本記事は、木村洸士氏の著書『不動産投資は組み合わせが9割』(合同フォレスト)の中から一部を抜粋・編集しています。

ワークスタイル,ビジネスシーン
(画像=metamorworks/stock.adobe.com)

ワークスタイルの多様化で「郊外戸建て」の需要が急増

トライアングル不動産投資における【STEP1】として、郊外戸建ての購入に関する基礎知識を紹介しましょう(図2–1参照)。

不動産投資は組み合わせが9割
(画像=不動産投資は組み合わせが9割)

【STEP1】時点での目標は、100万〜300万円程度の戸建て物件を購入し、賃貸に出すことで、「月5万円程度、経費を引いても年間で50万円の利益」と「(不動産という)資産を手に入れる」ことです。

まずは戸建て物件を巡る背景部分について見ていきます。

不動産投資について考えるとき、よく不安要素として挙げられているのが「空室率の上昇」です。たしかに日本では、少子化にともなう人口減少が進んでいることで、賃貸物件の空室率は増加傾向にあると想定されます。ただ、実態を見てみると、全分野において、そうなっているとは言い切れません。

とくに戸建てに関しては、賃貸需要が伸びています。もともと戸建ては、購入して住んでいる人が多く、賃貸物件として出されているものは限られます。しかし近年の地方回帰の風潮によって、需要が伸びているのです。

また、賃貸として出すことを前提にした戸建てもまだ少なく、今後はより選ばれやすくなると思われます。

メインのターゲット層であるファミリーを考えてみると分かります。現代のように、社会情勢が不安定な時代においては、積極的に住宅ローンを組んで自宅を購入しようという発想にはなりにくいと思われます。とくにサラリーマンの方は、会社の経営が傾くことも考えられ、賃貸需要が伸びやすいです。

加えて、定期的に引っ越ししなければならない人は、もともと自宅を購入しようとは考えにくいでしょう。オンラインやテレワークの活用も進んでいますが、だからこそ地方に移住し、状況が変われば都心に戻るという人もいるかと思います。ワークスタイルの多様化によって、賃貸需要は今後も堅調に推移すると予想されます。

たとえば「すむたす社」が2020年に行った調査によると、居住地について「郊外でも良い」と答えた人の割合は、全体の48%にのぼります。また、都市部への引っ越しニーズ(21%)よりも、都市部から郊外への引っ越しニーズ(29%)の方が上回っており、住まい選びの方向性が郊外へシフトしていることが分かります。

とくに地方では、戸建てが選ばれる傾向があります。もともと集合住宅が少ないということもありますが、せっかく土地の価格が安いところに住むのなら、広い敷地の大きな住宅に住みたいと考える人も多いでしょう。子育て世帯であればなおさらです。そこで、地方にある賃貸の戸建てに住みたいという人が増えているのです。

それまで都市部に住んできた人は、集合住宅における騒音やペットの問題、あるいは布団を干せなかったり、庭がなかったりする制約を受けてきました。それらの問題がクリアされる戸建ては、地方移住のメリットにもなります。今後は、賃貸として貸し出すことを考え、投資する人も増えていくと思われます。

このように、地方や郊外の戸建てにおける賃貸需要は見通しが良いのですが、一方、空き家が増えていると言われるのはなぜでしょうか。その理由は、「相続などで引き継いだ後、手を入れていない〝戸建て〞物件が増えている」のと「東京などの都市部で〝(賃貸用)集合住宅〞の空きが増加傾向にある」ためです。

総務省の調査でも、空き家とされる戸建てのうち、賃貸用の住宅はわずか7.1%、それ以外の空き家の79.1%が「その他住宅」(放置されたままの住宅)であることからも、「空き家の増加」には、賃貸用の戸建てはほぼ該当していないことが分かります。

いずれの現象も、マイナスどころかむしろプラスの事象です。空き家が増えているということは、より良い条件で購入できる物件が多くなっていることを意味します。地方や郊外の戸建てが投資対象として有力であることは間違いありません(もちろん、過疎化エリアなどでは賃貸が難しいため、エリア選定は必須です)。

「いかに安く買えるか」が、その後を左右する理由

住宅ローン,説明
(画像=PaeGAG/stock.adobe.com)

