本記事は、佐藤治彦氏の著書『おひとりさまが知って得する、お金の貯め方・増やし方』(ぱる出版)の中から一部を抜粋・編集しています

おひとりさまと投資

おひとりさまが知って得する、お金の貯め方・増やし方
(画像=maru54/stock.adobe.com)

岸田政権になってからにわかに国民に対して投資にもっと積極的になって欲しいという風潮になってきました。すでにご紹介したようにNISAの充実など、投資をする人にはさらに有利な環境が整い始めています。銀行預金の金利がほとんどゼロの時代にお金を増やす方法として投資について目をつむることはできません。

投資をするためには元手が要ります。おひとりさまがどれほどの金融資産があるのかはすでにご紹介しました。つまり、中には十分な元手がある人も少なくありません。投資をしない人は、どうしていいのか分からないという方が多いのではないでしょうか?

実は、私は投資に関する本を出したばかりです。『素人はボロ儲けを狙うのはおやめなさい 安全・安心・確実な投資の教科書』(2022年、扶桑社)。投資のことを話そうと思うと1冊の本が書けてしまうのです。いや、1冊でも語り尽くせたとは思っていません。興味があったら読んでみてください。他の投資の本では書いていないことを山ほど書いています。

さて、私は朝から晩まで、株式市場のことを気にしなくてはいけないような投資のスタイルを皆さんにとって欲しくありません。デイトレーダーなどのスタイルはプロの金融マンと同じように集中して市場に立ち向かう必要があります。お金がドカンと儲かったり、ゲームより数段面白くなってハマってしまう人もいます。しかし、私たちは人生の多くをお金を稼ぐために使いすぎていないでしょうか? たった一度の人生ですから、もっと楽しいこと。はっきり言えば、身体の自由がきき、心も積極的な若いうちに、自分を幸せにするために、上手にお金を使うことがとても下手くそな感じがします。お金を山ほど持ってる人ほど使うのが下手だなあとも思います。1食5万円の食事、1泊10万円のホテル、50万円のスーツ、100万円のカバン、3,000万円の車。そういうものにお金を使う人の多くは何に使っていいのかわからない人かもしれません。

まあ、このことについてはいろいろと議論もあるでしょうから、これくらいにしておきます。ここでお話ししたいのは、金融資産が2,000万円に満たない。不動産は所有していないで、シニア時代が視界に入ってきた。もしくは60代になってしまって、これからの人生のお金が心配だと思ってる人です。

もう少し金融資産があれば、これからもらえる年金と、今しばらく働くつもりでもあるので、何とかなるんだけれどと思ってるのではないでしょうか? きっとそういう人こそ切実に上手に投資をする方法はないだろうか? と思っているのだろうと思うのです。

投資をするのは何が嫌なのでしょうか? それは、わからないからというよりも、損をするのが嫌だからというのが本音でしょう。それでなくても十分ではないのに、さらに減らしてしまったらどうしようと思うのです。いわゆる元本割れですね。おひとりさまで元本割れの経験がある人はどれほどいるでしょうか? 20代から70代までの平均で32.6%です(金融広報中央委員会調べ)。

年代別に見ると、年齢が低いほど元本割れの経験が少ないです。そりゃそうですね。投資をすることのできる期間も短いわけですから。それでも20代で16.7%の、30代は23.7%、40代は28.7%、50代は36.0%、60代は41.3%、70代では50.8%の単身住まいの人が元本割れの経験をしています。収入別に見ると、収入がゼロの人は17.5%が元本割れの経験があると答えています。きっと過去に経験したことなのでしょう。年収が500万円までは30%強、500~750万円の層では46.0%、750~1,000万円の収入がある人は54.9%の人が元本割れの経験があると答えています。

