出版物売り上げが減る中で増える「コミック」

日販の『出版物販売額の実態(2015年版)』によると、日本国内の出版物の総売り上げは2008年に2兆円超だったが、2014年には1兆6100億円まで縮小している。その中で、根強いファン層を抱える「コミック」はほとんど売り上げが落ちず、むしろ直近2年間では前年と比較して増加する傾向を示している。2014年の「コミック」の売上高は3719億円で、出版物全体の23.1%を占めている。

他方、「クールジャパン」のターゲットとなる海外市場について、経済産業省が2015年10月に公表した「コンテンツ産業の現状と今後の発展の方向性」によると、世界市場における日本由来コンテンツの売上高は138億米ドルで、海外市場全体(5500億ドル)の2.5%のシェアを占めている。

その内訳をみると、マンガ(24.1%)、ゲーム(19.3%)、キャラクター物販(7.9%)、アニメ(1.4%)の順になっており、アニメやマンガが「クールジャパン」輸出に及ぼす影響力の大きさが分かる。

またアニメやマンガは、海外から日本への訪問客を呼び込むインバウンド施策の柱にもなっており、国内で開催される主要なコミケ関連イベントでは、アジア、北米、欧州諸国から直接参加する外国人の数も増えている。さらに、ソーシャルメディアを利用したコミケ関連のコミュニティも海外に増殖している。


TPPを日本製コンテンツのアジア展開に生かせるか

もしも、著作権侵害の非親告罪化によって、コミケに代表される二次創作物市場が縮小すると、原作のアニメや漫画など一次創作物自体の市場規模の縮小につながりかねない。これら一次創作物に係る著作権は、クールジャパン戦略の要であり、それ自体が縮小すると、TPPによって日本が享受できるメリットを相殺しかねない。

加えてTPPには、クールジャパン戦略の主要ターゲットであるアジア市場から東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟4カ国(ブルネイ、マレーシア、シンガポール、ベトナム)が加盟しており、これらの国における著作権侵害の取扱ルールは、中国、韓国、インド、インドネシアなど、TPP未加盟の国々との自由貿易交渉(FTA)にも影響を及ぼす可能性がある。

11月2日に開催された日中韓首脳会談では、日中韓FTA交渉の加速に向け一層努力することと、日中韓およびASEAN加盟10カ国に、インド、豪州、ニュージーランドなどを加えた計16カ国でFTAを進める「東アジア地域包括的経済連携構想」(RCEP)交渉の妥結に向けて取り組むことが共同宣言に組み込まれた。今後の交渉での著作権の取取り扱いにも注目が必要だ。(笹原 英司)

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