詳しく見ていきましょう。
すべての証券会社が取り扱っているわけではない
ミニ株(単元未満株取引サービス)は、すべての証券会社が取り扱いをしているわけではありません。証券取引所で行われる通常の売買ではなく、証券会社が独自に提供しているサービスだからです。(証券会社が保有する株式などを分割して売り出す仕組みをイメージするとわかりすいでしょう。)
単元未満株取引サービスを取り扱う証券会社の中には、売買単位をより小口化する会社も出てきています。最低1株から取引できるようにしている証券会社も多くあります。
ミニ株(単元未満株取引サービス)を行う証券会社の例 |
1株から取引できる証券会社 |
SBI証券 |
○ |
マネックス証券 |
○ |
岡三オンライン(岡三証券) |
○ |
CONNECT (大和証券グループ) |
○ |
SMBC日興証券 |
✖ |
LINE証券 |
○ |
SBIネオモバイル証券 |
○ |
auカブコム証券 |
○ |
議決権がない
ミニ株が通常の単元株と大きく違う点は、議決権がないことです。このためミニ株を購入しても、「株主総会に出席」「経営に関わる重要事項を承認/否認」といった、会社経営への参加ができません。
株主としての権利が制限されるという点で、とても大きい意味がありますので、覚えておきましょう。
受けられる株主優待があまりない
議決権と似た話ですが、受けられる株主優待があまりないという点も覚えておきましょう。
株主優待の多くは、1単元の株を保有していないと受けられないのです。
ただし、中には1株からでも受けられる株主優待もあるので、そういった企業を探してみるのも面白いかもしれません。
1株から受けられる株主優待の例
銘柄 |
1株から受けられる株主優待 |
ニップン |
・商品の優待販売(健康食品やワインなど) |
パソナグループ |
・淡路島飲食施設30%OFFクーポン
・淡路島アトラクション50%OFFクーポン |
京セラ |
・商品の優待販売(自社グループ製品・サービス) |
自分で思った価格で売買できない場合がある
ミニ株の売買取引は一般的に売買を申し込んだ翌日の「寄付(よりつき)※」の価格で約定します。
通常の単元株取引のように、取引時間中に「現在の価格で買います」と注文したり、「○○円になったら売ります」と注文したりできないのです。
今日注文を出しても、翌日の寄付の株価は大きく変わっているかもしれません。ミニ株の売買には、そういった自分で思った価格で売買できない自由度の低さがあることを覚えておきましょう。
なお、売買注文の受付時間は、証券会社ごとに異なります。各証券会社のホームページで確認しておきましょう。例えば、S株(SBI証券が提供するミニ株取引サービス)の注文時間と約定のタイミングは次のようになっています。
※「寄付」とは、その日の前場もしくは後場の始値(1日の取引がスタートして最初に付いた株価)のことを指します。
単元株数(100株)に達したときには、通常の単元株となる
同一銘柄をミニ株として何度か買付することで手持ちの株式数が単元株数(100株)に達したときには、通常の単元株となります。
しかし逆に1単元(100株)購入した株式を「ミニ株として50株売る」といったことはできません。
NISA(一般NISA)でミニ株を買うことも可能
ミニ株は、NISA(少額投資非課税制度)を利用して取引することも可能です。
NISAには「一般NISA」「つみたてNISA」「ジュニアNISA」 があります。ミニ株は積立購入ができないため、利用するなら一般NISA口座を利用することになります。
NISA口座でミニ株を買うメリット
- 最長5年間、配当金や売却などで得られた利益に税金がかからない
- 投資金額が小さめなので、年間120万円の非課税枠を使い切りやすい
- 120万円の非課税枠の中で複数の銘柄に分散投資できる
NISA口座でミニ株を買うデメリット
- NISA口座を開設した証券会社がミニ株を取り扱っていない場合がある
- 一度使った非課税枠は取り戻せない
NISAを利用すれば、利益に税金がかからない点は、通常の単元株取引の場合も同じですが、ミニ株ならではのメリットは、120万円という限られた非課税枠を使い切りやすいということです。株価に応じて、例えば32株購入するなど余った非課税枠のスキマに収まるように株数を調整する買い方もできます。
NISAは、すべての金融機関の中で1人1口座というルールがあります。しかしミニ株はすべての証券会社が取り扱っているわけではありません。NISA口座のある証券会社がミニ株制度(単元未満株取引サービス)を取り扱っていなければ、取り扱っている証券会社に移管する必要があるので、注意しましょう。
なお、ミニ株は取引が少額となる傾向があるため、買いも売りも頻繁に行いがちになるかもしれません。しかしNISAは一度非課税枠を使ってしまった場合、後で株を売ってもその枠を再度利用することができません。 非課税枠が余っていると思って注文したものが、実際には課税口座で取引されてしまうケースがあることには注意が必要です。
単元未満株に関するよくある質問
なぜ「ミニ株はおすすめしない」という意見がある?
