本記事は、福山貴義氏の著書『ビビリ投資家が考えた、買ったら永遠に売らない株投資法』(ぱる出版)の中から一部を抜粋・編集しています。
投資法は無限にある!
一口に株式投資といっても、そこには、それを行う人の数だけ投資法があると言っても過言ではないくらい、たくさんの投資法があります。
デイトレード、スイングトレード、イベントドリブン、ロングショート、チャーティスト、アクティビスト、配当投資、株主優待投資、バリュー投資、成長株投資、テーマ投資、等々、数え上げたらきりがないほどです。
このように数多くある投資法ですが、様々な便宜上、大まかに分類することはよくあります。分類の仕方には、その投資に要する期間で分類する方法と、主な投資対象で分類する方法があります。
期間で分類する方法はシンプルで、長いあいだ株を保有する投資法を長期投資、短期間しか株を保有しない投資法を短期投資といいます。
ここでいう長期、短期が具体的にどれくらいの期間を指すのかについて明確な定義があるわけではありませんが、一般的なイメージだと、保有期間3~5年、あるいはそれ以上のものを長期投資、保有期間が1日か、長くても数週間程度までのものを短期投資と呼ぶことが多いようです。ほかに保有期間10年以上のものを超長期投資と呼んだりすることもあります。
投資対象で分類する方法については、割安な企業の株に投資するものをバリュー投資、これから大きな成長が見込まれる企業の株に投資するものをグロース投資といいます。
このように多くの投資法があるなかで、本書のテーマである「買ったら永遠に売らない株投資法」とは、いったいどのような位置づけとなるのでしょうか。
買ったら永遠に売らない株投資法の4サイクル
買ったら永遠に売らない株投資法はその名前からわかる通り、超長期投資です。
理想とする保有期間は永遠!
とはいっても、これはあくまでも投資する際の姿勢や理想を表したものであり、買ったすべての株を必ず永遠に保有するというものではありません。
永遠に保有していたいと思えるような、優良でモラルが高く社会の役に立ち、多くの人たちを幸せにしている成長性にあふれた企業にのみ投資し、あとは何もしないで永遠に保有し続ける。これが理想なのですが、現実には、永遠の訪れを待つことなく株を手放さなければならない場合も少なくありません。
投資したすべての企業が、投資することを決断したときに描いたストーリー通りに成長していくようなことがあれば万々歳ですが、そんなことはまずないでしょう。
継続して保有していくなかで、いくつかの企業は実はそれほどの実力ではなかったということが露呈するかもしれませんし、投資を決断した時点では予想すらしていなかった不祥事を起こし、前途が暗転してしまうようなことがあるかもしれません。
私たちは、未来とは本質的に予測不可であり、株式投資の世界では何が起こってもおかしくはないということを頭に入れておく必要があります。そうすることで、買った株のうちいくつかが予想通りにふるまわなかったとしても、落胆してしまうことなく投資を続けていくことができるようになります。
そして投資を続けていく中で、次のようなサイクルを繰り返していくのです。
これを私は『買ったら永遠に売らない株投資法の4サイクル』と名付けています。
- 永遠に保有していたい株をよく吟味したうえで購入する
- いくつかは描いたストーリーに陰りが見えはじめる
- 2を売り、2よりも有望な株を購入する
- ポートフォリオの永久保有銘柄比率を上げていく
このサイクルのなかで一番重要になってくるのが4番です。
1番から3番を繰り返すことによって、永久保有に値する株は当然保有を続け、それに値しない株は手放し、新たにそれ以上に有望な株を購入することにより、ポートフォリオの永久保有銘柄比率を上げていくことができます。
さらに、このサイクルを繰り返すうちに永久保有銘柄を見抜く力、目利き力が養われていき、2番が起こる可能性は減少し、1番と3番の成功率が増加していきます。それはつまり、4番がより達成しやすくなることを意味しています。
買ったら永遠に売らない株投資法においては、このサイクルを繰り返すことによって、ポートフォリオを永久保有銘柄で埋め尽くすことが最大の目標であり、それがすなわち資産を最大化することにつながるのです。
