NISAには一般NISA、つみたてNISA、ジュニアNISAの3種類があります。このうち、ジュニアNISAは2023年をもって廃止が決定されました。しかし、廃止によってむしろ使い勝手が良くなるため、教育費などの準備におすすめです。今回はジュニアNISAの概要に加え、廃止後の活用策にも触れていきます。

目次

  1. ジュニアNISAとは?
    1. ジュニアNISAは利益が非課税になる。生前贈与の一つとしても活用可能
  2. ジュニアNISAの注意点
    1. ジュニアNISAの注意点1:18歳までは払い出しに制限あり
    2. ジュニアNISAの注意点2:損益通算ができない
    3. ジュニアNISAの注意点3:期限が2023年まで
  3. 2024年以降のジュニアNISAはどうなる?
    1. 2024年以降、5年が経過した金融商品を継続管理勘定に移管できる
    2. 制度終了後も非課税で保有できる
    3. 制度期間内に20歳になる場合はNISA制度へ移管する
  4. 「廃止決定で使い勝手が良くなる?」という声も
    1. 2024年以降は、子どもが18歳になっていなくても売却が可能に
    2. 対象資産に源泉徴収されずに払い戻しが可能となる
    3. 気軽にジュニアNISAを利用できるようになる
  5. あえて今からジュニアNISAを始めるなら何に投資する?
    1. 今から始めるジュニアNISAの投資先1:ディフェンシブ銘柄で高配当銘柄 医薬品セクターなど
    2. 今から始めるジュニアNISAの投資先2:2020年に値下がりして下値が限定的かつ高配当銘柄で業績が回復しそうな景気敏感株
  6. まとめ:廃止は決定したが、ジュニアNISAと賢く付き合う方法はある

ジュニアNISAとは?

ジュニアNISAとは、子ども向けのNISA制度です。一般NISAやつみたてNISAの対象年齢は20歳以上ですが、ジュニアNISAは20歳未満の子どもが対象となっています。

ジュニアNISAは利益が非課税になる。生前贈与の一つとしても活用可能

ジュニアNISAは、2016年度から始まった未成年者を対象とした少額投資非課税制度です。通常は、投資で得た利益に対して約20%の税金がかかりますが、ジュニアNISAなら上場株式の売却益や配当金、投資信託の売却益や分配金などに対して税金がかかりません。

ジュニアNISAでは日本国内に住んでいる0~19歳の未成年者を対象に、年間80万円分の非課税投資枠が設定されています。年間80万円を上限に上場株式や株式投資信託を購入でき、その配当金、分配金、売却益などが最長5年間にわたって非課税になります。

ジュニアNISAは19歳以下の子ども名義の口座ですが、運用は両親や祖父母など2親等内の親族が代行できます。成人向けのNISAやつみたてNISAは、大人1人につきいずれか1口座しか開設できませんが、ジュニアNISAは子ども名義の口座なので、成人向け口座と併用可能です。そのため、両親がすでに成人向けNISA口座を持っている場合は、ジュニアNISAを開設することで、その世帯の非課税投資枠を増やすことができます。

贈与税には年間110万円までの非課税枠がありますが、年間80万円までのジュニアNISAはこの非課税枠に収まることから、生前贈与目的で利用されています。また、親が子ども名義でジュニアNISA口座を開設し、子どもの教育資金づくりに早くから取りかかるケースもあります。

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ジュニアNISAの注意点

ジュニアNISAには、非課税で資産を運用できるという大きなメリットがあります。一方で、少なからずデメリットもあるので注意が必要です。ジュニアNISAのメリットばかりが目立ちますが、教育資金を準備する際には、メリットだけでなくデメリットについても理解しておかなければなりません。

ジュニアNISAの注意点1:18歳までは払い出しに制限あり

ジュニアNISAの最大のデメリットは、払出制限があることです。一般NISAとつみたてNSIAはいつでも払い出しできますが、未成年を対象につくられた制度であるジュニアNISAは、子ども(口座名義人)が18歳になるまで払い出しできません。