郊外における戸建ての購入は、できるだけ安く物件を購入できるかどうかにかかっています。その点、どのくらいの価格で購入すれば、どのようなシミュレーションになるのかを把握しておくことが大事です。その前提知識がなければ、「この場所ならこの価格でもいいだろう」などと安易に考えてしまい、結果的に、その後の投資が厳しくなりかねません。

たとえば、600万円で売りに出されていた物件があるとします。アパートやマンションへの投資を検討していた方からすれば、600万円でも十分に安いと思われるかもしれません。しかし、それを実際に貸し出した場合の利回りで見るとどうでしょうか。できれば、そうした発想を瞬時に持てるようになるのがベストです。

物件の維持管理にかかる細かいコスト(諸経費や税金など)を加味しない「表面利回り(グロス)」であれば、計算はとても簡単です。具体的には次の計算式で求められます。

  • 表面利回り:年間の家賃収入÷物件の購入価格×100

ちなみに、表面利回りに諸経費や税金、融資を受けている場合は金利なども加えたのが「実質利回り(ネット)」ですが、これらの要素は買い方・状況に依存するために、不動産売買の際は、表面利回りが主要な指標になっています。

たとえば、600万円で購入した物件を家賃5万円で貸し出した場合、年間の家賃は60万円。表面利回りは10%です(年間家賃収入60万円÷購入価格600万円×100)。

利息が「10%」と考えれば、それでいいかとなりますが、築年数も古いため、運営経費のことも考えると、少し物足りません。もし400万円まで値切れたらどうなるでしょうか。利回りは15%となり、かなり有利な条件で不動産投資ができることとなります。

さらに、300万円まで値切れた場合を考えてみましょう。半値での購入となりますが、そこまで値切れる物件の場合は、その分修繕が必要な状態であることが多いため、そのまま賃貸に出すのは難しいと想定されます。そこで、100万円分をリフォーム費用に回すことで貸せた場合、その100万円も含めた修繕後利回りは15%。物件は見栄えも綺麗です。このように、どのくらいの価格で物件を購入できるか、修繕費をいくらで済ますかによって、その後は大きく左右されます。

また、賃貸に出す場合だけでなく、売却時のことを考えても同様です。600万円、利回り10%で売り出されていた物件であれば、同じ価格で売却できる可能性があります。あらかじめ価格交渉を経て300万円で購入できていれば、売却時には300万円の利益が得られるかもしれないのです。このように、売却益も得やすいのが郊外戸建ての魅力です。

投資に慣れている方ほど、物件購入価格を抑えながら、修繕などを経てより良い条件をつくり出しています。物件価格を下げつつ、さらに修繕費も抑えられれば、利回りはどんどん良くなっていきます。もちろん、そこには一定のスキルや経験が必要なのですが、そもそもの土台として、地方や郊外の戸建ては条件が良いのです。

このように、トライアングル不動産投資のファーストステップである戸建ての購入は、いかに物件を安く購入できるかにかかっています。アパートやマンションなどの集合住宅と比較すると、価格がそれほど高額ではないため疎かになりがちですが、100万円の違いが大きな利回りの差となります。

その点を踏まえて、いかに物件を安く購入できるかを検討していかなければなりません。もちろん無理に買い叩く必要はないのですが、できる範囲で交渉を行ったり、あるいは安く購入できる条件の物件を探したりなど、方法を模索することが大切です。少なくとも、タイミングと出会いだけで決めてしまうのは危険です。

よくあるのが、物件自体は安く購入できたけれど、修繕に費用がかかって赤字になってしまうケースです。物件価格を抑えようとしすぎたために、貸し出すまでの費用がかさんでしまうケースは少なくありません。やはり相場を見て、その水準から大きく離れない価格で購入しつつ、修繕費も頭に入れておくことが求められます。

目標は100万〜300万円! 表面利回り20%以上を実現

株で得られる儲けの平均は?投資で成功するための、無理のない目標設定を考える
(画像=Vitalii Vodolazskyi/stock.adobe.com)

郊外で購入する戸建て物件の価格は、「100万〜300万円」がひとつの目安となります。もちろん、運用時の利回りや売却益のことを考えると、投資価格は少なければ少ないほど望ましく、安く買えれば表面利回り20%以上も可能となります。あとは、修繕費がどのくらいかかるかによって、具体的な数字が決まってきます。

