本記事は、堤 藤成氏の著書『制約をチャンスに変える アイデアの紡ぎかた』(ぱる出版)の中から一部を抜粋・編集しています。

アイデア
(画像=azuki / stock.adobe.com)

人事を尽くして、アイデアを待つ

『葛藤のサイン』について、三角の指示標識をヒントに弁証法で考える方法をお伝えしてきました。とはいえ、それでも葛藤に苦手意識を感じている人はいると思いますので、その『葛藤の正体』についても触れておきましょう。

あらためて見れば、葛と藤はどちらも植物です。そこで花言葉を見てみます。

まず葛の花言葉は、「芯の強さ」と「快活」。秋の七草の1つに選ばれるほどで、日本ではかねてから、漢方薬や和菓子の成分にも使われているありがたい存在です。

次に藤の花言葉は、「優しさ」と「歓迎」。ちなみに漫画『鬼滅の刃』では、藤の花が鬼の侵入を防ぎ鬼殺隊を歓迎し、献身的に協力してくれる人々の象徴として描かれていました。実際には、藤の花は好日性植物といって、直射日光のさす場所を好んで咲き誇っています。だから日の光が苦手な鬼が嫌がるわけです。このような特徴から、昔から魔除けの効果があると言われてきたのです。

こうしてみると、葛も藤も、なかなか良い奴だと思えてきませんか。

ではなぜ『葛藤』は、ネガティブに捉えられがちなのでしょうか。

『葛藤』の語源を調べてみると、樹木に絡みつくツル性の植物である葛や藤が生い茂ると、もつれて解けにくくなる様子に由来していたことがわかりました。

しかし、あなたは既に、絡まっていた思考のモヤモヤを、『目的のサイン』と『制約のサイン』で丹念に解きほぐせるようになったはずです。葛藤は、「芯の強さ」と「優しさ」で、「快活」に「歓迎」することで、アイデアの種に変えていけるのです。

『苦しいときもある。夜眠れないこともあるだろう。どうしても壁がつき破れなくて、俺はダメな人間だと劣等感にさいなまれるかもしれない。私自身、その繰り返しだった』

その人の名はHONDA創業者の本田宗一郎です。側から見たら偉業を成し遂げているような人でも、こんな劣等感を感じていたりします。しかしある意味で、人は皆同じように他人からは見えない葛藤に苦しんでいるものだと言えます。私たちは勝手に他人のことはレッテルを貼って比較します。そして自分だけが葛藤を抱えた悲劇のヒロインのように感じてしまうものです。だから人間は1人1人違うとも言えるし、皆同じとも言えるのです。ほら、『葛藤』について考えることが、少しは楽になってきたのではないでしょうか。

一見使い物にならなさそうな欠点や逆境でも、使い方次第で、価値に変えられるのです。実際アメリカには『人生がレモンを与えたときには、レモネードを作りなさい』とのことわざがあります。このように『葛藤のサイン』で語ってきた制約も、うまく乗り越えることで、自分らしい個性や強みに育てられるのです。

もし考えてもお手上げ状態なら、一旦思考を手放して寄り道しましょう。

これまであなたは、目的と制約を整理し、その上で葛藤も味わいました。そして弁証法的なアプローチについても学びました。これらを脳に十分プログラミングしたのならあとはあなた自身の無意識のクリエイティビティを信じて頭を空っぽにして委ねてみると、答えが導かれるはずです。まさに『人事を尽くして、アイデアを待つ』のです。

もちろん単に、最初から何も調べず、アイデアを待つのでは意味がありません。しかし正しく情報を集め、目的と制約を整理し、ちゃんと自分のRASにプログラミングした状態にすること。そこまで人事を尽くせば、後はあえて信頼して委ねてしまうと、自分の運命やクリエイティビティが味方してくれることもあるのです。

アイデアのサイン■●▲の法則 ポイント
▼ 葛の花言葉は、「芯の強さ」と「快活」
▼ 藤の花言葉は、「優しさ」と「歓迎」
▼ 『葛藤』さえ、丹念にじっくり向き合えば、絡まったツルもいつか解きほぐせる
▼ 『人事を尽くしてアイデアを待つ』考え尽くしたら、時には手放して忘れることも大事
「自信がない」という価値
堤 藤成(つつみ・ふじなり)
『つむぐ塾』塾長/コピーライター 

生まれつき右耳が聞こえず、コミュニケーションにコンプレックスを抱えた結果、言葉で魅了するコピーライターに憧れる。中学の卒業文集に「CMをつくりたい」と記し行動を続け、新卒で電通に入社。新人時代はアイデアが採用されずにもがき苦しむ。しかし制約を味方にしてアイデアを導くための思想を身につけたことで、国語の教科書に掲載される広告をつくるなど徐々に結果を出せるようになる。クリエイティブやデジタルなどの部署を経て、マレーシアのELM Graduate SchoolでMBA取得。スタートアップ転職後はオランダと日本を行き来し、クリエイティブ視点でのブランディングを担当。言葉やアイデアで『幸せに叶えるを紡ぐ』を実践するコミュニティ『つむぐ塾』主宰。カンヌGOLD、日本新聞協会新聞広告クリエーティブコンテスト・グランプリ&コピー賞、宣伝会議Advertimes(アドタイ)第1回コラムニストグランプリなど受賞多数。
著書に『ほしいを引き出す 言葉の信号機の法則』(ぱる出版)がある。

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