自分の経験やそこからくる銘柄選択能力の向上(この投資法を行っていけば必ず向上します)に伴い、ポートフォリオの中身がより洗練されたものになっていくのを見ることは投資家としての喜びであり、また経済的な実利も伴うものなのです。
バリューグロース投資
買ったら永遠に売らない株投資法の投資期間は超長期であるということをみてきましたが、では、投資対象でみるとどうなのでしょうか。
買ったら永遠に売らない株投資法は、投資対象で分類するならばバリュー投資とグロース投資の中間といった位置づけとなります。あえて名づけるとすればバリューグロース投資といったところでしょうか。
これはその名の通り、バリュー投資とグロース投資の良いところを掛け合わせたものであり、ただ割安であるというだけでなく、成長性をも兼ね備えた企業に投資するというものです。
一般にバリュー投資といえば、企業についての様々な指標を分析し株価が本質的価値に比べて割安であると判断すれば、たとえ成長性を伴っていなくても投資に踏み切り、いずれ株価がその企業の本質的価値まで回復した段階で売却し利益を得る、というものです。
それと比べてバリューグロース投資では、ただ割安であるというだけで投資することはありません。
割安であることと同時に、その企業がこれから長きにわたって成長していくというストーリーを描くことができて初めて、投資に踏み切ることになります。
そしてこのバリューグロース投資は、もう一方のグロース投資とも異なります。
グロース投資家は、高い成長性が見込まれる企業であれば、本質的価値をはるかに超える水準の株価であってもそれを許容する傾向があります。それに対してバリューグロース投資ではいくら成長性が高い企業であっても、本質的価値を大きく超える水準の株価ではけっして投資しません。ここがグロース投資と大きく異なるポイントです。
もっとも注目されている旬の業界の旬の企業(人気銘柄)というのは、事業内容も将来への大きな希望を感じさせるものであることが多く、多くの人の食指を動かします。
それらは過去および足元の業績が好調なために買われているのではなく、将来の業績拡大への期待感のみを根拠に買われていることが多く、もしその期待が実現できそうにないと分かったときなどは一斉に売られてしまい、株価も大きく下落する、ということがよくあります。
事実、過去一度も黒字を出したことのない企業に驚くほど高い株価がつく、といったようなことがよくありますが、こういったケースは投資家たちが将来への期待のみを根拠に熱狂してしまっているサインであり、よくよく注意が必要です。
投資家たちの熱狂により本来の実力とはかけ離れた水準まで株価が上昇していても、人気に火が付いた企業の株を巡っては誰もが乗り遅れることを恐れるようになり、極度に楽観的になってしまうのです。
誰もが
「下がり始める前に急いで買わなければ」
「高い値段で買っても、誰かがもっと高い値段で買ってくれるだろう」
などと考えるようになり、損をする可能性などは全く考慮されなくなってしまいます。
グロース投資は高成長株に投資するというその性質上、よほど気を付けていないと、このような熱狂に巻き込まれてしまう可能性が非常に高くなってしまいます。
そして、もしこのような熱狂に巻き込まれてまったばあい、運よく大きな利益を出せることもたまにはあるかもしれませんが、多くのケースでは望まない結果となってしまうことでしょう。
バリューグロース投資ではこのような状況に陥るのを注意深く避けるために、本質的価値および成長性を加味した適正水準を大きく超える株価は許容しないという態度を貫きます。
具体的には「バリューグロース投資では、誰もが群がる人気銘柄にはけっして投資しない」ということです。
株式投資においては、儲けることよりも大きな損をしないことのほうがはるかに大切です。大きな損を回避するためにも、この鉄則をしっかりと守っていくことが重要なのです。
ここまでの話を簡潔にまとめると次のようになります。
買ったら永遠に売らない株投資法とは、
「長期的に着実に成長していくことが見込まれる企業の株を、その本質的価値に照らして割安な価格で購入し、その成長シナリオが続く限り、永遠を目標に保有を続ける」
というものです。
この目標を実現するために、前述の『買ったら永遠に売らない株投資法の4つのステップ』を活用していくのです。