「KPI設計を任されたが手順が分からない」……。こうした悩みを持つ担当者は多いのではないでしょうか。誤った設計では成果につながらないばかりか、社員のモチベーション低下などの弊害が出る恐れもあります。本記事では、KPIのそもそもの定義や目的、そして設計の具体的な方法とモデルケースについてまとめました。

目次

  1. KPIとは
  2. KPIを設定する目的とメリット
  3. KPI設計を行うための考え方
  4. KPI設計の手順3ステップ
  5. 3つのモデルケースを紹介
  6. KPI設計の質を高めるためのチェックリスト10項目
  7. KPI管理とは?必要な4つの理由
  8. KPI管理を成功させるためのポイント6つ
  9. まとめ

KPIとは

KPIとは、Key Performance Indicators(重要業績評価指標)のことで、組織や個人などの業績を評価・管理するための指標です。

企業や組織にはビジョンがあり、実現するために全社的な目標を掲げます。その目標を達成するまでの道のりを要素分解し、各部署やグループ、または個人の行動レベルにまで落とし込んだ具体的な目標がKPIです。企業だけでなく、政府や地方自治体、教育機関などにおいても幅広く活用されています。

KPIの起源は、20世紀初頭に米デュポン社で行われた利益率の分析にさかのぼります。その後、1992年に米ハーバード・ビジネス・レビュー誌に寄稿されたマネジメント手法であるBSC(バランスト・スコア・カード)によって注目され、今では世界中で利用されています。

参考:大西淳也,福元渉「KPIについての論点の整理」財務省財務総合政策研究所,2016年2月
奥居正樹「
バランスト・スコアカードを用いた大学評価指標の策定とそれを支援する情報システムの構築」『大学教育実践ジャーナル 第3号』愛媛大学 教育・学生支援機構,2005年3月

次に述べるKGIやKFSに比べ、KPIは細かく具体的なプロセスを表しています。現場の従業員にとって身近で、普段の業務において意識しやすい指標といえるでしょう。組織の目標達成を足元から支える重要な項目です。

KGIとは

KGIとは、Key Goal Indicator(重要目標達成指標)のことで、組織全体の最終目標を数値化したものです。組織のビジョンに基づく全社的な目標ともいえます。

KGIは企業単位といった組織全体で設定することもあれば、営業などの部門ごとやプロジェクトごとに設定することもあります。

KFSとは

KFSとは、Key Factor for Success(重要成功要因)のことで、組織や事業を成功に導くための要素です。一般的に、KGIやKPIといった定量的な数値ではなく、定性的な言葉で述べられます。

KFSと似た用語に、CSF(Critical Success Factor)があります。日本語訳は「重要成功要因」で、KFSと意味するところも同じです。

KGIとKFS、KPIの関係

KGIとKFS、KPIの関係

組織の目標は、一つのKGIに対していくつものKPIが作られるピラミッド構造になっているのが一般的です。

KGIは組織が向かうゴールであり、KPIはそのゴールまでのプロセスを数値化したものといえます。少し乱暴ですが、前者は戦略、後者は戦術と表現するとイメージしやすいかもしれません。

一方、ゴールからプロセスへとブレイクダウンする際に必要なのがKFSです。

「KGIを達成するために組織が資源を集中するべきものは何か」を述べたのがKFS、そのKFSに基づき具体的な行動目標を測定可能な数値で表したものがKPIです。

つまり、次のような流れで進めます。

KGI→KFS→KPI

例えば、会社のビジョンが業界のリーディングカンパニーになることだとします。数年後に業界1位になるためには、売上高を前年度比で50%増加させる必要があります。この全社目標がKGIです。

