②世代別分散投資


投資するに当たって、誰しもがリスクを回避しようと考えます。換言すれば、損失は可能な限り抑えて、収益は可能な限り増大させようとします。そこで、まずETFを利用することで回避できる損失(費用)についてみておきましょう。

ETFは上場投資信託のことですから、ETFも当然投資信託に分類されます。しかし、一般の投資信託とは手数料の面で大きく異なります。
投資信託の手数料は、①購入時に要する手数料、②保有期間中継続して要する信託報酬、③売却時に要する信託財産留保額の3つに分かれます。もっとも、①と③は1回きりのものですので、ここでは説明を割愛し、②についてのみ検討します。②については、投資信託の保有中は継続して課されるものですから、長期の保有になればなるほど損益に与える影響は大きくなってきます。
そのため、投資信託での運用成果を大きくするためには、この②の信託報酬を低く抑えることが重要といえます。

そこで効果を発揮するのが ETFです。ETFは、一般の投資信託に比してこの信託報酬が平均で1%程度低くなっています。たかが1%と思われるかもしれませんが、100万円投資した場合には1年間で1万円の差が生じてしまい、これが長期間にわたれば毎年それだけの差が出てしまいます。したがって、ETFは一般の投資信託に比べてかなり有利といえるでしょう。

それでは、ETFでの運用の有利性をご理解いただいたところで、投資者の世代別のETFの利用方法についてみていきましょう。もちろん、どの世代の方でも、一つの投資対象に投資金額の全額を投入するのは危険で、分散投資は重要といえます。しかし、それぞれの世代に応じて、分散する対象や割合は異なってきます。

まず、20代や30代の資産形成期にある方は、多少はリスクをとってでも収益獲得を狙いに行くべきでしょう。将来の社会保障制度や勤務先から支給される退職金については、多かれ少なかれ不安があると思われるため、自分年金を作っておくためにも積極的な投資が必要です。だからといって、株式等のリスクが高い商品ばかりで運用するのは危険ですから、株式の比率を高めつつも海外債券も組み入れるといった分散投資が求められます。

具体的には、シンプルにいくのであれば、国内株式、海外株式、海外債券に3分の1ずつ投資すればよいですし、もう少し多様化するのであれば、商品等の組み入れも検討すればよいでしょう。これらは、先にも述べたように、すべてETFで対応可能ですから、ETFを有効に活用してポートフォリオを構築して頂きたいものです。

次に、40代や50代の方は、20代、30代の方に比べて許容可能なリスクは低下しますので、株式の割合を減らして債権の割合を高める等の工夫が必要になります。ETFでは国内債券に投資するものが存在しませんので、国内債券については個人向け国債や社債等で保有し、その他はETFでポートフォリオを組むといったことが可能でしょう。

最後に、退職層の方については、保有資産の減少を小さく抑えるためにも、運用は必要と考えます。しかし、許容可能なリスクは非常に小さなものとなりますので、元本割れのリスクが大きなものは避けるべきでしょう。具体的には、債券等の安全資産中心の運用で、そのうち一部は毎月分配金が支払われるようなETFなり一般の投資信託を活用するのが有用といえるでしょう。


③ETF利用の注意点


これまでETFを利用するメリットばかりを述べてきましたが、当然ETFにも幾つかデメリットは存在します。その中で最も注意すべき点は、流動性の問題です。

ETFはメリットが多いものの、販売しても大して利益にならないという金融機関側の事情等により、認知度はいまだに低いままです。そのため、投資対象としては非常に有用なものであっても、流動性が極めて低いものが存在します。流動性が低いということは、売却したいときに売却できないリスクや、実際の価格よりも低い価格でしか売却できないリスクを伴います。したがって、ETF投資の際には、流動性についてはしっかり調査しておく必要があるでしょう。

ETFは、手数料が低いうえ種類も増加してきたため、投資対象としては有用であるといえます。そのため、ETFのデメリットを押さえたうえで、ETFを有効に活用することで投資を有利に進めることができるでしょう。

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