岸田首相が内閣の目玉政策として掲げる「スタートアップ育成」だが、現状では米国だけでなく、中国にも大きく水を開けられている。さまざまな規制の壁が立ちはだかるだけではなく、スタートアップを取り巻く日本の市場環境にもその育成を阻む問題が数多く存在するのだ。
2022年8月10日に誕生した第二次岸田改造内閣。直前に安倍晋三元首相が襲撃されて死亡した他、新型コロナウイルスの蔓延やウクライナ危機、台湾をめぐる米中関係の緊張、そして国際的な物価高など政策課題が山積する中で、岸田文雄首相は「数十年に一度とも言われる難局を突破するため」の政策を断行するとぶち上げた。
岸田首相は、改造内閣の発足に当たって「防衛力の抜本強化」「経済安全保障推進法を実行」など5つの重要政策を掲げた。中でも注目されたのは、自ら「最重要課題」と位置付けている「新しい資本主義の実現を通じた経済再生」だ。
具体的には、人への投資、スタートアップの育成、グリーントランスフォーメーション、デジタルトランスフォーメーションなどの実現に向けた体制強化を図るとしている。その上で、新しい資本主義の全体調整とスタートアップ担当大臣として、実行計画の取りまとめを担当した山際大志郎衆議院議員を任命した。スタートアップ担当大臣が設置されるのは初めてのことだ。
1月4日の年頭記者会見でも岸田首相は、「戦後の創業期に次ぐ日本の第2創業期を実現するため、本年をスタートアップ創出元年にする」と発言している。岸田首相の肝いり政策であることは間違いない。
しかし大臣を設置すればすべてうまくいくとは限らない。それでなくても、日本のスタートアップ政策はあまりにお寒い状態だと言わざるを得ない。そこで今回は、スタートアップ政策に立ちはだかる壁を見ていくことにする。