ここで、売上高を50%増やすために必要な要素を洗い出すことでKFSを設定します。例えば、以下のようなものが挙げられます。

・新規顧客の増加
・リピート率の向上
・客単価の向上

KFSのそれぞれに数値目標を設定することで、KPIを策定します。

【新規顧客の増加】
・電話アポの件数を30%増やす
・成約率を10%上げる
・ホームページからの問い合わせ数を20%増やす

【リピート率の向上】
・既存顧客への提案数を10%増やす

【客単価の向上】
・高単価(50万円以上)商材の提案数を10%増やす
・提案の承認率を20%増やす

このような目標を設定し、検証することで達成のプロセスを明確にしていくことがKPIの役割です。

KPIを設定する目的とメリット

上記の例から分かるように、KPIを設定するためには、リピート率や客単価など組織におけるさまざまな数値を集めて分析し、ビジョンに沿って組み立てなければなりません。労力をかけて行うのは、次のような目的やメリットがあるからです。

目標達成までの進捗や状況が見える化される

KPIを設定する目的の一つは、社員が向かう方向と行動プロセスを共有することにあります。

組織にとって、事業の進め方に共通認識を持つことは大切です。各人がどのような取り組みをしているのかをお互いに確認できるようにすることで、無駄なコミュニケーションをなくし、チームワークを発揮できます。

また、目標に向かうプロセスを数値化することで、セクション間や個人間で進捗状況を共有できます。数字は万国共通の言語なので、定性的な目標に比べて認識のズレが生じにくいという特長があります。

定量的評価は公平である

KPIの設定は人事評価の観点からもメリットがあります。

経営コンサルティング会社の識学が2021年に行った調査(※)によると、人事評価制度における不満要因の1位は「基準の不明確さ(48.3%)」でした。

※「人事評価の“モヤモヤ”に関する調査」識学,プレスリリース,2021年9月21日

人事査定や昇進における評価基準の中心に定性的なものを置いてしてしまうと、どうしても偏りが出てしまいます。なぜなら、評価者の感情や思い込みが反映されてしまうからです。いかに真面目で厳密な上司でも、全く自身の感情を入れずに評価することは難しいでしょうし、評価される部下の捉え方も人それぞれです。

定量的な指標であるKPIは、このような上司の好き嫌いや思い込みによる不公平な評価を排除できます。公平な人事評価によって従業員満足度が上がれば、モチベーションアップや離職率の低下が期待できるでしょう。

一方、定量的な評価を優先し過ぎると、チームワークやモラルに欠ける振る舞いをする社員が現れる可能性があります。数字が一人歩きして、「達成のためなら手段を問わない」と考える社員が増える可能性もあるため、人物評価などの定性的な基準の併用が望まれます。

社員の成長促進に役立つ

KPIを設定することで、社員個人の目標を明確化できます。すると、社員の成長を促す効果があります。

米心理学者のロックらが唱える目標設定理論の研究は、目標を明確化することでパフォーマンスを向上できることを示しています。

目標が明確(Goal specificity)なほうが、目標が曖昧な場合に比べて高いパフォーマンスを上げやすい(Locke and Latham,1990)。「全力を尽くして頑張れ」と言われるよりも、「A商品の売上を前年比で20%伸ばせ」と言われた方が目標の達成がイメージしやすいからだ。

引用:坂入誠,林洋一郎「困難な目標と目標へのコミットメントが従業員のパフォーマンスに与える影響」慶應義塾大学経営管理研究科,2015年

KPIで描く目標遂行プロセスは、社員の成長プロセスをも示しているのかもしれません。

ただし、目標の定量化には注意点もあります。目標を大幅に超えるハイパフォーマンスを求められることに対する心理的抑制です。社員は次期の目標がさらに上がることを恐れて、「ギリギリ達成」でよしとするかもしれません。これをラチェット効果といいます。

参考:鶴光太郎「No.7 目標定量化の落とし穴」経済産業研究所,2002年6月6日

ラチェット効果の対策としては、前項と同様に定性的評価を取り入れたり、数値目標の達成度と給与の関連を高めたりすることが挙げられます。

KPI設計を行うための考え方

初めに基本的な考え方をお伝えするので、ポイントを押さえてください。

設計に必要な3大要素

まず、KPIを設計する上で欠かせない3つの要素を紹介します。

①定量的であるかどうか

これまでに述べてきた通り、KPIの特徴は目標を数値で表していることです。「◯万円」「◯人」「◯%」「◯回」などと、定量的な数字に落とし込みましょう。

定量化することで達成度や進捗率を「◯%」と明確に表現でき、一目瞭然となります。

②達成に向けて現実味があるか

達成不可能な目標を立ててしまうと、社員はモチベーションを維持できません。また、達成できなかった場合の原因を分析して次に生かすことも難しくなります。

達成手段を社員が具体的にイメージできて期待感が湧くよう、現実的なKPIを設計する必要があります。難し過ぎず、かといって簡単には達成できない目標を設定するよう心掛けてください。

