国民全員に固有の番号を割り振り、さまざまな情報を統合的に管理したり、事務手続きの効率化を図るとして期待されるマイナンバー。企業の経営においてもその対応が求められており、準備を進める企業も多い。さらには、同番号制度の導入による企業の労務管理の変化をビジネスチャンスと捉え、人材サービス企業では新サービスの立ち上げなどの取り組みを始めている。

他方で、マイナンバー制度の自体や2016年1月から同制度の運用開始となることは知られているものの、企業側の準備も十分に進んでいるとは言いにくそうだ。とりわけ、きちんと対応を終えている企業はまだまだ少数にとどまり、今後のマイナンバー制度への対応が広く課題になりそうだ。

マイナンバー制度対応を終えたのは約2割

帝国データバンクは5月20日、マイナンバーの企業の意識調査の結果を公表し、制度変更を含めて具体的に必要な対応まで把握している企業はまだ、4割程度にとどまることを明らかにした。来年1月に制度運用開始も迫ってはいるものの、社会保障の管理や災害対策などのポイントでも使用されるマイナンバーの導入の課題が新ためて浮彫りになった格好だ。

同社によれば、マイナンバー制度の運用開始に向けて「従業員とその家族のマイナンバーの情報を企業自らの努力により収集・管理する必要が生じるなど、さまざまな準備が必要になる」。具体的には、社会保障の管理などでも対応しなければならず、多くの企業で必須の投資となる。

帝国データバンクから今回公表された調査結果によれば、調査対象企業の9割以上が何らかの形でマイナンバー同制度を認識していたものの、「内容も含めて知っている」という企業の割合は約4割となった。制度開始まで半年と少しに迫っているにもかかわらず、新制度の内容まではまだまだ知られていない現状を同結果が示唆した。

さらに、同調査結果によれば、マイナンバー制度の開始準備を終えている企業はたった2割弱にとどまるという。また、企業の約6割は具体的な対応をとれておらず、「全体の進捗は8.9%」にしか達していないとのことだ。

ビジネスサイドでも動き出すマイナンバー対策

マイナンバー制度の開始に向けて準備を進めるのは、経営管理だけではなく、人材関連サービスの各社も、新制度をビジネスチャンスと捉えて、新サービスを立ち上げるなどさまざまなかたちでの動き出しもこのところ目立つ。

その一社が人材サービス企業の持株会社であるフルキャストホールディングス <4848> もこのほど、マイナンバー制度に対応するための、新サービスの提供を開始。地方自治体のシステムのコンサルティングを行う ITBook と提携して、物流業界向けのマイナンバー管理代行サービスの提供を開始している。

同社では、マイナンバー対応サービスを成長戦略にも組み込んでおり、アルバイト管理のための支援サービスも推進。同社社長の坂巻一樹氏も、マイナンバー対応サービスについて約5万人分くらいは取り扱いたいとした上で、ビジネス規模については「一人あたり200円から300円」となるとの考えを明らかにした。大きく見積もって、1500万円規模となる見通しが示されたことになるものの、同氏は5万人は少なめの数字ともしており、規模については含みを残した格好だ。

ただ、現状では、マイナンバー制度の動向自体も、不透明な部分が残り、フルキャストホールディングスで経営企画部長を務める近藤秀樹氏も「まだ国からの情報提供もされておらず、われわれも確認しながら進めているところだ」とあいまさの残る現状を慎重に進めていることを明らかにした。

マイナンバーを導入しなければならない各社としても、マイナンバー対応サービスを提供する企業としても、今後の対応に注目が集まりそうだ。(ZUU online 編集部)

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