分配利回りが高い米国のREITではなく J-REITが選ばれる理由



分配利回りだけを見ると、米国REITへ投資した方が良さそうだ。しかしながら、借入金と併用して投資することを考えるとJ-REITの方が魅力的になってくる。まず、自己資金を50億円、借入金を50億円、合計100億円を用意してREITに投資することを考える。米国REITの場合、分配利回りは3.5%のため3.5億円の配当だ。その内、50億円の借入金を利子率1.4%で金利返済するため0.7億円が配当から引かれ、2.8億円が手元に残る。これは50億円の自己資金に対しては5.6%の利回りになる。

一方で、J-REITの場合、分配利回りは3.2%のため3.2億円の配当しかない。しかし金利返済は50億円の借入金に対し0.3%のため0.15億円しかない。これが配当から引かれるため手元には3.05億円残る。したがって50億円の自己資金に対しては利回りが6.1%にもなるのだ。だから投資家にとっては分配利回りが高い米国のREITではなく、J-REITを投資先として求めてくる。

この分配利回りと10年国債利回りの差であるイールドスプレッドであるが、水準が最も近いのが豪州のREITだ。2014年12月末現在で、豪州のREITは分配利回りが5.5%に対し、10年国債利回りが2.7%のため、イールドスプレッドが2.8%であった。2.9%の日本と非常に近い状態である。しかもREITの総額も日本と近く市場総額規模で世界2位と3位の座を争っている関係にある。


イールドスプレッドとLTVが打ち出の小槌



今後、豪州のREITを突き放していくには金融機関の融資姿勢の緩和が期待される。10年国債利回りは世界的に見て異常に低水準だ。豪州の10年国債利回りは2.7%もあるため、まだまだイールドスプレッドを生むのに余裕がありそうだ。上述の例ではLTV(Loan to Value:有利子負債/総資産)を50%としたが、仮に融資姿勢が緩和されて60%となると自己資金に対する利回りが上がる。自己資金40億円、借入金60億円、分配利回り3.2%の投資を考える。60億円の借入金に0.3%の返済利子0.18億円が生じるため、手元に残るのは3.2億円から0.18億円を控除して3.02億円となる。これは40億円の自己資金に対しては7.55%の利回りへと上昇するというカラクリだ。

このようにイールドスプレッドやLTVを考慮すると、2015年も世界からの資金流入が持続しそうことに納得感がある。今後もJ-REITは目が離せない市場となりそうだ。

(ZUU online)

【関連記事】

相続税改正、相続税路線価を絡めた節税対策 まずは自分の資産の見直しから

エボラ出血熱は楽観視できない エボラ関連銘柄10選

日経新聞や日経各紙(産業・MJ)まで全て利用可?ネット証券は『情報の宝庫』

2015年3月末の“長く持つほど得をする”株主優待銘柄6選!

10万円以下でも買える?2015年の目玉LINE株を上場前に買う2つの方法