本記事は、福山貴義氏の著書『ビビリ投資家が考えた、買ったら永遠に売らない株投資法』(ぱる出版)の中から一部を抜粋・編集しています。
株式会社の成長と経済の成長
株式会社が世界中に広がり発展していったことで、起業家たちが、世の中をより便利にしたり快適にしたりする事業を遂行しやすくなりました。それによって社会がより豊かになり、経済が成長していったのです。
株式会社が株主たちから出資を得ることで事業資金を集め、社会にとって有益な事業を遂行し、より良い製品やサービスを生み出し、それを多くの人が購入する。すると会社は儲かる。会社はその儲けを使ってそこで働く人たちのお給料を増やし、また研究開発や設備投資にもお金を使い、さらによい製品・サービスを生み出していく。お給料が増えた人たちは、より多くの製品・サービスを購入するようになり、さらなる利益を会社にもたらす。すると会社はまたお給料を増やし…
とてもざっくりですが、経済はこのようなサイクルを経て成長していきます。そしてこのサイクルからもわかる通り、株式会社の成長はそのまま経済全体の成長につながっています。
ここから、株式会社の成長と経済の成長には強い相関関係があるということがわかります。
そして一般的には、株式会社の成長は株価、経済の成長はGDP(国内総生産)という指標を用いて表されます。
ここでいう株価とは、特定の一社の株価のことを指すのではなく、その国全体として押しなべて見た場合の株価のことであり、それは言い換えれば「その国全体を1つの株式会社と考えたときの株価」とでもいうべきものです。そしてそれは、その国を代表する株価指数を用いて表されます。
まとめると、株価指数とGDPには一方が上昇すればもう一方も上昇するという正の相関関係があるということです。
100年単位で見てみましょう
ここまでくると問題になってくるのは1つです。つまり、今後もGDPは増えていくのかということ。もしGDPが今後も増えていくことが見込まれるならば、それに伴って株価指数も上昇していくはずであり、私たちが株式を保有しない手はないということになります。
これから日本の、世界のGDPは一体どうなっていくのか。
私たちがどうしても知りたいこの答えは、実は過去にありました。
なんと、100年を超すとても長い期間で見たばあい、世界各国のGDPは過去一貫して増え続けてきているのです。短い期間での多少のアップダウンはあるものの、長期で見た際にはきれいな上昇トレンドを描いて推移してきています。
そしてまた、さきほどお話したGDPと株価指数の相関を裏付けるように、GDPの増加にともない、世界各国の株価指数もまた一貫して上昇し続けてきているのです。
こういった過去の事実をもってして未来はこうなると断定することはけっしてできませんし、またしてはならないことだと思います。
しかし、100年超にも及ぶ長い期間にわたって世界が一貫して成長を続けてきたという心強い事実は、世界はこれからも同じように成長の軌跡を描いていく可能性がきわめて高いということを強く示唆しているように思います。
私は、日本を含む世界が(短期的な浮き沈みはもちろんあることでしょうが)長期的に見ればこれからも着実に成長を続けていくと確信しています。
ですから、短期的な浮き沈みを耐え抜くために必要な長期の展望を胸に抱きつつ、なんの心配もなく淡々と、そして悠々と日本株への投資を続けていくことができます。
くりかえす市場サイクル
このような長期的な展望をしっかりと持っていることが、短期の荒波を乗り越えていくための力を与えてくれるのですが、もっと具体的な例があれば読者のみなさんもイメージがつかみやすいことと思います。
およそ100年前のアメリカで起こった世界恐慌についてはご存じの方も多いと思います。ブラックサーズデー(暗黒の木曜日・1929年10月24日)を始まりとした未曽有の株価大暴落でした。
このブラックサーズデー当日、ダウ平均株価は12%以上下落しました。これは、100万円持っていたとしたら、たった数時間のうちにそれが88万円に減ってしまったということです。これはかなりショッキングなことだと思います。
しかしそれだけにとどまらず、この日以降の数年間でダウ平均株価はなんと80%以上も下落してしまったのです。これはもう、涙抜きには語れない話となってしまいますが、自分の100万円がたった数年で20万円にまで激減してしまったということです。
これほどの下落に耐えられる人はそうそう多くはないでしょう。事実、当時のアメリカではこの暴落を受けて絶望し、その後二度と立ち直れなかった人たちが続出しました。
これだけでも十分にショッキングな話なのですが、実はもう1つ、それに輪をかけてショッキングな事実があります。それは、株価の暴落はこれからも必ず起こるということ。
じつはこのブラックサーズデーほどではないにしても、世界の株式市場は過去何度も暴落を経験してきました。
ブラックマンデー(暗黒の月曜日・1987年10月19日)、日本のバブル崩壊(1991年)、リーマンショック(2008年)、そして記憶に新しい2020年のコロナショックなど、枚挙に暇がありません。
これらは非常に大きな暴落でしたが、より小規模なものを含めるとその数はさらに多くなるでしょう。
大きな暴落が過去何度も繰り返されてきたというのが株式市場の真の姿であり、株式を長期間保有していこうとする人たちにとって暴落は避けがたいものなのです。
つまり、株式を永遠ともいえる長期間保有していくつもりであれば、暴落を経験することを覚悟のうえで行うということが非常に大切になってくるのです。