③関連性があるか

前述の通り、KPIは組織のビジョンに基づくKGIから導き出すものです。両者の間にはKFSがあり、3つはそれぞれ論理的につながっていなければなりません。

仮にKPIを達成しても、もし設計時点でKGIとの関連性に乏しかったら、当然KGIを達成できる可能性は低くなります。

最終目標は、あくまで組織のビジョンであることを忘れないようにしましょう。

SMARTを意識しよう

SMART

KPIには期限を設けることも大切です。ほとんどの組織が、年度や半期などで区切って設定していることでしょうが、短い期間で段階的に期限を設定すると、よりプロセスが明確になります。

これまでに述べたポイントは、目標設定の枠組みである"SMART"に集約できます。SMARTとは次の頭文字をとったものです。覚えておきましょう。

・Specific(具体的に)
・Measurable(測定可能な)
・Achievable(達成可能な)
・Related(経営目標に関連した)
・Time-bound(時間制約がある)

一度設計して終わりではない

PDCAサイクル

KPIは一度設計して終わり、ではありません。達成できなかった場合、その要因を分析して新たに設計する必要があります。いわゆるPDCAサイクルです。

PDCAについてはご存じの方も多いかもしれません。念のために解説すると、品質管理や組織マネジメントのための枠組みであり、次の4つの英単語の頭文字を取ってPDCAと呼ばれています。

・Plan(計画)
・Do(実行)
・Check(評価)
・Action(改善)

KPI設計は、このうちのPlanに当たります。Planに沿って業務を進め(Do)、設定した期間ごとに結果を評価し(Check)、課題を抽出して改善策を検討し(Action)、次のPlanに生かします。

実行し、適切に評価し、分析するためには大量のタスク管理が必要となります。ExcelやGoogleスプレッドシートといった表計算ソフトでも不可能ではありませんが、効率的に運用するためにはタスク管理ツールやプロジェクト管理ツールなどの専用ツールを使うとよいでしょう。

KPI設計の手順3ステップ

KPI設計の手順

STEP①:KGIを決定する

KGIは、設計期間における組織の最終目標を掲げます。つまり、会社のビジョンの実現のために必要な目標です。

売上高や営業利益、資本利益率など財務諸表上の数値や、取引件数などの営業指標がよく使われます。

STEP②:KFSを決定する

KFSは、KGIを達成するための構成要素を洗い出し、重要なものを抽出して決定します。KGIとして掲げた数値と現状のギャップを明らかにする作業のことです。そして、それらのギャップを埋めるためにどのようなプロセスが必要かを、経営者や各部門の責任者がアイデアを出し合うとよいでしょう。

例えばKGIが「売上高20%アップ」で、現状とのギャップは「新規顧客が少ない」「客単価が低い」だとします。すると、「新規顧客の獲得」「客単価の向上」がKFSとなります。

マーケティングや経営管理のフレームワークを使って経営状況を分析すると、効率的に議論が進みます。例えば3C分析やSWOT分析、PEST分析などです。

特に、構成要素を外部要因とコントロールしやすい内部要因に分け、後者を中心に考えると、現実的な設計がしやすくなります。

STEP③:KPIを決定する

KPIは、KFSを数値化することによって決定します。現状分かっているデータから逆算して、コントロールできる部分を目標とします。

KFSが「新規顧客の獲得」の場合は、どうなるでしょうか。例えば、前期における営業活動のデータが次の通りだったとします。 

  • 電話アポ率:2%
  • 成約率:20%
  • 年間成約件数:40件
  • 年間電話件数:1万件

競合他社や社内の業務体制を調査したところ、アポ率と成約率をこれ以上伸ばすのは難しいことが分かりました。この場合、年間電話件数を20%増やして1万2,000件にすれば、KGIの売上高20%アップを達成できます。この「電話件数1万2,000件(20%増)」がKPIに該当します。

