本記事は、三崎優太の著書『時を稼ぐ男 新時代の時間とお金の法則』(KADOKAWA)の中から一部を抜粋・編集しています
「先行者利益の壁」を打ち崩す後発組のメリット
新たに起業をし、業界に新規参入する際には、規模や社歴、現預金残高の規模などの面で先行企業にはるかに及ばないところがあると思います。
後発組というのは、いつの時代も「先行者利益の壁」に苦しめられるものなのです。これに抗(あらが)おうとしたところで、どうなるものでもありません。
しかし、後発組には後発ならでは強みもあります。それを生かせば「先行者利益の壁」は必ず乗り越えられます。
例えば、後発組には、先行企業が提供している商品やサービスをじっくりと比較検討し、彼らがそれまでコツコツと築いてきたノウハウをごっそり見習えるという大きなメリットがあります。これを行った上で、プラスアルファの価値を加えれば、競争優位性を高められるはずです。
このアドバンテージを最大限に活かしつつ、先行組よりも優れたものを提供すれば、間違いなく先行者利益の壁を打ち崩せます。
私が「すっきりフルーツ青汁」を開発し、それを販売し始めたのは2014年のことでした。このときすでに青汁は健康食品として人々の間に浸透し、テレビCMも放映されているほど世の中になじんでいました。
そんな業界に、私の会社のような後発の中小零細企業が参入しても、並大抵のことでは勝てるわけがない……。
当初はそう考えていましたが、私はあきらめませんでした。
そこで、後発組としてのメリットを最大限に活かし、先行組にはない競争優位性を2つほど備えたのです。
まずひとつめは、おいしくて飲みやすい青汁を作ることでした。当時(そして、おそらく今でも)、青汁といえば、「マズい」というのが固定されたイメージになっていました。そのマズさを我慢して飲むから“体に効く”という概念があったのです。
そこで私は、そのイメージを覆すおいしい青汁を作り、競争優位性を高めようと考えました。
もちろん、苦くてマズい青汁が好みの人は、それまでと変わらないマズい青汁を選ぶでしょう。一方で、おいしい青汁を飲みたいという人たちもいるはずだと考えたのです。それまで青汁をずっと飲み続けていた私自身が、そもそもそう感じていたひとりでした。
「おいしい青汁」が備えていた競争優位性
「おいしい青汁を作ってみよう」
こう思ったとき、私はすぐに「これはイケるかもしれない!」と直感しました。なぜなら後発組のメリットを目いっぱい活用できると思ったからです。
先行企業にしてみれば、今になって味の変更を行うのは簡単ではありません。
すでに従来の“苦くてマズい“青汁を販売しているため、それを急に変えてしまうと、それまでの青汁で満足していた顧客を失うおそれがあるからです。
私は先行企業のこうしたデメリットの裏をかき、“甘くておいしい“青汁の商品化に取り掛かると、それを「自分の武器」として「領土の奪い合い」に参入することにしました。
後発組が競争優位性を得るための「広告戦略」
もうひとつの競争優位性は、「広告」でした。
当時、青汁を販売している企業の広告は、テレビCMやチラシ、雑誌広告、新聞広告といった従来型のものが大半を占めていました。
後発組で、しかも中小零細企業だった私の会社がこれらの従来型の広告媒体に頼ろうとすれば、広告費はかさむ一方です。それが原因となり、経営が圧迫されることも予想できました。仮に広告を出したとしても、知名度の高い先行組の広告のなかに埋もれてしまう可能性が高く、いい結果が得られるとは思えなかったのです。
ここで勝負をしても、相手の武器にはまったく抵抗できず、一撃でひとたまりもなくやられてしまうだろう……。彼らの競争優位性に勝てないのは明らかでした。
そこで私は、先行組がどこも参入していない「インターネット」というフィールドで広告を展開することにしたのです。
2つの武器で年商130億円を叩き出す
当時、ネット上で青汁の広告を出している企業は1社もありませんでした。
今ではもう、青汁だけでなく、ありとあらゆる健康食品がネットを有力な広告の場としています。しかし2014年ころは、ネットで健康食品の宣伝をするという発想自体がまったくありませんでした。そこで、それまでになかったネット上での広告を行い、私の会社は2つめの競争優位性を手に入れたのです。
この2つの競争優位性を手にした結果、2017年、「すっきりフルーツ青汁」を市場に投入してからわずか3年で、私の会社は130億円の売り上げを達成するまで成長していきます。
これら2つの優位性がないまま、ただ闇雲に青汁という巨大な領土に突撃していたら、間違いなく早い段階で撃退されていたでしょう。
「おいしい青汁」と「ネット上での広告」という2つの武器があったからこそ、後発組であるにもかかわらず、130億円という領土を獲得することができたのです。
将来的に起業をしたいと考えているのであれば、「競争優位性」にしっかりと着目し、後発ならではの戦略を立てるようにしてください。
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