本記事は、桑原晃弥氏の著書『自己肯定感を高める アドラーの名言』(ぱる出版)の中から一部を抜粋・編集しています。

Mixed race woman relax and breathing fresh air outdoor at sunset
(画像=Rido / stock.adobe.com)

自分にコントロールできないことに
気を病んだり嘆くより、
自分にコントロールできることに
集中しよう。

アドラーの言葉に「雨と闘ったり、負かそうとしてもムダだ。雨と闘って時間を費やすな」があります。

「雨と闘う」と言うと、「一体、こいつは何を言っているんだ」と思うかもしれませんが、アドラーが言っているのは「課題を分離する」という意味です。

たとえば、雨が急に降ってきたら、あなたはどうするでしょうか?

傘を持っていれば、傘をさします。

あるいは、天気予報を調べて、少し待てばやみそうなら雨宿りをするのもいいかもしれません。

すぐに移動しなければならないとすれば、コンビニに寄って傘を買うという選択肢もあります。

ものすごく急いでいればタクシーを利用します。

こうしたことは誰もが思い浮かべるし、すぐにできることですが、反対に「雨を自分の力で止めるぞ」といった、自分の力でどうしようもないことを無理やり何とかしようとすると、アドラーの言う「雨と闘う」になってしまいます。

あなたに、「三国志」の赤壁の戦いで風向きを変えた諸葛孔明ばりの力があればともかく、この世の中に「雨と闘う」ことのできる人はそうはいません。

つまり、課題に直面した時にやるべきは、今の自分にできることに専念することで、自分の手に負えないことを気にするべきではないという意味です。

ところが、世の中には「雨と闘う」ことばかりを考えて、「今の自分にできること」をやろうとしない人がいます。

たとえば、ものが思うように売れず、業績が不振に陥った時、景気の悪さを嘆いて、「景気さえ回復してくれれば何とかなるんだが」「政府が景気刺激策を打ってくれれば」と景気の回復をひたすらに願う人がいます。

あるいは、ものが売れないのを「お客が悪い」と責任を転嫁する人もいます。

景気もお客さまの意向も自分にはどうしようもないことなのですが、そちらに責任を転嫁して納得してしまうのは、言わば「雨と闘う」のと同じことなのです。

世の中には「自分の力でコントロールできることとコントロールできないこと」があります。

景気をコントロールすることは誰にもできないだけに、そんなものを嘆き、心を煩わせるよりも、今の自分にできること、たとえばサービスを工夫する、価格を再考する、営業活動をもっと積極的に行なうといった今できることを1つずつ愚直に地道に努力する方が「雨と闘う」よりもはるかに効果的なのです。

あるプロ野球選手は試合で手首を骨折し、半年もの間、療養を余儀なくされました。最初は自分の不運を嘆き、焦っていましたが、しばらくして「自分にコントロールできないことを嘆くより、自分にコントロールできることに集中しよう」と気持ちを切り替えました。すると、手首を骨折していてもできることは案外たくさんあり、そこに集中しているうちに不安は消え、復帰への意欲が湧いてきたといいます。

「経営の神様」と呼ばれた松下幸之助さん(パナソニック創業者)に「雨が降れば傘をさす」という言葉があります。あまりに当たり前に思えますが、雨と闘ってムダな時間を過ごすより、自分にできる、自分がやるべき当たり前のことを当たり前にやることこそ成功への道なのです。

アドラーの名言:雨と闘ったり、負かそうとしてもムダだ。雨と闘って時間を費やすな。

「ないもの」を数えるのではなく、
「あるもの」を数えるようにしよう。
「与件の中で戦う」ことを習慣にすると、
成果が上がりやすくなる。

もしその人の人生が遺伝だけで決まるとすれば、人生に努力は必要ありません。

がんばって努力をしたところで、持って生まれたものですべてが決まるとすれば、自分の限界を超えることはできないはずですが、もちろんそんなことはナンセンスです。

サッカーの日本代表を長く務めた本田圭佑さんは日本やオランダのクラブでの活躍を経て、イタリアの名門ACミランに加入しています。

大いに期待されての移籍でしたが、当初はそのプレーに対してマスコミは満足できず、「不調」とか「逆境」と厳しい評価をしました。

しかし、本田さんはそんな評価など気にせずやるべきことを黙々とやる一方で、ACミランの身体能力の高い選手たちを見ながらこんな感想を口にしました。

「こんなに身体能力に優れていて、それを使いきれないなんて『神様は平等だな』と僕は思いますよ」

どういう意味でしょうか?