たとえば、購入価格270万円の物件を家賃5万円で貸し出した場合、年間の家賃収入は60万円になるため、表面利回りは20%を超えてきます。もちろん、どのような修繕をするのかによって実際の数字は変わってくるのですが、物件の比較検討段階ではそこまで考える必要はありません。まずは、表面利回りをざっと計算しておけば大丈夫です。

より細かく見ておきたい場合は、たとえばよほど大きな修繕が必要でなければ、100万円をひとつの基準として修繕費を見込み、「270万円+100万円=370万円」の物件として計算しておきましょう。あくまでも概算になりますが、利回りをすぐに計算できるようになると、購入物件の精査が進みやすくなります。重要なのは、イメージをつかむことです。

ちなみに修繕費やリフォームの価格に関しても、経験やテクニック次第で下げることができます。知り合いのリフォーム業者や大工さんに頼むことで、より安価に望ましい条件で修繕を実施してもらえるためです。この点はまさに、不動産投資家としての経験や知見、さらには人脈によって左右されるポイントとなります。

もちろん、そのような経験や人脈がなかったとしても、100万円をベースに修繕費を加味しながら、20%前後の利回りが得られる物件を探していくのが最初のステップです。物件価格200万円、修繕費100万円、家賃5万円で表面利回りは20%です。これらの数字を目安に、まずは物件の購入を検討してみましょう。

実際に探してみるとわかりますが、100万〜300万円規模の物件は意外にたくさんあります。中にはインターネットの情報サイトなどには掲載されていないものもあり、現地の不動産会社などから情報を得る必要もあります。地域によっては、知人や友人などから紹介してもらえるものもあり、可能性は幅広く存在しています。

いずれにしても、条件に合う戸建てを探すのは難しくありません。中には、100万円以下の物件、それこそ50万円や30万円で購入している人もいるほどです。もちろんこういった価格の物件は一定の修繕が必要になるため、経験者でないと難しいのですが、そのような物件もあるということは、それだけ魅力的な市場であることが想像できるかと思います。

また価格面だけでなく、条件面でも有利な点があります。それは、積極的に手放したいと考えている人が多い、ということです。とくに戸建ての場合、居住用として購入(あるいは建築)した人から相続などで受け継いでいるケースが多いのです。そのため、固定資産税や管理の煩雑さから、早く手放したいと考えている人が少なくありません。

とくに近年では、高齢化が進むことによって、「すぐに手放したい」「安くてもいいから売りたい」という人が後を絶ちません。このような動向は、今後もしばらく続いていくと予想されますので、投資初心者の方であっても、希望する物件をより良い条件で購入しやすくなっています。戸建て投資としては、まさにチャンスです。

売りたい人が増えれば増えるほど、交渉もやりやすくなります。急いで現金化したいという人がいれば、相場よりもはるかに安く、良い物件を購入できるかもしれません。もちろん、良い物件は探さなければ見つかりませんが、エリアを決めてじっくりと精査すれば、100万〜300万円程度の戸建てを見つけられるはずです。

=不動産投資は組み合わせが9割
木村洸士
さくらいふ株式会社代表取締役/「神・大家さん倶楽部」講師
1981年、千葉県千葉市生まれ。千葉大学工学部卒業
賃貸経営歴12年。アパート・戸建て合計で24棟経験。家賃収入年5,000万円、利益年2,000万円を実現。
賃貸経営講師業、障がい者グループホーム経営など、3事業4社を経営。
学生時代は勉強もせず、夜遅くまでゲームばかりしていたが、その後学業に一念発起し、県内難関高校に入学。大学受験にも精力を傾け、千葉大学へ入学。卒業後は大手企業でSEになるも、自分のキャパシティーを超えて働き続けた結果、心身の疲弊で会社を休みがちになり、将来の不安に苛まれ、老後資産の不安を実感する。
ある日、書籍で不動産投資を知り、実践。試行錯誤の末、10年かけて新築/中古アパート・戸建てを24棟購入し、賃貸経営業として独立。
2019年、障がい者グループホーム経営を開始し、福祉の仕事に携わるという夢を実現。同年「神・大家さん倶楽部」を創設、講師活動を開始。「トライアングル不動産投資」の実践によって、収益を積み上げる受講生を多数輩出。

※画像をクリックするとAmazonに飛びます
ZUU online library
(※画像をクリックするとZUU online libraryに飛びます)