もし、現時点で1万1,000件が限界だと分かったら、新規顧客以外にも客単価アップなど別のKFSを考えてみなければなりません。こうして複数のKPIが決まっていきます。

3つのモデルケースを紹介

ここでは、3つのモデルケースを例にして、どのようなKPIが考えられるのか紹介します。

(1)インサイドセールス

インサイドセールスの代表的なKPI

インサイドセールスは、電話やメール、オンライン会議ツールを使って直接訪問することなく新規の見込み客へアプローチする営業手法で、「内勤営業」とも呼ばれます。客先訪問・商談や受注、クロージング後のフォローなどを担当するフィールドセールスへの橋渡しの役割を担います。

営業活動には定量化できる部分が多く、次のような項目がKPIとして設定されます。

コール数

掛けた電話の件数のことで、架電数とも言います。例えば「1日100件」といったように設定します。あまり無理な数値を設定してしまうと、質よりも量を追って無駄な架電をしてしまうことになりかねないので注意が必要です。

メール送付数

メールを送った数のことで、TwitterやInstagramといったSNSのDM(ダイレクトメッセージ)を活用することもあります。1対1のメールのやり取りだけでなく、メールマガジンも対象です。ここから派生して、メール開封率や返信率などもKPIになります。

コンタクト数

コールやメール送付のうち、実際に担当者に接触できた回数です。特に決裁権限者にアプローチできた場合は、キーマン・コンタクト数として数えることもあります。

ここまでの3項目をまとめて「リード数(見込み顧客の数)」とも呼びます。

商談獲得数

実際にアポイントが取れた数を指します。商談獲得数をリード数で割ると商談化率が算出され、これも重要なKPIの項目の一つです。商談化率が高いほど、効率的な営業を行っていることになります。

KPI設計において商談獲得数を増やす場合、「リード数を増やす」と「商談化率を高める」の2通りのアプローチが考えられます。

リードからヒアリングできた数

インサイドセールスではリード(見込み顧客)へのヒアリングが重要です。ここでニーズや課題を聞き出せれば顧客に合った商材を提案しやすく、商談化率や商談後の受注率アップが期待できます。あらかじめヒアリング項目を設定しておくとスムーズです。項目としては自社商品への印象や顧客の課題、予算感などが挙げられます。

設定した商談の案件化率

アポイントが取れた商談のうち、受注可能性がある案件として接触を続けることになった割合です。

商談はフィールドセールスの領域であるため、インサイドセールスのKPIには当たらないと思われるかもしれません。しかし、リードで十分にヒアリングを行ってニーズのある顧客に案内することで、案件化率を上げることは可能です。そのため、インサイドセールスのKPIとして設定されることがあります。

(2)自社メディア運営

製造現場の代表的なKPI

自社でWEBメディアを運営し、コンテンツから問い合わせや注文につなげるマーケティングが盛んに行われています。PDCAを回して成果を生み出していくためには、KPI設計が重要です。

特にここでは、自社が保有するWEBサイトの記事で情報発信を行う「狭義のオウンドメディア」(「広義のオウンドメディア」はSNSなどを含む自社のメディア全てを指します)を想定し、KPIの例を挙げます。

CV(コンバージョン)

CVは端的に言うと「成果」です。WEBメディア運営に際しての目的を達成できた数をKPIとします。

例えば、目的が「見込み顧客リストを獲得する」ことであり、そのために運営メディアから資料をダウンロードしてもらう仕組みの場合、「資料のダウンロード」がCVです。そのため、この場合は「ダウンロード数」がKPIになります。

CVは、プロジェクトの最終目標としてKGIに設定されることもあります。

UU(ユニークユーザー数)

UUはメディアの利用者数のことで、メディアの認知度を測る大切な指標です。同じ人が一定期間に何度も訪れていた場合、重複を除いて一人として数えます。ちなみに「延べ利用者数」は、セッション数と呼ばれます。