そこそこ年収のある、年齢の高い人ほど投資の経験があり、時には元本割れの経験もしているということになります。

投資の目的はお金を増やすことでしょう。しかし、投資に向いている人は、お金儲けよりも経済や市場の動向に興味がある人です。世の中の動きや流れを知ることが面白くてたまらないという人です。今の市場はAIなども投資に積極的に導入されていますが、それでも市場の流れを作るのは人々の先行きへの思惑です。それは、日々起こる社会の出来事、技術革新、人々のニーズの変化など、いろいろなことが複雑に絡まり合って投資の市場は動いていくのです。

投資は余裕資金で行うのが鉄則です。そのためにも、一度皆さんがこれからもらえる給料や収入と金融資産を使って、これから30年、40年と生きていくとしたら、どれくらいの余裕資金があるのか計算してみるといいでしょう。

例えば、株式であっても金であっても、現物の投資は元本割れすることはあっても、その後で市場が盛り返すこともあります。元本割れ=損失ではないのです。損失が確定するのは、買った時よりも低い価格で売った時だけです。リスクのあるものに投資する判断をしたということは、中長期的に上がっていくと判断したからでしょう。余裕資金で行えば、一時的には元本割れしても慌てることなく、市場が追い風になるまで待つことができるのです。

ただし、1990年代の初頭に日本が経験したバブル経済崩壊のような、社会や経済の仕組みがひっくり返るようなことが起きると、何十年も元本割れしたままになってしまう場合もあります。そんな時には、自分の判断が間違っていたら、それを認める勇気も必要だということもあるのです。

何に投資をしたらいいのかわからないから、投資信託にしてみましたという人がよくいます。これも、先ほど紹介した本で詳しく解説していますが、プロが投資をするのだから利益を出してくれるだろうと期待すると思わぬ火傷をすることが、よくあります。そんな甘えをしないでください。また、株式投資では思わぬことが明るみに出て、例えば、食品会社の製造偽造、自動車会社の安全基準についての噓報告、多くの企業で明らかになる粉飾決算や投資の失敗、企業買収などなど、いつかは盛り返してくれるだろうと思っていても、会社は倒産してしまうと、持ってる株式はゼロになってしまいます。そうなってしまうと紙くず(今は株式は電子化してますからこの表現は古いですね)になってしまうことも忘れないでください。

投資というものは、安く買って高く売ることができれば、儲かります。しかし、実はそれが大変難しいのです。高くなっている時はみんなが欲しい、買いたいと思う時、安くなってる時は、多くの人が嫌気をさして売ってる時です。安い時に買って高く売るということは、みんなが嫌気をさして売ってる時に買い、多くの投資家がこれから上がりそうだと買っている時に売ることを意味します。市場の思惑と逆のことをしなくてはならないことも多いのです。そういう世の中の空気を冷静に判断して売りと買いの判断をしなくてはならない。投資というものは実は孤独でハードボイルドな世界なのです。

おひとりさまが知って得する、お金の貯め方・増やし方
佐藤治彦(さとう・はるひこ)
経済評論家。1961年東京生まれ。慶應義塾大学商学部卒業。東京大学社会情報研究所修了。大学卒業後は、米銀で為替オプションを扱う銀行員として、東京、ロンドン、ニューヨークで勤務した後に、短期の国連ボランティア、経営コンサルタント事務所などを経て独立。放送作家を経て、1992年ごろからテレビ、ラジオ、新聞、雑誌などで、経済やマネーのことを評論、コメントする経済評論家として活動してきた。
著書に、『安心・安全・確実な投資の教科書』『年収300~700万円 普通の人が老後まで安心して暮らすためのお金の話』(以上、扶桑社)、『しあわせとお金の距離について』(晶文社)、『急に仕事を失っても、1年間は困らない貯蓄術』(亜紀書房)、『日経新聞を「早読み」する技術』(PHP 研究所)など多数。また、『海外パックツアーの選び方・楽しみ方』(扶桑社)、『アジア自由旅行』(小学館 島田雅彦氏と共著)など旅行関連の出版物も多い。

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