大学進学資金として使いたい場合、一般受験には間に合いますが、秋頃に推薦入試などで入学が決まっても子どもが18歳になっていないと引き出せないため、肝心なときに役に立たない可能性があります。また、高校の授業料や塾代が必要となったときも、18歳まではジュニアNISAの資金を使うことができません。18歳になるまでに発生する出費に対応できないという、使い勝手の悪さがあります。この点は、ほかのNISAと比べて不便といえます。

ジュニアNISAの注意点2:損益通算ができない

ジュニアNISAでは損益通算ができません。たとえば、ジュニアNISA以外の課税口座で30万円の利益が発生し、ジュニアNISA口座で30万円の損失が発生していたとします。もし損失が発生した口座がNISA以外の課税口座であったなら、利益と損失を相殺する損益通算ができるため税金は発生しません。しかしNISAでは損益通算ができないため、30万円の利益に税金がかかってしまいます。不要な税負担が、NISAを利用したことで増えてしまうのです。

ジュニアNISA口座での損失は税務上ないものとされるため、特定口座や一般口座で保有する有価証券の売買益や配当金との損益通算はできず、その損失の繰越控除もできません。利益が出ているときは非課税の恩恵を受けられますが、損失が発生するとデメリットが生じるため注意が必要です。

ジュニアNISAの注意点3:期限が2023年まで

ジュニアNISA口座の投資可能期間は、2023年で終了することが決まっています。ジュニアNISAの口座を開設するのであれば、2023年までに手続きを済ませておかなければなりません。

ジュニアNISAは18歳になるまで払出制限があるため使い勝手が悪く、ほかのNISAと比べて登録口座数が伸びませんでした。国が期待していたほど加入が増えなかったことが、廃止になった主な理由とされています。

2024年以降のジュニアNISAはどうなる?

ジュニアNISAが2023年で終了するにあたり、保有している株式がどうなるのか気になっている人も多いでしょう。

結論からいうと、制度終了後も非課税のまま購入した商品を保有できます。新規口座開設の受付が終了するだけで、すでに保有している商品に影響が及ぶことはありません。ただし、制度終了までに20歳を迎える人とそうでない人では、運用の仕方が変わってくるので注意が必要です。

2024年以降、5年が経過した金融商品を継続管理勘定に移管できる

2023年で制度が終了するからといって、必ずしも払い出しを行う必要はありません。運用している商品を継続管理勘定といわれる場所に移管することで、成人するまで非課税のまま保有することができます。子どもが0歳のときに口座を開設すれば、20年間非課税で運用できるということです。早く始めるほど、得られるメリットも大きくなります。

継続管理勘定に移行できる金額に上限はないため、含み益が大きくなっていても問題ありません。うまく利用すれば非課税の恩恵を受けつつ、資金が必要になったときにいつでも払い出すことができます。

制度終了後も非課税で保有できる

非課税枠を使って購入した商品は、制度終了後も成人するまでは非課税で保有できます。継続管理勘定を利用すれば、成人前に制度が終了しても非課税で保有できるからです。

制度期間内に20歳になる場合はNISA制度へ移管する

2023年までに成人する場合は、20歳である年の1月1日にNISA口座が自動的に開設されます。それまで保有していた商品は、そのままNISA口座に移すことができるのです。

20歳に達すると本人による取引になるため、両親や親族に資産運用を代行してもらうことはできません。そのため、今後どのような資産運用をしていきたいのかよく考えることが大切です。

「廃止決定で使い勝手が良くなる?」という声も

ジュニアNISAの廃止に伴って制度の内容が一部変更されるため、これまで以上に使い勝手が良くなるともいわれています。これまでほかのNISAを運用していた人や投資をしていなかった人も、利用を検討する価値はあるでしょう。

2024年以降は、子どもが18歳になっていなくても売却が可能に

制度の廃止によって、18歳までの払出制限が2024年以降に撤廃されることになりました。そのため、2024年以降は子どもが18歳未満でもいつでも払い出しができます。

