犬のチラ見
(写真=PIXTA)

9月3日、マイナンバーの利用範囲を広げる改正案が衆議院で可決・成立した。この改正により、預貯金口座、特定健康診断の結果、予防接種記録などの情報とマイナンバーが紐付けられることになる。

まだ始まってもいない段階からなぜ改正なのだろう、と疑問に思った人も多いはずだ。そして2018年以降、新規に預金口座を開設しようとした場合にマイナンバーの告知が求められたら私たちはどのように対応したらよいのだろうか。
マイナンバー制度導入の経緯や、法改正の背景をあらためて考えてみよう。

忘れてはいけない一番の目的は徴税の強化

そもそもマイナンバー制度は、社会保障・税・災害対策といった分野で効率的に情報を管理し、複数の機関に存在する個人の情報が同一人の情報であることを確認するために導入されたものである。
この制度にはかつて、「国民総背番号制」などと呼ばれ反発を招いた経緯があり、「マイナンバー」というソフトなネーミングとなった。さらに東日本大震災で救助活動が遅れたことや、社会保障費の増大などを機に、情報の一元管理が不可欠であるとして導入の必要性が一層強調されるようになった。

ただし忘れてはいけない一番の目的は、何よりも徴税の強化にある。災害対策や社会保障を前面に謳ってはいるが、マイナンバーの管轄を行うのは国税庁であり、内閣府や厚生労働省ではない。将来的に、個人の資産(証券口座を含む金融資産や登記による不動産の取得情報など)をすべて把握し、脱税や徴収漏れを防ぐことが狙いなのである。

今回の法改正は一つの「テクニック」

法案というのは、反対の声が大きくなれば廃案になる可能性がある。それを回避する手段として、将来的な法案の形を見据えた上で、とりあえず反対が少ない内容で法案を成立させておき、徐々に改正してあるべき姿に変容させていくというテクニックがある。今回の改正はまさにそのような事例といえる。

例えば、預貯金口座とマイナンバーの紐付けは任意とされているが、「2021年には義務化も検討する」とされている。いきなり預金口座とマイナンバーの紐付けを義務化すれば国民の反発も大きいし金融機関の負担も大きい。そのため当面は「任意」にしておいて、金融機関にシステム対応などの準備期間を与え、一定期間経過したら義務化するというシナリオなのだろう。
そうなると証券口座にマイナンバーが紐付けられないのは不均衡であり、預金から証券口座に資金が流れるおそれがあるとして、将来的には証券口座にもマイナンバーが適用される可能性がある。

政府はマイナンバーのあるべき姿をすでに描いており、改正によって着実にそれを実現しようとしているのではないだろうか。

マイナンバー対象外の資産への振替も検討を

では、今回の改正によって私たちはどのような影響を受けるのか。まず考えられるのは2018年以降、新規に預金口座を開設しようとした場合にマイナンバーの告知が求められるようになることだ。法的には任意だが、政府は金融機関と協力して番号付与を促すとしていることから、マイナンバーの告知を拒否すれば、事実上不快な対応をされる可能性もある。

多くの預金を持つ富裕層が特に気を付けるべき点としては、当面は「任意」なので、マイナンバーの告知を求められても「安易には応じない」ことだ。そして、近い将来、義務化されることを視野に入れて万が一、情報漏えいが起こった場合でも被害が最小限になるよう、マイナンバーの対象とならない資産への振替も検討しておくとよい。

今回は預金を中心に解説したが、将来的に政府はカルテ情報やクレジットカード、キャッシュカード、学生証、社員証にまでマイナンバーを広げるかもしれない。プライバシー性が極めて高い情報であり、扱う業者が増えれば情報漏えいのリスクは高まる。また、紐付けの範囲が広がれば情報漏えいによる被害も大きくなる。安保法案の影でひっそりと改正が進んでいるが、マイナンバーについてもしっかり注視していく必要がある。(ZUU online 編集部)

【編集部のオススメ記事】
「信用経済」という新たな尺度 あなたの信用力はどれくらい?(PR)
資産2億円超の億り人が明かす「伸びない投資家」の特徴とは?
会社で「食事」を手間なく、おいしく出す方法(PR)
年収で選ぶ「住まい」 気をつけたい5つのポイント
元野村證券「伝説の営業マン」が明かす 「富裕層開拓」3つの極意(PR)