音声をペースメーカーにした「速聴速読」
「速聴によって速読力を上げる」には、2つの意味合いがあります。
1つは「速聴速読」という方法のことです。読んで字のごとく、オーディオブックを2倍速、3倍速で聴きながら文章を目で追う方法です。音声がペースメーカーとなり、当然のこと、通常の2倍、3倍の速さで本が読めるようになるわけです。
だったら、紙の本や電子書籍を読まず、オーディオブックだけ聴いていればいいではないか、という当然の疑問も出てくるでしょう。
しかし、耳で音声を聴きながら、目で文章を追うというスタイルのほうが、確実に理解度は増します。音が文字という「形」として認識できるわけですから、より記憶に残りやすいですし、同音異義語などは音で聴くよりも目で見たほうが瞬時に判別できます。
また、速聴速読では、音声という聴覚への情報が脳の聴覚野を刺激し、文字という視覚からの情報が脳の視覚野を刺激します。
脳の異なる2カ所を刺激するので、どちらか一方の刺激を受けているときよりも、脳は活性化します。後に解説しますが、人が情報を受け取る際の認知特性には差があるので、「聴覚だけ」「視覚だけ」という感覚の使い方ではなく、その2つを同時に使ったほうが効率的といえるのです。
こうした相乗効果があるため、私はオーディオブックだけ、紙の本や電子書籍だけ、という読み方よりも、耳と目の両方から情報をインプットする「速聴速読」をオススメしています。
現在市販されているオーディオブックの多くは、図版などを除いてテキストと一緒には販売されていません。したがって速聴速読をするのであれば、オーディオブックと紙の本、あるいは電子書籍もセットで購入することになります。とても贅沢な読書方法ですので、すべての本で実践するのは難しいでしょう。しかし、「分厚いけど、この本だけはしっかり読んで、情報を吸収したい」という特別な本に出会ったときに、ぜひ試してください。
ちなみに、私が速聴を始めたころは、覚えている限りオーディオブックはありませんでした。
当時は成功哲学の教材をメインに速聴していたのですが、病院を経営する立場からマネジメントを勉強したいと思うようになりました。
そこで、ダイヤモンド社で行われたピーター・ドラッカーに関する1年間のプログラムを一期生として受講しました。たしか、企業の社長さんなど5、6人くらいの受講生がいたと思います。そのときにドラッカーの本を何冊かめくってみたのですが、内容が難しくてなかなか読み進めることができませんでした。どうしたものかと酷く悩んだものです。
その後、しばらくしてからのことです。東京でのセミナーでご一緒した「ランチェスター経営」で有名な竹田陽一先生と羽田空港で帰りの便を待っていたときでした。ドラッカーの本やテキストを思うように読み進められないことを竹田先生に相談したのです。
すると、いただいたアドバイスが、非常に冴えていました。
竹田先生は、読みたい本があったら、その文章を知人のアナウンサーに朗読してもらいオーディオブックをつくっているというのです。それを移動の時間などに何回も繰り返し聴いているので、井上先生もぜひやってみないさいと。
今となっては、非常に単純なブレイクスルーと思われるかもしれませんが、当時すでに速聴をしていた私としても目からウロコでした。1冊の朗読で7、8万円をアナウンサーに支払っているとのことだったので(かなり良心的ですよね)、私も竹田先生に紹介してもらいました。おかげで、ドラッカーの経営哲学を速聴速読で何度も繰り返し、吸収することができました。
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