今回の記事のテーマは、「祖父母から孫へ~教育資金一括贈与のメリットとは」です。
世代間の資産移転を促し、経済を活性化させる目的や、人材育成の観点などから、「教育資金一括贈与の非課税制度」が期限付きで創設されました。祖父母から孫への一括での教育費の贈与が1500万円まで非課税となり、富裕層向けの制度といわれています。この制度を利用するメリットについて、考えていきましょう。
【参考】
富裕層に対する課税強化とその海外移住を税金の基本から考え直してみた
大切な家族を守るために〜贈与税を活用した相続対策〜
富裕層のための保険講座vol1『3大オーナーの生命保険と税金』
資産移転?節税?多くの法人が活用する逓増定期保険の選び方
出国税導入?繰返される富裕層と当局のいたちごっこ~海外移住の新潮流 後編~
所得税75%の衝撃〜フランスの富裕層脱出にみる日本の将来〜
◉従来の教育資金の贈与について
生前贈与を行う場合、年に110万円までであれば基礎控除額として、贈与税が発生しません。しかし、孫への贈与を行う場合、孫名義の口座へ毎年入金していても、孫が受贈を認識していない場合、税務署の判断によっては、生前贈与として認められない場合もあります。
また、祖父母からの教育資金の贈与は、従来から非課税です。しかし、入学金の納付時に相当額を贈与するなど、必要なときに、必要な金額をその都度贈与する必要がありました。教育費をまとめて贈与する場合には、都度の贈与と認められる分と110万円を控除して、課税の対象となっていました。
◉教育資金一括贈与の非課税制度の概要
教育資金一括贈与の非課税制度を利用すると、祖父母・父母など直系尊属からの教育資金の贈与が、1500万円まで非課税になります。平成25年4月1日から平成27年12月31日までと、期間が限定された制度です。孫や子など教育資金を贈与される受贈者は、30歳未満が対象になります。
祖父母が孫の名義で、教育資金贈与信託を扱う金融機関に教育資金口座を開設し、教育資金を一括して入金します。教育資金が必要になる都度、金融機関に領収書等を提出して必要資金を引き出します。孫への贈与の場合、20歳までは親が口座を管理します。税務署への手続きは金融機関が代行し、教育資金非課税申告書が提出されます。
対象となる教育費は、保育園や幼稚園から大学、大学院までの学校等に直接支払う費用と、塾や習い事などに掛かる費用です。
学校等に直接支払う費用とは、入学金、授業料、入園料、保育料、施設設備費、入学試験の検定料などです。学用品の購入費や修学旅行費や学校給食費など、学校等の教育に伴って必要となる費用も含まれます。学校の寮費は対象になりますが、下宿代は対象になりません。海外留学の場合、学費は対象となりますが、渡航費や滞在費などは対象外となります。
なお、塾や習い事などに掛かる費用は、500万円が限度となります。学習塾や予備校、家庭教師などの学習関連と、水泳や野球、サッカーなどのスポーツ関連、ピアノや絵画などの文化芸術関連などが対象です。入会金、月謝、施設使用料などと活動で使用する物品が対象となります。また、学校等における教育に伴って必要な費用で、業者を通じて購入するものので、学校が書面を通じて支払いを依頼しているもの含まれます。
受贈者である子や孫が30歳に達したとき、子や孫が死亡したとき、口座の残金がなくなったときに終了となります。
教育資金一括贈与制度の利用方法>>