PV(ページビュー)

PVは、メディア全体または特定の記事の閲覧数を指します。UUと違って、同じ人であるかどうかを問いません。例えば測定期間を1日として、ある人が朝に3ページ、夜に5ページ見たとすると、PV数は3+5=8、セッション数は2、UU数は1となります。

CV数をPVで割ると、「閲覧されたページ数のうちCVに至った割合」が分かります。これをCV率と呼び、これも重要な指標としてKPIになることがあります。

SNSでのシェア数

一般的にWEBメディアは、インターネット検索を経由して閲覧されることを想定して作られますが、SNSでシェアされることによる影響も無視できません。そのため、TwitterやInstagram、FacebookなどのSNSにおける「いいね」や「リツイート」数をKPIに設定することがあります。

ただし、SNSでのシェアは好意的なものばかりではなく、中には自社や商品に対して攻撃的な論調になることもあります。SNSで急激に拡散されている場合は、このような「炎上」の可能性を視野に入れて確認が必要です。

コンテンツの配信本数(行動指標)

他の指標と比べてコントロールしやすいのは、行動指標であるコンテンツ(記事)の配信本数です。

高品質な記事を多く配信することは、インターネット検索からのUUおよびPVの増加に大きく貢献します。基本的には配信本数を増やすほど、CVも増加するはずです。

(3)製造現場

オウンドメディアの代表的なKPI

KPIはマーケティングだけでなく、製造現場でも活用されています。

改善提案件数

製造業では、現場からの改善提案がコスト削減や生産の効率化、付加価値化などに生かされることが少なくありません。その提案件数をKPIとすることで、自社および従業員の成長を促すこともできます。

多能工の比率

多能工とは、一人の従業員が製造ラインにおける複数の工程を担当することです。多能工化には、従業員の能力向上や、全体の業務平準化による従業員の負担の軽減、繁忙期・繁忙部署における業務処理能力向上といった効果があります。
参考:中小企業庁「第2部 深刻化する人手不足と中小企業の生産性革命」『2018年版中小企業白書』

上記のような効果を得たいならば、多能工の比率をKPIとして、増やしていくことが考えられます。

一人あたり生産高

一人あたり生産高が高いほど、効率的に製造していることになります。継続して管理することで、人員管理や生産計画の策定にも役立ちます。

事故発生率

どの製造現場でも事故発生件数はゼロであることが望まれますが、なかなかそうはいかない企業がほとんどでしょう。事故発生率は、従業員を守り、安定した稼働を続けるために大切な指標です。安全標語などで事故ゼロを掲げるだけでなく、KPIとして要因をしっかり分析することで着実に事故を減らしていけるでしょう。

不良率

生産性を高めるには、製品として使えない不良品の割合を下げて「歩留まり」を向上させることが重要です。また、不良品が混入したまま出荷してしまうと、企業の信頼を大きく損ねてしまいます。不良率を測定し、減らしていくことが重要です。

稼働率・可動率

稼働率とは、理論上の生産可能高に対して実際にどれくらい製造したかという実績の割合を表したものです。注文数や歩留まりの影響を受けるので、現場だけではなく営業部門との関連性も高い指標と言えます。

可動率という指標もあります。これは理論上の設備稼働時間のうち、実際に操業した時間の割合を指します。設備やメンテナンスの優秀さを表すものであり、どちらかというと製造現場寄りの指標です。

KPI設計の質を高めるためのチェックリスト10項目

KPI設計のポイントを解説 KPI管理を成功させるためには何が必要か
(画像=santima.studio/stock.adobe.com)