アフリカやヨーロッパの選手と比べると筋肉量や跳躍力など、努力では埋められない差があることは本田さんも認めていました。

しかし幸いにもサッカーには身体能力とは別に「考える力」や「判断する力」も必要になります。

本田さんには圧倒的な身体能力はないものの、「脳力=考える力」を磨けば互角に戦えるのではという思いがあったのです。

自分に「ないもの」を恨み、「もっと身体が大きければ」「もっと足が速ければ」と「ないものねだり」をしたところで、そんな願いがかなえられるはずはありません。大切なのは自分に「ないもの」を悔やむことではなく、「あるもの」は何かを探り、とことん磨きぬくことです。

世の中にはほとんど「何もない」ところから出発したにもかかわらず、大きな成功を収めた人がたくさんいます。

アップルの創業者スティーブ・ジョブズは生まれてすぐに養子に出され、大学も通ったのは1年の一学期だけで中退しています。

言わば、学歴なし、人脈なし、卓越した技術もなければ、お金もない、もちろん経営について学んだこともないという21歳でアップルを起業、わずか4年でアップルを株式公開させ、自力で億万長者になった史上最年少記録を打ち立てています。

それを可能にしたのは「何もない」中でも、「誰も信じていないけれども、本人だけが信じている」ビジョンと、絶対に諦めない「情熱」があったからで、まさに「自分にあるもの」を信じて突き進むことで、不可能を可能にしたのです。

「与えられた条件の中で戦え」という言い方があります。

アドラーの言葉に通じるものですが、ビジネスの世界でも、スポーツの世界でも「人が足りない」「お金がない」と、ないものばかりを探していたら番狂わせなど起こるはずがありません。自分の持っているものや、周りを見渡して「何か使えるもの」を見つけて、結果を出すのが正しい戦い方です。

遺伝や環境を理由に自分で自分に限界を引くのはやめにしよう。アドラーが言うように「大切なのは与えられているものをどう使うか」です。他人と自分を比べて「あれがない」「これもない」とくよくよするのはやめにしよう。

マイナスも含めて自分に与えられたものをフルに生かすことで人は限界を超えていくことができるのです。

アドラーの名言:大切なのは何が与えられているかではなく、与えられているものをどう使うかである。

自己肯定感を高める アドラーの名言
桑原晃弥(くわばら てるや)
1956年、広島県生まれ。経済・経営ジャーナリスト。慶應義塾大学卒。業界紙記者などを経てフリージャーナリストとして独立。トヨタ式の普及で有名な若松義人氏の会社の顧問として、トヨタ式の実践現場や、大野耐一氏直系のトヨタマンを幅広く取材、トヨタ式の書籍やテキストなどの制作を主導した。一方でスティーブ・ジョブズやジェフ・ベゾス、イーロン・マスクなどの起業家や、ウォーレン・バフェットなどの投資家、本田宗一郎や松下幸之助など成功した経営者の研究をライフワークとし、人材育成から成功法まで鋭い発信を続けている。 著書に、『1分間アドラー』(SBクリエイティブ)、『「ブレない自分」をつくるコツ アドラー流 一瞬で人生を激変させる方法』『スティーブ・ジョブズ名語録』(以上、PHP研究所)、『トヨタ式「すぐやる人」になれる8つのすごい!仕事術』(笠倉出版社)、『ウォーレン・バフェットの「仕事と人生を豊かにする8つの哲学』(KADOKAWA)、『逆境を乗り越える渋沢栄一の言葉』(リベラル社)、『amazonの哲学』(大和文庫)、『イーロン・マスクの言葉』(きずな出版)、『世界の大富豪から学ぶ、お金を増やす思考法』(ぱる出版)などがある。

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