本記事は、福山貴義氏の著書『ビビリ投資家が考えた、買ったら永遠に売らない株投資法』(ぱる出版)の中から一部を抜粋・編集しています。
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事業内容は理解可能か⁉
特色を読んでピンとくる企業があったら、事業内容についてより深く調べます。
調査に用いるのは企業のホームページです。ホームページを隅々まで見て、その企業がいったい何をして儲けているのか、事業のどのような点に特徴があるのかをしっかりと理解するようにしましょう。
メーカーなら、製品を作ってそれを売っている。 小売りなら、商品を仕入れて、それを売っている。 ITなら、ソフトウェアを開発してそれを売っている。 物流なら、物を運んでお金をもらっている。
飲食なら、お店で料理を出し、お金をもらっている。
これくらいのことはわざわざ調べるまでもなく誰にでも分かることです。でも、これが分かったところで投資に際しては何の役にも立ちません。
投資に必要なのはもう一歩踏み込んだ理解です。
メーカーなら、
その製品は他社と比べてどんな特徴、違いがあるのか。 性能が良いのか、デザインが良いのか。 環境にやさしい原料を使っているのか。 製品そのものではなく作り方になにか強みがあるのか。 製品の熱心なファンはいるか。
小売りなら、
消費者がそのお店で買う理由はなにか。 安さが売りなのか、品ぞろえが売りなのか。 売り方にはどのような工夫、特徴があるのか。 店舗の数、分布はどうなっているのか。 ECには力を入れているか。
ITなら、
どこに優位性があるのか。人材か、技術か。 商品やサービスは時宜にかなったものか。 テクノロジーを過信していないか。 一過性のテーマを追いかけていないか。 技術と同じく営業にも創意工夫と熱意があるか。
物流なら
何を運ぶのが得意なのか。 どのように運ぶのが得意なのか。 専門特化型か、なんでも運ぶのか。 ドメスティックか、インターナショナルか。 クライアントのニーズには敏感か。
飲食なら
おいしさが売りか、安さが売りか。 店舗は郊外に多いか、都市部に多いか。 DXに対して進歩的か。 接客に重きを置いているか。 店舗は増えているか、減っているか。
たとえばこのような問いに答えられるようになること。それがもう一歩踏み込んで理解したことの証です。
ホームページには、企業独自の事業内容紹介とは別に決算短信や有価証券報告書など、全上場企業が統一された書式で作成する資料も掲載されていますから、それらも参考にしながら理解を深めていきましょう。
これら統一された書式で作成された資料の優れたところは、同業他社と比較する際にとても便利なことです。
事業の優位性やその企業ならではの特徴などは、同業他社と比較することではじめて見えてくる場合があります。
これらの資料を用い、投資検討中の企業と同時進行でそのライバル企業についても調べてみましょう。
同じ業種でも、各企業にはそれぞれ個性があり、事業に対する独自の方法や考え方を持っていることが分かってくると思います。
そうすると企業を分析する際の視点が増え、さまざまな角度から企業を見ることができるようになります。
このように調査・分析を進めてきて、その企業の事業内容、特徴、同業他社との違い、強みなどをしっかりと理解できればよいのですが、どれだけ資料を読み込んでもいま一つピンと来なかったり、何かが引っかかったりした感じが拭えない場合があります。それは、
「頭で理解はできているが、感情では理解できていない」
というサインであり、そういった場合はその企業には投資すべきではありません。
ここでいう「感情」というのは、「心」と言い換えてもよいかもしれません。
「この会社はこれこれこういうことをやっていて、ここがすごいところである」と頭では分かっても、心が「ふうん、なるほど」としらけている場合は、本当に理解したことにはなりません。
「この会社はこれこれこういうことをやっていて、ここがすごいところである」と頭で分かって、心も「おお、そうか、それはすごい!」と賛同する場合のみを、本当に理解したというのです。
後者の場合にしか投資を行わない、ということを徹底してください。
紙に書いてよく見えるところに貼っておいてもよいくらいです。
前者のような理解レベルで投資を行ってしまうと、株価の下落局面で必ず不安になります。頭では理解しても、それを心にまで落とし込めていないという場合、少しの株価下落でも自分の決断を疑い始めてしまいます。そうなるともう、成功は望めません。これ以上下がってしまったらどうしようとビクビクしながら日々を過ごすのはとても辛いことです。
そうならないためにも、
「この企業の事業内容を自分は本当に(頭だけでなく心でも)理解したといえるか」
と自問することを怠らないようにしてください。
ちなみに、すべての企業の事業内容をしっかりと頭と心で理解できないからと言って自分を責める必要はまったくありません。
企業に個性があるように、私たち人間にも個性があります。
そして個性と個性が出会う場所には、相性という概念が生まれます。
もしみなさんがある企業の事業内容をしっかりと頭と心で理解することができなかったとしても、それはみなさんの能力不足を表すものではけっしてありません。ただ相性が悪かっただけです。
相性の良い企業のことは非常に理解しやすいのに対して、相性の悪い企業のことはてんで頭に入ってきません。
それでよいのです。
相性があるからこそ、得意分野と苦手分野が生まれるのです。
企業分析を続けていくうちに、おそらくみなさんは自分の得意分野と苦手分野を悟り始めることでしょう。
そうなったらしめたもの!
得意分野に集中して企業分析を行っていけばよいのです。苦手分野にわざわざ取り組む必要はありません。
得意分野に集中していれば、その分野にどんどん詳しくなっていきます。
ある分野に詳しくなるということは、専門分野を持つという意味において投資家としての明確なアドバンテージとなります。
事業の強みや弱みを見抜くちから、すなわち洞察力が高まり、さまざまな資料を読む際にもその行間を読みとることができるようになります。
そこに書いてある事実から、そこには書かれていない事実を推測する能力が高まり、企業の将来について自分独自のストーリーを描くという能力が洗練されていきます。
そうするとますます株式投資が楽しくなっていき、成績も向上していくという最高最強のサイクルに足を踏み入れることができます。
反対に苦手分野に拘泥してしまうと、時間はかかるのにも関わらず思わしい成果を上げることができず、企業分析がどんどん億劫になってしまいます。
苦手分野をパスして自分の得意な分野に集中することは逃げではなく戦略です。
株式投資を行ううえで最も犯してはならないミスは、すべてに精通しようと努力すること。
そんなことは誰にもできません。
すべての企業について万遍ない知識を持っている人よりも、いくつかの分野において深い知識を持っている人のほうが、株式投資において成功する可能性は高いでしょう。
ですから、いくら資料を読み込んでもなかなか理解できない、つまり心が賛同しないという場合は、その企業とは相性が悪かった、縁がなかったと割り切ってしまい、投資対象をもっと自分と相性の良い企業、分野へと移すことが大切です。
その結果として、結局たった1つの得意分野しか残らなかったとしても大丈夫です。
株式投資の成否を分けるのは、得意分野がどれだけ多いかで決まるものではないからです。
成否を分けるのは、得意分野と苦手分野の線引きを明確にし、得意分野から出ずにその中にとどまり続けることができるかどうかです。
得意分野、興味のある分野がたった1つしかないのであれば、それでもよい。
その分野に対する知識を深め、その分野以外の投資対象にはけっして手を出さなければ、かならず成功することができます。
これらのことを念頭に置きながら、事業内容の分析に取り組んでいただければと思います。