この記事は2022年1月27日に「株式新聞」で公開された「海外株式見通し=米国、香港」を一部編集し、転載したものです。
[米国株]ITバブル後の出世株は?
2022年1月21日(金)のネットフリックスの株価は、終値が前日比20%を超える大きな下落となった。決算発表で、新規契約者数の伸び悩み見通しが判明。それが嫌気されたとはいえ、市場を驚かせた。
米上院司法委員会で、IT大手の自社優遇禁止法案が可決されたこともあり、これから決算発表される巨大テック企業に対して市場の目は厳しくなると予想される。
ITバブルのピーク直後の2000年3月末から3年間におけるS&P500指数構成銘柄で、現在も上場している企業における値上がり率上位10銘柄と、その値上がり率を調べた。結果は以下のとおり。
●1位:253% 金属・プラスチックメーカー「ボール」
●2位:226% 教育ローン「SLM」
●3位:220% ヘルスケア・管理医療「ユナイテッドヘルス・グループ」
●4位:170% 総合エネルギー会社「エンタジー」
●5位:152% 自動車専門部品「オートゾーン」
●6位:150% 公益事業会社「サザン」
●7位:148% 建設会社「パルトグループ」
●8位:135% 防衛用航空機「ロッキード・マーチン」
●9位:128% 保険会社「プログレッシブ・コープ」
●10位:122% 玩具メーカー「マテル」
2003年3月にイラク戦争が開始されたことから、防衛関連銘柄のパフォーマンスが相対的によかった面はあるものの、ナスダック銘柄を中心に下落した時期の物色傾向として参考になる。
また、世界経済の全般的な商品価格動向と、インフレを示す先行指標の「S&P GSCIトータルリターン指数」の対S&P500指数の倍率は、ITバブル崩壊後の2002年ごろからリーマン・ショック直前の2008年半ばまで上昇。
同倍率は歴史的最低水準近辺にあり、インフレ局面でのコモディティー(商品)主導でのバリュー・景気敏感株中心の相場展開が想定される。
[香港株]中国・アセアンの越境ECで見直されるアリババ
中国・アセアン(東南アジア諸国連合)間の、ライブビデオ配信による越境EC(Eコマース、電子商取引)が急成長している。その越境ECの販売プラットフォームと、金融サービスを提供する主役に位置付けられるのはアリババだ。
アリババは昨年、取引先に対して同社の競合企業と取引しないように迫ったことが独占禁止法違反と認定されて、約3000億円相当の罰金処分を課された。
それに加え、低価格の共同購入型EC「ピンドゥオドゥオ」の急速な台頭に対抗する目的から、競合のテンセントと提携した低価格販売ECプラットフォーム「淘宝(タオパオ)特価版」に注力。これが利益率を低下させる要因になった。また、中国政府によるテック企業への規制強化を受けて、株価は2020年11月の過去最高値から60%以上下落した。
その一方で、海外向けECである「海外コマース」はクラウドコンピューティングに次ぐ売上成長事業となっている。海外向けECの中でも、シンガポール拠点の「ラザダ」は東南アジア最大級のECプラットフォームとして、インドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナムでサービスを提供。
1つのアカウントでその6カ国の越境ECを管理できる。アリババが有する中国とアセアンのECプラットフォームが一体化されれば、同社の成長加速が期待される。
世界経済は現在、景気拡大局面に差し掛かりインフレ率が上昇している。中国経済は不動産業界の信用不安などに備えるため、金融を緩和する局面にあるとみられる。
中国人民銀行(中央銀行)は1月20日(木)、新規貸出金利の指標となるローンプイライムレートの1年物を3.7%へ2カ月連続で引き下げた。5年物も4.6%へと0.05ポイント引き下げた。資金調達総額やマネーサプライも前年同月比で上昇が加速している。中国株は「不況下の株高」といわれる金融相場の時機を探る段階といえそうだ。