2.交際費の注意点 実は接待飲食費にならないかも?

交際費というと、一般的に「取引先と酒を飲みながらハナシをする場合」ばかりを想起する。しかし、実際にはもっと幅が広い。なぜかというと、法人税法上、各費用に関する規定が細かく設けられていて、それに該当しないと別の費用として取り扱われてしまうからだ。法人税法では、「事業に関連するかどうか」「関連度合いが強いかどうか」が厳しくチェックされる。よって、福利厚生費だと思っていたものが実は違っていた…ということもよくあるのだ。

例1)社内の特定の数人だけで行ったキャバクラ代

これは、社内飲食費に該当し、通常の交際費に該当する。接待飲食費にもならない。「福利厚生費じゃないの?」と思われがちだが、福利厚生費の要件は「従業員全員に平等に行うこと」である。そのため、福利厚生費にはならない。また、接待飲食費も、「取引先等の接待のため」であることが条件なので、これにも該当しない。なお、その時の一人当たりに対する経費の額があまりにも大きいと、その経費について給与課税がなされる恐れがある。オイシイ思いをするはずの夜の世界が原因で、余計に所得税が源泉徴収されてイタイ目に遭うかもしれない。

例2)取引先の会社の人間が1人、自社の人間が10人で行ったキャバクラ代

一見、接待飲食費に該当しそうだが、社内飲食費だとみなされて通常の広義の交際費として取り扱われる可能性がある。というのも、取引先が1人に対して自社の社員が10人である事実があるのに、これを「事業上の接待のため」というのはあまりに形式的であるからだ。損金計上をしたいがために外見だけ整えたとみなされてもおかしくはない。もし、この状況について「あくまでも事業遂行上必要なものだ」と主張するならば、それを説得するに足りる状況証拠を残しておくべきだろう。

結論から言うと、「本音は『女のコに会いに行くため』であっても、しっかり取引先との仕事もこなしましょうね。そうでなければ、法人税法上の経費としては認めまんせんよ」ということだ。

1990年代後半以降、全国的にみて交際費は減少する一方だった。しかし、2013年と2014年に「法人の交際費等の損金不算入制度に関する規定」が改正されたことを機に、接待交際費は若干ながら微増、2012年は前年比0.8%増にとどまったのが、2013年には前年比6.3%増となった。

2012年の週刊ダイヤモンド社による調査によれば、接待経験者の80%以上が「接待は必要」と答えている。税制改正前は、4人に1人は「1か月接待で使える金額は5000円未満」という状態だったのだから、税制改正は、本来必要な交際費を支出しやすくしたと言えるだろう。

お目当てのあのコに会いに行くためだけに会社の経費を使うのではなく、きちっと仕事をこなして、本来の意味での景気浮揚につなげるようにするのがベストだろう。

鈴木 まゆ子(すずき まゆこ)税理士
鈴木まゆ子事務所代表。2000年、中央大学法学部法律学科卒業。ドン・キホーテ勤務中に会計に興味を持ち会計事務所に転職する。妊娠・出産・育児をしながら税理士試験の受験勉強を続け09年に合格。12年に税理士登録。現在、外国人のビザ業務を行う行政書士の夫とともに外国人の決算・申告・コンサルティングに従事。14年から国際相続などを中心に解説記事作成業務を行っている。

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