設計を終えたら、運用を始める前に以下のポイントをチェックしてください。

チェック項目①:企業戦略との整合性

組織全体の戦略と共存し、長期的・継続的に数値管理できるかどうか。

チェック項目②:結果が業績と連動する

KGI・KFSと整合性がとれており、KPIを達成すると業績が向上するようになっているか。

チェック項目③:シンプルかつ具体的で共有しやすい

従業員同士の認識に齟齬がないよう、誰にでも分かるシンプルな言葉で表現されているか。

チェック項目④:多面的でバランスが取れている

特定の部署や役員、声の大きい人の独りよがりになっていないか。その場しのぎで本末転倒な施策になっていないか。

チェック項目⑤:責任の所在が明確になっている

どの部門の誰が担当するのか、問題が起こったときに責任を持って対応する人物が誰なのか明確になっているか。

チェック項目⑥:努力が報われるKPIである

自分でコントロールできる数値か。努力によって達成可能か。

チェック項目⑦:定量で測定可能

継続的に数値による測定が可能か。

チェック項目⑧:期限が定められている

年度や半期、四半期、あるいは1ヵ月など、測定の対象となる期間が定められているか。

チェック項目⑨:測定の対象が明確である

何をどうやって測定するか明確であるか。

チェック項目⑩:PDCAの一部に組み込まれている

測定結果を分析し、改善する業務フローになっているか。

KPI管理とは?必要な4つの理由

ここからはKPIによって業績を評価・管理する意義について述べます。

設定したKPIに関する数値をタイムリーに測定・分析、必要に応じて改善することをKPI管理と言います。管理が必要である理由には次の4つがあります。

①ビジネス環境が多様化、複雑化している

ICT化やビジネスモデルの多様化などにより、ビジネスは複雑化しています。事業によっては、数ヵ月前に立てた目標が意味をなさなくなっている可能性もあります。KPIを意識して管理していれば、必要に応じて軌道修正ができます。

②進捗状況の正確な把握と共有

「現時点でKPIをどの程度満たしているのか」、「このままで達成できるのか」を把握することで、達成困難な場合には対策を講じることができます。チームメンバーと共有することでフォローし合ったり、対策の重複を防いだりすることもできるでしょう。

③人材不足への対応

どのビジネス現場でも、優秀で自社に合った人材の確保は簡単ではありません。そのため、社員の育成が重要な意味を持ちます。

KPI管理は人事評価ツールでもあり、社員の成長促進材料という一面もあります。部下の様子を見ながらフォローすることで、チームワークの醸成と育成を同時に行い、優秀で「辞めない」社員を増やせる可能性があります。

④人材の多様化

性別や国籍などにとらわれない人材の多様化が、各方面で取り組まれています。

KPIは誰にでも分かりやすく明確な指標を持てるため、業務の分担を適切に行いやすいというメリットがあります。多様な人材の力を隅々まで生かすために、KPI管理は有効です。

KPI管理を成功させるためのポイント6つ

①簡潔かつ必要最小限にする

KPIはあまり複雑にすると、何をすればよいのか分かりにくくなり逆効果です。一つのKFSに対して設定するKPIは優先度の高いものに絞るほか、算出方法や表現もできるだけシンプルにする必要があります。

②定量評価だけでなく「質」にも注目する

定量的な指標であることのメリットは大きいのですが、それだけだとスタンドプレーに走る社員が出てくるかもしれません。人事評価においては、人物評価のような定性的な評価項目も設けることをおすすめします。

③有用なITツールを積極的に活用する

数値をタイムリーに把握したり、タスク管理を行ったりするためには、大量のデータが必要です。専用のITツールを利用すると効率的です。

④担当者、責任の所在を明確にする

進捗を管理し、結果にコミットするのは誰なのかを明確にします。

⑤優先順位を明確にする

KPIを複数設定した時は、優先順位が必要です。最終目標であるKGIへの影響が大きいものから着手するようにしましょう。

⑥KPIツリーを作成して図式化する

KPIは、まずKGIから複数のKFSを創出し、そこから導き出すようにして設計します。KGIを頂点としたピラミッド構造です。これを横に倒すと、KGI から右に向かって広がるツリー構造ともいえます。このツリーを作成すると、抜けやモレが発生しにくくなります。

まとめ

KPIは組織のビジョンをよく理解した上でデータに基づいて論理的に設計し、継続して管理していく必要があります。そうすることで、組織全体を目標達成に導いていけるでしょう。まずは、KPI設計にあたって前提となるKGIを確認してみてください。本記事を最初から最後までご覧になったあなたは、設計のイメージが湧いてくるかもしれません。