2020年に生まれた子どもがいる場合、2020年からジュニアNISAを始めれば80万円×4年=320万円を積み立てることができ、その子どもが4歳から18歳までの期間にいつでも払い出しができます。また、子どもが18歳になるまで非課税で商品を保有できるので、従来の制約が改善されることになります。

払出制限が撤廃されることにより、2024年以降は子どもが18歳になっていなくともジュニアNISA口座で購入した金融商品を売却でき、売却代金を払い出すことができます。これまでも口座内で保有している商品はいつでも売ることができましたが、売却代金は18歳になるまで払い出しができませんでした。しかし、2024年以降は子どもの年齢に関係なく、売却によって得たお金をいつでも払い出せます。急にお金が必要になったときに対応できるため、利便性が格段にアップします。

対象資産に源泉徴収されずに払い戻しが可能となる

制度の廃止に伴い、払出制限が撤廃されることになりました。そのため、制度終了時に18歳未満であっても、課税未成年者口座及び未成年者口座内の上場株式など、また金銭の全額について源泉徴収されることなく払い出すことができます。

つまり、2024年以降はジュニアNISA口座から払い出しをする際に、口座内で生じた過去の利益に対してはさかのぼって課税されることなく、必要な時に払い出しができるのです。

気軽にジュニアNISAを利用できるようになる

これまでネックになっていた払出制限がなくなったことで、利便性が高まりました。払出制限があることから投資を躊躇していた方には朗報といえるでしょう。気軽に利用できる環境が整ったことから、2023年まで利用する価値が出てきました。

あえて今からジュニアNISAを始めるなら何に投資する?

すでに廃止が決まっているとはいえ、年間80万円が非課税となるジュニアNISAを利用するメリットは大きいといえます。ただし今からジュニアNISAを始める場合は、投資先を慎重に選ぶことをおすすめします。

今から始めるジュニアNISAの投資先1:ディフェンシブ銘柄で高配当銘柄 医薬品セクターなど

ディフェンシブ銘柄とは、景気動向に左右されにくい業種の銘柄のことです。利益も損失も大きくない代わりに株価が安定していることが特徴であり、比較的安心して保有できます。医薬品セクター、電気・ガス、衣料品、交通機関などが挙げられます。

今から始めるジュニアNISAの投資先2:2020年に値下がりして下値が限定的かつ高配当銘柄で業績が回復しそうな景気敏感株

ジュニアNISAを始めるならば、将来有望株を狙ってみるのもよいでしょう。投資初心者は今調子が良い銘柄を購入しがちですが、すでに業績が良い銘柄は人気があるため、高値づかみ後の暴落といったリスクがあります。このような銘柄に飛びつくと、後が大変です。ブーム株や旬のテーマ株を避けることで、リスクを抑えられます。

今から投資するならば、今は業績が低迷していて不人気でも、来年以降に業績が回復して利益を上げそうな銘柄がよいでしょう。2020年は世界中の経済が混乱を起こしましたが、この一年で値下がりしたものの今後業績が回復しそうな景気敏感株なら、利益を得られる可能性があります。市況の良し悪し関係なく、着実に増収を続けている企業もおすすめです。

ただしリスクがまったくないわけではないため、投資にかかるコストはできるだけ抑えたいところです。国内株式手数料がかからないマネックス証券、SBI証券、楽天証券といったネット証券でジュニアNISAを運用するとよいでしょう。

まとめ:廃止は決定したが、ジュニアNISAと賢く付き合う方法はある

ジュニアNISAは、2023年までの期限付き制度です。すでに廃止が決まっていますが、そのおかげで預け入れた資金を2024年以降に引き出せるようになります。廃止されることで逆に利便性が高まったともいえるので、制度終了を上手く活用するとよいでしょう。2023年まで年間80万円という限られた金額になりますが、教育資金を積み立てる方法としてもジュニアNISAは有効です。

ただし投資はリスクを伴うため、デメリットも理解した上で利用を検討するようにしましょう。

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