この記事は2022年3月9日(水)配信されたメールマガジンの記事「岡三会田・田 アンダースロー『本当の基礎からわかる「金融市場のマクロ・フェアバリューはどのくらいか?」を一部編集し、転載したものです。
金融市場のマクロ・フェアバリュー
金融市場のマクロ・フェアバリューを、資金循環統計を中心に推計した。
経済指標がリアル・タイムでは手に入らないので短期の予測としては役に立たないことを注意してほしい。四半期のすべての説明変数の公表を待っていると、マクロ・フェアバリューの推計値が金融市場の動きについていけないことになってしまう。
よって、公表された説明変数から順次アップデートしていくローリング・アプローチをとることで柔軟に対応する。推計の正確さより、実用性を重視した。短期的な需給要因や市場が注目するテーマなどによる変動を考慮するため、1標準誤差を基準として、ダミー変数で調整されている。
ダミー変数の係数の半分を使い、マクロ・フェアバリューの変動として、フェアレンジを示す。このレンジを超えている場合、金融市場はマクロ・フェアバリューから割安・割高になっていることを意味する。
マクロ・フェアバリューに変化はなくても、ダミー変数が必要となるような上下方向の乖離は頻繁に起こるし、その乖離がなくなってマクロ・フェアバリューに戻る動きも、大きな投資機会となる。
金融市場や経済の構造が急激に変化するなどして推計の形や係数が変化してしまっていることもある。時には、金融市場がフェアバリューから大きく乖離しているのか、フェアバリューが構造の急激な変化を織り込めていないのか、判断しなければならない。
株式・債券市場の動きは、チーフストラテジスト・松本史雄さんと債券シニアストラテジスト・鈴木誠さんが、株式・債券市場を様々な事象で詳しく分析しているので注目してほしい。
金融市場のマクロ・フェアバリューとレンジ
- 長期金利:▲0.11% −0.11% −0.38%(現在0.15%)
- 20年金利:0.28% −0.53% −0.79%(現在0.64%)
- 日経平均(米国連動モデル):2万4,539円 −2万5,515円 −2万6,546円(現在2万4,791円)
- ドル円:118.8円 −121.8円 −126.6円(現在115.6円)
- ユーロ円:127.7円 −138.6円 −150.5円(現在125.7円)
- 米国長期金利:1.84% −2.19% −2.47%(現在1.87%)
金融市場のマクロ・フェアバリュー推計
長期金利:−0.36 +0.47
- コールレート:+0.36
- 米長期金利 :+0.45
- 米10〜30年金利差:−0.062
- ネットの資金需要:−0.024
- 日銀長期国債買入れGDP比:−0.23
- YCCダミー:+0.54
- アップダミー:−0.45
- ダウンダミー:R2=0.99
20年金利:0.08 +0.4
- コールレート:+0.38
- 米長期金利:+0.68
- 米10〜30年金利差:−0.081
- ネットの資金需要:−0.017
- 日銀長期国債買入れGDP比:−0.49
- YCCダミー:+0.53
- アップダミー:−0.50
- ダウンダミー:R2=0.99
日経平均(米国連動モデル):−46513+3.3
- S&P500:+103
- 名目GDP(兆円、4QMA):+66
- 日銀短観中小企業貸出態度DI:−391
- ネットの資金需要(1期ラグ):+2064
- アップダミー:−1951
- ダウンダミー:R2=0.98
ドル円:24−3.5
- 日本のネットの資金需要+家計貯蓄率のトレンドからの乖離(1期ラグ):+0.51
- 米国のネットの資金需要+家計貯蓄率のトレンドからの乖離(1期ラグ):−7.2
- 日本長期金利:+3
- 米長期金利:+3.6
- 米2年金利:+0.71
- ドル円(2QMA、2期ラグ):+9.5
- アップダミー:−6.1
- ダウンダミー:R2=0.97
ユーロドル:0.33 +0.018
- ユーロ圏のネットの資金需要+家計貯蓄率のトレンドからの乖離(1期ラグ):−0.013
- 米国のネットの資金需要+家計貯蓄率のトレンドからの乖離(1期ラグ):+0.06
- ドイツ長期金利:−0.058
- 米国長期金利:+0.013
- 米国2年金利 +0.71
- ユーロドル(2期ラグ):+0.095
- アップダミー:−0.13
- ダウンダミー:R2=0.94
ユーロ円=ドル円の推計値 × ユーロドルの推計値
- 米国長期金利:2.4 +0.35
- 米国2年金利:−0.12
- 米国家計貯蓄率(2QMA、2期ラグ:−0.32
- ユーロ圏経常収支(4QMA、2期ラグ):+0.41
- 5Y5Yインフレ期待:−0.005
- 米国マネタリーベース前年差(GDP%):+0.54
- アップダミー:− 0.72
- ダウンダミー:R2=0.97
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