本記事は、福山貴義氏の著書『ビビリ投資家が考えた、買ったら永遠に売らない株投資法』(ぱる出版)の中から一部を抜粋・編集しています。

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(画像=PIXTA)

プラスサムゲームでパイ全体が大きくなる

企業が成長していけば、その成長にともなって株価も上昇していくことになり、株価の値上がりは株主の利益になります。そして企業の成長は株主の利益のみならず、その企業に勤務する人たちの雇用を守ること、また新たな雇用を生み出すことにもつながります。業績好調による処遇改善が行われることもあるでしょう。

それだけではなく、研究開発や設備、人材への投資が活発に行われるようになり、企業はより良い製品やサービスを生み出すことができるようになります。その結果、多くのより良い製品やサービスを提供されることになる私たち消費者も選択肢が増え、より豊かで便利な生活を送ることができるようになります。

私たち消費者とは社会そのもののことですから、つまりは日本社会全体がより豊かで便利になり、発展していくことになります。

このように、企業の成長はそのまま日本社会の発展に結びついていますから、長い時間をかけて忍耐強く企業の成長に投資する人たち(まっとうな株式投資家たち)が増えると、社会はどんどん明るく豊かになっていくのです。

投資した人、投資先の企業、従業員とその家族、取引先の企業、その従業員と家族、そして消費者。

まっとうな株式投資家の投資を起点として、関わる人たちすべて(ステークホルダーといいます)が恩恵を受け豊かになっていくという大きな循環システムが出来上がっているのです。

企業が成長していくことにより経済のパイ全体が大きくなっていくので、それを分かち合うことによりみんなで豊かになっていくことができる。他人から奪う必要はどこにもありません。これをプラスサムゲームといいます。

いっぽう、投機はゼロサムゲームです。全体のパイが大きくなることはけっしてないので、限られたパイをみんなで奪い合うことになります。奪い合いだから、誰かが得をすれば、その分誰かが損をする。だから、みんなで豊かになっていくことはできない。

買ったら永遠に売らない株投資法が最強だということには、このような理由もあるのです。

増え方が増えていく! 複利のスゴイちから

ここまでみてきたように、いちばん儲かる投資、つまり買ったら永遠に売らない株投資法には時間が必要です。時間をたっぷりとかけることによって、株式投資による資産の増大を最大化することができます。

間違っても、運用に時間をかけることを厭い短期間で大きな利益を上げてやろうなどと考えてはいけません。それはあなたの脳内で聞こえる破滅へのささやきです。

失ってもかまわない余剰資金を使い短期投資に興ずるというのは、それほど愚かな行為とはいえないかもしれません。おそらくそのお金は失ってしまうことになるでしょうが、その分スリルと興奮を味わえたのですからよしとしましょう。

しかし、私たちの目標は快適で幸せな老後やその他、何か有意義なことを実現するために資産を形成することであり、そのための資金は少しの興奮とスリルのために失ってしまうには惜しすぎるものなのです。

このことを十分に頭に入れながら、運用に時間をかけることのメリット、つまり複利の効果がいかに巨大なものであるか、みていくこととしましょう。

複利とは、もともとの元本に利息がついたとき、その利息を利息として受け取らずに元本に加え、新たな元本として再投資していくことをいいます(もともとの元本に再投資しない場合、それを単利といいます)。

これを株式投資に当てはめると、もともとの元本というのは保有している株のことを指し、利息というのは受け取る配当のことを指します。

元本である株から受け取った配当を買い物などに使ってしまわずに、そのお金で株を買い足し、新たな元本として再投資するわけです。

これの一体どこが、そんなにすごいことなのでしょうか。

たとえば、元本1万円を年率5%で運用したとします。1年目の終わりには元本1万円に対して5%の利息、つまり500円を受け取ることができます。

この利息を利息として受け取らずにもともとの元本1万円に加えると、新たな元本は1万500円となりますから、翌年はこの新たな元本である1万500円に対して5%の利息がつくことになります。1万500円の5%ですから、525円を利息として受け取ることができます。

この525円をさらにもともとの元本に加えると、新たな元本は1万1025円となりますから、翌々年には1万1025円の5%、つまり551円を利息として受け取ることができます。

このように複利の運用では、受け取る利息を元本として再投資することによって、時間の経過とともに元本の額がどんどん増えていきます。

さらに、元本が増えていくことによって、受け取る利息の額もどんどん増えていくことになるのです。

それに対して、元本に利息がついたときその利息を元本に再投資しないのが単利の運用です。この場合はもともとの元本が増えることはないので、時間がたっても受け取る利息の額が増えていくことはありません。

元本はずっと1万円のまま。そして受け取る利息も毎年500円で変わらないままです。

ビビリ投資家が考えた、買ったら永遠に売らない株投資法
(画像=ビビリ投資家が考えた、買ったら永遠に売らない株投資法)

この説明では、複利と単利、このふたつにそれほど大きな違いがあるようには思えないかもしれません。

たしかに2年や3年といった短い期間で比較した場合には、これらの結果にそれほど大きな違いは見られないでしょう。

ですが、5年や10年、20年といった長い期間で比較した場合、これらの結果は目を見張るほどの差異を生み出すことになります。そしてその差異は期間を長くとればとるほど、劇的に大きくなっていくのです。

ここで劇的という言葉を使いましたが、グラフを見ていただければ一目瞭然のとおり、概ね10年を超えたあたりからの複利の効果はまさにその言葉がふさわしいほどに、急激な資産増加をもたらしてくれるのです。

複利の効果のすごさはまさにここにあります。

時間の経過とともに資産の絶対額が増えていくだけではなく、資産の「増え方そのものが増えていく」のが、複利の効果のすごいところなのです。

「雪だるま式」という言葉がありますが、これは複利の効果のすごさをとてもよく表しています。

みなさんも小さい頃、雪だるまをつくって遊んだことがあると思います。

最初に小さな雪のかたまりを作る。これを転がすと、まわりに新しい雪がくっつき少し大きなかたまりになる。さらに転がしていくと、そのまわりにも新しい雪がくっつき、もっと大きなかたまりができる。どんどん転がせば転がすほど、雪のかたまりは急激に大きくなっていく。

私たちのお金も、じつは同じことなのです。

たとえ最初は小さな額だったとしても、複利の効果を享受できるように、ゆっくりと時間をかけて運用していくことができれば、私たちの資産は驚くほど急激に成長していくものなのです。

余談かもしれませんが、買ったら永遠に売らない株投資家の代表格ともいえるアメリカの伝説的投資家、ウォーレン・バフェットの唯一の本人公認自伝のタイトルはずばり『スノーボール(雪の玉)』といいます。

この自伝(ハードカバー版)の裏表紙にはこんな言葉が記されています。

『Life is like a snowball. The important thing is finding wet snow and a really long hill.』

『人生とは雪の玉のようなものだ。大事なのはよく湿った雪と、それを転がすための長い長い坂道を見つけることだ』

ビビリ投資家が考えた、買ったら永遠に売らない株投資法
福山貴義
投資家・投資哲学研究家。1979年、神戸生まれ。年収180万円、貯金ゼロ、サラ金からの借金30万円、フリーター。お金にまったく縁のない状況を打破しようと、1,400冊の金融書籍を読破して猛勉強。 “まっとうな株式投資” という考え方にたどり着く。どん底からわずか3年で世代平均を大幅に上回る資産を築き、現在も増大中。投資家として活動しながら、一人でも多くの人がまっとうな株式投資の恩恵を享受できるよう、その魅力やメリット、楽しさを伝えていくことをライフワークとしている。

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