本記事は、髙橋 洋一氏の著書『数字で話せ!「世界標準」のニュースの読み方』(エムディエヌコーポレーション)の中から一部を抜粋・編集しています。

The idea of investing and managing assets in houses and properties
(画像=2ragon / stock.adobe.com)

「持ち家」と「賃貸」はどちらが得か

「持ち家と賃貸はどちらが得か」という議論をよく聞きます。この場合、持ち家を持つというのは、住宅ローンを組んでマンションなり一戸建てを購入するということです。

経済学的に考えた場合、どちらかが明らかにお得なのであれば大多数はそちらを選びますから、「どちらが得か」に対する答えは、「大差がない」が正解です。「持ち家か、賃貸か」というのは、どちらが得かということではなく、最終的にはその人の生き方、リスクに対してどう考えて生きるのかによって決まる問題です。

持ち家を買うというのは、資産を持つということです。一般的にはローンを組む、つまりお金を借りるわけですから、同時に借金を持つということになります。バランスシートをつくってみると、左側に持ち家という資産があって、右側にローンという借金があると「持ち家」と「賃貸」はどちらが得かいうことで「資産と負債を持つ人」ということになります。

賃貸の場合は、ローンを組まない、つまりお金を借りませんから、「資産もなく、借金もない人」ということになります。

つまり、バランスシートにしたときにどちらがいいかという話であるだけなのです。「資産を持って負債も持つ」という方がいいか、「資産も持たない代わりに負債も持たない」という方がいいかということです。

メリットとデメリットという話は、多少はできるでしょう。資産を持った場合、後にその資産がものすごく値上がりをすれば得をすることになります。負債を売り払って借金を清算し、かつお金が残るというパターンです。ただし、資産の価格が下がれば、その逆となり損をすることになります。

資産はいつも増えるわけではありません。減ることもあります。こういうのを「リスク」といいますが、このリスクをあまり気にしない人というのが、持ち家を住宅ローンを組んで買う、つまり「借金をして資産を持つ」という人の典型的なパターンです。

このリスクを気にする人は住宅ローン付きの持ち家を持ちません。この場合は資産が目減りするリスクはなくなります。ただし、増えるメリットもありません。これがリスクに対してどのように対処するのかということで、すなわちその人の「生き方」です。

私は、どちらかといえばそういうリスクは持たない方が楽であるというタイプです。借金をしてまでも資産を持つことはありません。堅実に生きてしまうタイプということでしょう。もちろん、相続で土地を持ってしまえば、仕方なく「持ち家」ということになるでしょうが、先祖代々の土地がないのであれば、私は「賃貸」を選びます。

いずれにせよ、持ち家か賃貸かというのは個人の判断ですが、住宅ローンを組むことになった場合、固定金利が得なのか変動金利が得なのか、という話もよく聞きます。住宅ローンは金利の話ですから数量的に考える必要があります。

金利には短期金利と長期金利の2種類があります。短期金利は1年未満の資金の貸し借りで適用される金利のことです。長期金利は、一般的には償還期限が10年の10年物国債の金利を指します。住宅ローンの金利は、この長期金利が指標になって決まります。

長期金利というのは、短期金利がどうなるかを市場が予想するなかで決まります。短期金利は日銀がインフレ率の予想を根拠にコントロールしますが、1年後の短期金利はどうなっているか、その翌年の短期金利はどうなっているか、というふうに考えながら市場の多くの関係者が取引をする、その結果として決まっていくのです。

インフレ率の予想を根拠にコントロールするというのは、インフレ率が高くなりすぎる兆候があれば、短期金利を上方にコントロールしてお金を借りにくくする、つまり景気を抑えるということです。短期金利が上がれば、当然、長期金利も上がります。

日銀は2023年7月28日の金融政策会合で、10年国債の金利の変動幅の上限がプラス1%程度まで上回ることを容認する決定を発表しました。つまりそこには、日本はデフレから脱却しつつあるというくろがあるわけで、それは長期金利の上昇という結果を呼ぶことになります。

固定金利と変動金利とどちらがお得かという話であれば、デフレムードにあって短期金利も低くコントロールされていた時期に定められた金利がそのまま続く固定金利の方が今後はお得になる確率が高いでしょう。変動金利の住宅ローンは、景気回復のベクトルのなかにある限り、今後は上がり続けることが予想されます。

景気が回復すれば返済に見合うだけ賃金も上昇する、という見方もありますが、それは人それぞれ、置かれた企業環境によるのであって、すべてが保証されるというものではありません。

数字で話せ!「世界標準」のニュースの読み方
髙橋 洋一(たかはし・よういち)
1955年東京都生まれ。東京大学理学部数学科・経済学部経済学科卒業。博士(政策研究)。数量政策学者。嘉悦大学大学院ビジネス創造研究学科教授、株式会社政策工房代表取締役会長。
1980年大蔵省(現・財務省)に入省、大蔵省理財局資金第一課資金企画室長、プリンストン大学客員研究員、内閣府参事官(経済財政諮問会議特命室)、内閣参事官(首相官邸)などを歴任。小泉内閣・第1次安倍内閣ではブレーンとして活躍し、「ふるさと納税」「ねんきん定期便」などの政策を提案したほか、「霞が関埋蔵金」を公表。2008年に退官し、『さらば財務省!』(講談社)で第17回山本七平賞を受賞、その後も多くのベストセラーを執筆。菅義偉内閣では内閣官房参与を務めたが、2021年5月に辞任。現在は、YouTube「髙橋洋一チャンネル」を配信しており、チャンネル登録者数は100万人を超えている(2023年10月現在)。
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