ミニ株は通常の現物株取引と比べて手数料が割高な傾向があります。その分手数料負けしやすいので「ミニ株はおすすめしない」という意見があると考えられます。解決策としては、ミニ株の買付手数料が無料に設定されているSBI証券あるいはマネックス証券で投資を始めるのがおすすめです。
単元未満株を買い続けた結果、100株になったらどうなる?
単元未満株(ミニ株)を買い続けた結果、単元株(100株)に到達した場合には、通常の単元株としての取引が可能になります。単元株に到達することで、株主として議決権を行使できるほか、株主優待を受け取れるようになります。
1株から株主優待を貰える銘柄はある?
1株から株主優待を貰える銘柄はあります。例えば、次のような企業(銘柄)では、1株から株主優待を行っています。
- 【SBIホールディングス】
- 自社子会社商品50%割引購入申込券1枚
- テルモ
- 自社製品(電子血圧計・電子体温計等)の優待価格販売・自社オリジナルカレンダー・抽選で自社施設見学会
- 京セラ
- 自社およびグループ会社指定製品・サービスの優待価格販売
- 上新電機
- 5,000円相当の買物優待券(200円×25枚)
- リコー
- 自社製品(カメラ等)の特別価格販売
楽天証券でも1株から買える?
楽天証券ではミニ株の取り扱っていないので、1株から買うことはできません。(2023/1/22現在)なお、楽天証券では、株式分割などによって市場で売却ができなくなった単元未満株の買い取りは行ってくれます。
単元未満株は手数料負けしやすい?
ミニ株は通常の現物株取引よりも手数料が高い分、手数料負けしやすくなる可能性があります。例えば、マネックス証券の単元未満株は、買付手数料が無料ですが、売却時には約定代金の0.5%(税込0.55%)の手数料がかかります。また、最低手数料として税込52円がかかるため、約定代金によっては、最低手数料が上回ることもあります。また、約定代金が10万円の場合、単元株の手数料が税込198円であるのに対して、単元未満株では税込550円かかります。したがって、短期かつ少額の売買を繰り返さないことが重要です。
ミニ株投資で配当金はもらえる?
ミニ株投資でも、保有株数に応じて株主として配当を受けることができます。
慶應義塾大学商学部会計ゼミにて会計を学んだ後、東京海上日動火災保険株式会社に就職。企業が事業活動を行ううえでの自然災害や訴訟に対するリスク分析・保険提案を3年間行う。
1級ファイナンシャル・プランニング技能士の資格を活かし、取引先従業員に対するNISAやふるさと納税に関するセミナーの実施経験有。現在は、フリーランスとして保険や投資、税金などのお金に関する記事の執筆や個別相談・ライフプランニングの作成・実行支援を行っている。
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関西学院大学で会計修士(専門職)を取得後、2016年から2019年までNTT西日本グループの財務部門で決算や内部統制、DXに従事。マレーシアでの留学経験を経て、2022年10月FP事務所ライフホーカーを開業し、現在に至る。NISAや確定拠出年金(企業型・個人型)を活用した資産形成を中心にコンサルティング、記事執筆、講演等を展開中。
保有資格に、1級DCプランナー(企業年金総合プランナー)、AFP(日本FP協会認定)、2級ファイナンシャル・プランニング技能士、ジェネラルCFO(日本CFO協会認定)など多数。その他の執筆記事・プロフィール一覧へ
自身の投資家としての経験や、大手生命保険会社での勤務経験を活かし、金融記事の監修者・執筆者として活動を行う。2022年11月からはブログ「1級FP技能士が教える おカネの話」にて、金融全般に関する情報発信を開始。
保有資格に、ファイナンシャルプランナー(1級FP技能士)。また、投資家として5,000万円超の資産を運用中。主な投資スタイルは全世界株式インデックスファンドへのフルインベストメント。その他の執筆記事・プロフィール一覧へ
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