2021年も残すところあと1カ月。株式相場も年末モードに突入しているが、例年、12月はIPO(株式の新規公開)を行う企業が他の月よりも増える傾向にある。初値が公開価格の数倍に上昇する銘柄が続出するなど、まるでお祭りのような状態になることもあるが、はたして今年はどうなるのか。過去の12月相場と比較し、この年末のIPO相場を占ってみたい。
夕刊フジの「株-1グランプリ」の銘柄は中長期的な上昇とは無関係
本論に入る前に、少し触れておきたいことがある。産業経済新聞社が発行している夕刊フジの企画「株-1グランプリ」についてだ。同企画では、1月から10月までの10カ月間、各月に5人が出場し、それぞれ時価総額100億円以上の銘柄を3つ選出。各銘柄の上昇率の合計を競う、いわゆる“株レース”である。出場者は、実際に株式の運用に携わっているプロもいれば、アナリストや評論家、個人投資家などさまざまだ。
1銘柄につき1回、銘柄の入れ替えが可能だが、銘柄を入れ替えると、入れ替え前の銘柄の上昇率はゼロになる。上昇率の合計が最も高い出場者が、11月の「グランドチャンピオン大会」の予選に出場し、さらにそこでも勝ち上がれば、12月開催のグラチャン大会に出場する権利を獲得できる。そこで優勝すれば、晴れてグランドチャンピオンとなる。
何もこの企画をここで宣伝したいわけではない。以前、過去に自分が書いた記事を見ようとネットで検索していたところ、たまたま「株-1」について触れている個人のブログを見つけた。そのブログでは、筆者が「株-1」で選んだ銘柄について「マネーライターの新井奈央さんも推奨しています」と紹介されていたのである。
もちろん、筆者をはじめ同レースの出場者は目先の株価が上がると考えてその銘柄を選んでいるわけなのだが、銘柄選別の基準は「短期的に株価急騰が見込める」ことであって、「中長期的に株価が上昇する」かどうかはまた別の話。初めて同レースに出場している人の中には、好業績だったり、日経225に入っているような優良銘柄を選ぶ人も見受けられる。もちろん、時価総額が100億円以上であればどんな銘柄を選んでもいいのだが、優良銘柄の安定したパフォーマンスでは、同レースを勝ち上がるための上昇率を稼ぐことはほぼ不可能だ。
同レースでは、期間内の最高値が上昇率としてカウントされる。瞬間的に株価が上昇すれば、それから下落に転じたとしても関係ない。株価が“瞬間沸騰”さえすれば、その後いくら暴落してもレースの勝敗には無関係である。これが重要なポイントだ。各出場者はその“瞬間沸騰”をつかまえられるような銘柄を選ぶのであって、実際に他人に買い推奨できるような銘柄を選ぶわけではないのである(少なくとも自分に関しては)。
もちろん、デイトレードやスウィングトレードなど、その“瞬間沸騰”を捕まえられるようなトレード手法が得意な人であれば、同レースをトレードの参考にするのは問題ない。ただし、中長期保有を前提とした投資家が手を出していい銘柄では決してないのだ。「株-1グランプリ」は、それを周知のうえで「株式投資関連のエンターテイメント」として楽しむものである。
ちなみに、筆者は2012年からスタートした同レースに毎年参加している。2020年までの9年間で3度、年末のグランドチャンピオン大会に出場したが、いずれも惨敗。今年は2019年以来、2年ぶりにチャンピオン大会に出場する予定なので、もし夕刊フジを購読されているなら、筆者の負けっぷりを楽しんでいただければ幸いだ。
12月のIPO相場の強弱は、単純に「上場銘柄数」との関連性が高い
さて、ここからが本論。